婚約申請者は勇者?
4回も保存出来ずに書き直し…
(慣れないことしてるからこうなる(涙))
もう次消えるのは嫌だぁっ(涙)
結果、長い気がします。ごめんなさい…
礼儀正しくウィルフォード公爵邸まで送り届けたラグノールに、マリエルは淑やかにお辞儀をした。
「また夜会でお会いした時には、ご挨拶させてくださいませね」と最後の微笑みをかける。
「ええ、またお会い出来ることを願っています」
こちらも爽やかな笑顔で答えると、マリエルを邸内に入るよう促し、それを見届けてから伯爵家の紋章が入った馬車に乗り込み、元婚約者は最後まで礼儀正しく帰っていった。
☆☆☆☆☆
「お兄様!やりましたわ!破棄してきましたわ!」
公爵邸のエントランスに、満面の笑みと、浮かれて空も飛ばん勢いで入ってきたマリエルを、侍女のターシャと兄のマリウスは、ジトーっとした目で見つめながら静かに待っていた。
そんな二人の目付きに気づかない、残念な公爵令嬢マリエルは、クルクル回りながら兄のもとに来ると、勢いのままに抱きついた。
「それはそれは、素敵なお別れでしたのよ!わたくしの破棄の中でも三本の指に入る位のお別れでしたの!」幸せそうな妹が兄を見上げてきた。
「マリエル。普通、家族はそんな感想を望んでないものなんだよ?」兄のため息は届いていない。
「お帰りなさいませ、お嬢様。まずはお着替えをなさいませ」侍女の冷めた目も取り合わず
「ただいま、ターシャ。…もう!冷たいなぁ。もちろん、ちゃんと一度お部屋に戻るわよぅ。…うふふ、お兄様、急いで着替えて来ますわね。それから、たっぷり自慢して差し上げますわ!」
と言うと、侍女に追いたてられながら、浮かれて踊るようにステップを踏み踏み自室に戻っていった。
そんな妹に、いつものことながら浮かぶ心配と不安と、それを包み込んでも余りある愛しさと言う複雑な想いをどう処理するか考えながら
「全く…あんなことを教えこんだマリエラ大叔母様。貴女を本当に恨みますよ!」
と、今は亡き大叔母に愚痴を言いつつ、マリエラが戻ってきた時のために、談話室にお茶の用意をするよう指示を出した。
☆☆☆☆☆
「…その時のラグノール様のすがり付くような目!本当に絶品でしたわぁ。元々お顔立ちのよろしい方だとは思っていましたが、あの少し涙に潤んだ緑の目の美しかったこと…」ホゥっと小さく吐息をつく。
「この世で、必死にすがって下さる男性に優るものはございませんわぁ。三割増しの素敵さですもの!それでも最後にはご理解頂けたようで、お話の後は…何かやり遂げたように…そう、まるで二人にしか通じないような、そんな穏やかな気分でお別れできましたの。もう、あれはラグノール様のお心の善さから生まれた、極上のお別れだったと思いますの。どなたとでもできるようなものでは、なかったと思うんですのよ。」
たった今婚約破棄をしてきたとは思えない、むしろプロポーズでも受けたのではないかと思うほど高揚した顔で、マリエルは報告し続ける。
「べた褒めだな。…じゃあ、家柄も性格も見た目も問題がなかったなら、そのまま、今度こそ本当に結婚しても良かったんじゃないか?」
お茶三杯分の自慢話(マリエルにとって、本気でこの上ない自慢話なのだ)と言う名の報告を、我慢強く聞きながらマリウスが問う。
それだけ条件が良ければ、次にそんな良い相手は巡って来ないかもしれない。
いや、その確率の方が高い。
妹は既に19を過ぎた。貴族の婚姻年齢を立派に通り過ぎている。
有力な結婚相手は、数少なくなっていくばかりの中で、この可愛らしくも頑固な妹に、両親は徐々に諦めつつある。
(本当に。何故こんなことになってしまったのだろう…)
「…あら、ダメですわ。素敵な方だからこそ、ちゃんと素敵なご令嬢にお渡ししないと!」
「いや、お前だって、立派に素敵なご令嬢だよ?」
「お兄様!私ももう子供じゃないんですのよ?そんなことを言ってくださるのは、家族の欲目だって分かっています。ですから、わたくしは結婚など望んではおりません。ただ…需要のあるうちに少しばかり『婚約破棄』という楽しみを味わわせて頂いているだけですわ。」
「でも、それはお前の勝手だろう?結果、相手に辛い思いをさせておきながら、お前はそれを楽しむというのは、ちょっと残酷すぎるんじゃないか?」
今回ばかりは、と少し浮かれ過ぎな妹を窘める。
「ええ…本当に…それだけが悩みなんですの。わたくしもお相手を傷つけたいとは考えておりませんのよ?だからこそ、いつも丁寧にお相手の方と向き合ってますわ。もしかしたら、今回こそは破棄をしないかも…と、毎回思ってはいるんですの。でも上手くいかなくて…それに、結果的に傷つけてしまった初めのうちに婚約者だったスチュアート、メイナード、ロバートの三人のことは、今でも本当に反省しておりますの。ですから!今は婚約を申し込まれる前に、婚約破棄する可能性が高いことを、ちゃんとお断り申し上げてますの。」
「ええっ!?そうだったの?」
初めて聞いた話に、マリウスは素直に驚いた。
(では、事前に『婚約破棄』の可能性が高いと知りながら、それでも!と挑んできた若者が10人を越えているというのか…)
「もちろんですわ。わたくし、正々堂々と『婚約破棄』することが目標ですのよ?ですから、頼まれれば、最後にきちんとその方の問題点もお伝えして、素晴らしい点もお伝えしてますもの。わたくし、わたくしとお付き合いされる前よりも、素晴らしい男性に育ててからお別れしている自信はありますの。だてにお付き合いを重ねている訳ではありませんもの。」
「…胸張って言うことでは、ないのだけどなぁ…」
「確かに、わたくしはわたくしの趣味として、『婚約破棄』をするという目的のために、良い男性とお付き合い致しております。でも、わたくしとのお別れは、その前より素晴らしい男性にする、という世の為、ご令嬢方の為になることだと思いますのよ?…と申しますか…せめて世の為になる位のことをしなくてはいけませんわよね。わたくしの楽しみだけで人を傷つけても許される、と思うほどわたくしは傲慢ではございませんわ」
キリッと意思表明するような内容ではないのだが、マリエルにとっては重要な点らしく、先程以上に熱弁をふるう。
「…そうか…でも、このままではお前の評判が…」
「ええ、そうですわね…。わたくしは構わないのですが、家名に傷つく前には止めようと思っていますの。…やはり、もうそろそろ潮時ですかしらねぇ…」
「じゃあっ」マリウスの目が輝いた。
「ええ、元々申し込みが無くなれば止めようと決めておりますし、家名に傷つかないうちにとも思っております。………それで、お兄様、本日14人目の方と無事、お別れしたわけですが、15人目の方はどなたがいいと思われます?」
マリエルはソファの横から取り出した封筒をズラッと並べて見せた。マリウスの目の輝きは瞬殺された。
「『婚約破棄』されてもよろしければ、と申し上げた上で、それでも、と申し込んでこられた方がこれだけいらっしゃいますの。本当に……公爵家って人気が高いんですわねぇ」
(これ、全部申し込みの手紙なのか?
もう、こいつら気分は勇者だな。
何か?うちの妹は魔王か何かか?征服対象か!)
放っておいたらカード遊びか何かのように、くじ引きで決めようとしている妹から、勢いよく手紙の束を奪い取った。
「…私がちゃんと見る!」
(うちの子は、可愛い子です。人間の令嬢です!しかも公爵令嬢!まともな人としか会わせません!)
結果的に、妹の趣味にマリウスも加担していることは気付かないふりをして、封筒を一通ずつ開けていった。
こんな拙い物に、お付き合いくださった皆様。
本当に、本当に、ありがとうございます。
しばらくは毎日0時にアップされる予定です。




