3 . 極光来訪のディプロマンシー
テンプレ的異世界転移。
しばらく導入が続くので説明口調です。
はやく主人公を覚醒させたい......!!
本編に突入したら一話一話の文章量が増えます。
タツトに対して傲慢な態度をとっていた藤本を見かねて、クラスのリーダー格である龍二が注意をしにきたのだが、いささか長く口論を交わすことになっていた。タツトの机をバトルフィールドにして。
「大体久保がいつも一人で居やがるから、可哀想なあいつにこの俺が声を掛けてやってんだろ!お前に注意される筋合いはねえんだよ、馬鹿が」
「そんな体の良いことを言って、お前がやってることは久保に対しての只の悪口じゃないか。まさか自覚が無いわけじゃないだろうな」
「あぁ、もちろん自覚はあるぜ?だがこいつは実際に一人ぼっちだしダセぇし、間違ったことは言ってねぇから別に何も悪くねーだろ?」
「藤本、そんな風に人を貶すのはいい加減にやめたらどうだ。久保も傷ついているじゃないか。」
「だから、いちいち俺に指図するんじゃねえよ。お前はいつも説教ばかりうるせぇんだよ。なあ、久保、お前もそう思うだろ!?」
神山の指摘に気を悪くした藤本が眉間に皺を寄せながら唾を飛ばしてがなるようにタツトを捲したてた。
クラスのみんなが非常に嫌そうな顔になる。
(別に傷ついてなんかいないんだけど、取り敢えず僕の机にツバを飛ばすのは勘弁してほしいな......)
藤本が大声を出したため、その標的たるタツトもクラス全員の注目を浴びることなってしまった。みんなの視線に辟易しつつ、なるべく藤本を刺激して面倒くさいことにならないよう、当たり障りのない返事を試みる。
「えーっと神山くん、僕は別に気にしてないから大丈夫だよ」
「なにっ!?まるで俺が悪者みてぇな言い方するんじゃねぇよ!」
タツトの言い分に藤本が即座にキレる。タツトと藤本との会話に龍二が入ってきた時点で、大体何を言っても藤本の短い堪忍袋の緒が切れて収拾がつかなくなるので、この流れはもう何度も経験済みだ。
何やら顔を赤くして怒鳴り散らしている藤本を全力でスルーしつつ憂鬱な気分になりながら、クラスの誰もが藤本に向けて嫌そうな表情をしているのを藤本にアピールするように見渡す。タツトが視線を動かした方向を見て彼もそれに気付いたのか、「何見てんだよ!」と周囲を威嚇するが、それでも収まらない負の感情を孕んだ視線に耐えきれなくなったのか、段々と威勢が弱くなっていき、最後に一度舌打ちをかますと、バツが悪そうにしながら自分の机に戻っていった。
その際、だれが言ったのか、
「いちいち騒ぐなよ、この脳筋ゴリラが」
「いるんだよな、ああいうやつ。自分より下の人間を作って優越感に浸りたいだけだろ」
「っっ!今俺の陰口を叩いた奴らちょっとこっちにこいや!ボコボコにぶん殴ってやーーー」
他のクラスメイトに聞こえるように悪口を言われ、ついにブチ切れた藤本が大音量で声を張り上げた時だった。
不意に前方の教卓の辺りから地上数メートルに、虹色の小さな球のような光が生じていた。よく見ると徐々に大きくなっているのが分かる。クラスの誰もが不思議がって黙って首をそちらの方に向けている。
するとみんなの視線に晒された虹玉はそれに呼応するようにその色の密度を上げていく。ブゥゥゥンと不思議な音を鳴らしながら最初は淡色ぐらいだった光玉の虹色がどんどん濃く、どんどん鮮やかになっていき、非常に美しい極彩色の光が出来上がる。
「......なんだ?アレ。」
「すげー!写真撮ろうぜ、写真!」
「すごい、綺麗......」
地球の極寒の地で見られるというオーロラを十数倍の密度にしたような美しい極彩色の光に、釘付けになる者、これ見よがしに写真を撮ってSNSに上げようとする者、あまりに不可解な事象に身の危険を感じる者など、反応は様々であったが皆一様に目の前の眩い玉から目を離せないでいた。
タツトも例外ではなく、その輝きに目を奪われていると、
「.....おい待てよ、どんどん大きくなってないか?」
「コレって流石にヤバいんじゃ......」
気付かぬ間にぐんぐんとその大きさを広げ、既に半径1メートルほどの規模になった虹玉を見て、カシャカシャと夢中になって写真を撮っていたものも流石に事態の異常性に気付きだし、不気味な違和感を感じているようだ。
そして、その間にも膨張を続け、いつしか半径2メートル近くまでに体積を拡げた虹光は突如、その輝きを爆発的に強めていった。
キュワアアアアア!!!
「きゃああああああああっ!」
「うわっ!なんだよコレ!!」
既に直視することすら出来なくなった眩く輝く閃光に慌てたクラスメイト達は教室から逃げだそうと、ドアに向けて駆け出した。先ほどまで仲良さげに談笑していた女子達も、身の危険を感じてか、鬼の形相で押し合い掴み合い引っ張り合いながら我先にとドアを目指す。
逃げ出したクラスメイトの先頭の一人目が廊下につながるドアに手を掛けるよりも、更に膨張した極彩色の光が教室をいっぱいに包み込み、一瞬の後にその光を収束させる方が速かった。光が消えると、何事もなかったかのようないつもの教室の風景がそこにはあった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ドタドタドタッ!
「っこれは......一体何が起こったと言うのですか」
悲鳴を聞いて駆けつけた他クラスの教師が見たものは、なんてことない我が校の教室の光景。
ーーーただ、そこにいるはずの生徒達は、誰ひとりとしてその存在を確認出来なかった。
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