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"強化蘇生"  作者: ハヤサマ
強化蘇生【リバイバル】
13/30

13 . 異文奇譚のグラチュイタス

こんばんは。ハヤサマです。第十三話です。

時間に余裕がなくて、会話の合間合間にあるナレーションを挟めなかったので後ほど大幅加筆させていただきます。

申し訳ありません!(>_<)

ーーー【花畑】ーーー



『ところでお主は結局のところ、一体何を目的としとるんじゃ?我の記憶ではここはおよそ、人間ごときの立ち寄れる場所ではなかったはずなんじゃが』


 【執念】の果実との初邂逅からしばらく経ったころ、果実とタツトは互いの状況について話し込んでいた。とはいっても、話の内容としては果実が一方的にタツトに質問攻めを浴びせていたものだったのだが、彼は律儀にもその質問に、詳細に答えていた。互いの知識をすりあわせた方が良い方にことが運ぶと考えたからだろうか。


「いや、それが実はな、俺はもともと日本っていう違う世界の国に住んでいたんだが、異世界転移とやらで無理やりこの世界に連れてこられたもんで、気付いたら初めっからこの状況だったぞ。」


『ふむ、異世界の住人とな......ふふ、誠に面白きものよ。ーーじゃが、転移させられたのがこの地とは、哀れよのう。運の悪さもここに極まったものじゃ。まさかお主、前世で何か良からぬことでもやらかしてはおるまいな、大量殺人とか。』


 【執念】の果実はタツトの尋常でない不運を嘆きながらも、その原因が本人にあるのではないかとタツトを軽く疑ってしまうが、


「いや、そんな危なっかしいこと何もしてねぇよ。普通に善良な学生してたわ。なぁ、この辺ってそんなにヤバいとこなのか?いやな、もう何回か死んでるから十分ヤバいってことは知ってるんだが、この世界は全部そんなもんじゃないのか?」


『そんな訳なかろう。もしそうであれば、人類がそんな環境で生き残れるはずがないじゃろ。そんなことなら人類一人残らず化け物に殺戮されて敢え無く絶滅しておるわ。まぁ、知らぬのも無理はない。大方、転移の際この世界の常識などの情報を一切聞かされておらんのじゃろ?』


 大当たりである。異世界への予備知識がない当のタツトには、この状況がいかに異常で、いかに不幸であるかを推察することができなかった。


「まぁ、そうだな。気絶して、起きたらここにいたからな」


『......本当にお主は稀有な運命を辿っておるの。』


 【執念】の果実が何もかも悟ったような、若干の憐憫を孕んだ静かな口調でタツトのこれまでの境遇を一口に纏めた。その一言にはこれまでのタツトの、頑張りを称賛し、失敗を慰め、未来を激励する全てが含まれていた。が、人の感情にさして興味のないタツトが“実の考えていること”なんて理解できる道理もなく、あえなくスルーであった。


「この世界のどこかに、人間が普通に暮らせるような場所があるっていうのか。だとしたら稀有って言うより、運命ハードモードすぎるだろ」


『あぁ、その通りじゃ。何せ我の永遠に思えるような長い時の記憶を辿っても、お主ほどの残酷な状況下に身を置いたものは一度たりとも聞いたことがないほどじゃからの』


「もしかして、俺のクラスメイトはその安全な方の場所に転移してたりして、な。あいつら今頃何してんのかな。そんなに興味ないけど」


 タツトが一緒に飛ばされたはずの級友にほんの少しだけ思いを馳せるが、呟いた内容にはタツトが元いた国の言葉が含まれていたために【執念】の実にはその意味が通じなかったようで、


『はて、“くらすめいと”とな?かような言葉は、我の偉大な遍歴によって積み重ねられた記憶の中にも見当たらないがの』


「あぁ、向こうの世界の話だ。分かりやすく言い換えるなら学友のことだと思ってくれると相違ない。まぁ、学“友”ってほどのやつらでもないんだがな。」


『そういうことじゃったか。お主の世界では学友をクラスメイト、と表現することもあるわけじゃな、合点がいったわい。我は何だか、お主の世界に段々と興味が湧いてきてしまったわ。いつか一度連れて行ってみてはくれぬか?』


「言っとくが、俺の住んでたところってお前が思ってるほど良いところでもないからな。俺は最初はむしろ、こっちの世界に転移できて窮屈な生活から解放された気分で喜んでいたほどだぞ」


 【執念】の果実は突飛な願いをタツトにこぼすが、たぶん、狭い土地にゴミのように多い人間がギスギスとせめぎ合っている日本に来たところで何もおもしろいことなどない、せいぜい、アニメやゲームといった独自の文化が暇つぶしになるくらいなので、タツトはその願望に釘を刺す。


『別にそれでも我は構わないぞ。お主に会うまでは誰も近寄らぬところに封印されておったので、何分退屈なのじゃ。五感のない我の唯一の楽しみは、こうして我を取り込んだものの意識に共存してなにか面白いことに出会うぐらいなのでな。まぁそれも、お主と居れば退屈することなさそうじゃがな』


「お前が行きたいなら別に俺も構わないんだが、元の世界への戻り方が分かればとっくに帰還してるんだよなぁ......」


『つまりは、帰還の方法の発見を含めてのこの地の攻略が今のところの目標というわけじゃな。』


 まぁ、そういうことらしい。【執念】の実の些細な願いも、タツトの大きな願いも、結局はそこに帰結するようだ。


「話が早くて助かる。まあそんなとこだ。とは言っても、未だに分からないことだらけすぎて、帰還なんて遠い夢のまた夢のような話に思えてくるんだがなぁ......何か一つでも手掛かりがあれば、それを糸口にして発想を広げることができるかもしれないんだが」


『そうじゃな、取り敢えずは、今からこの地について、我が知りうる限りのことを話してやろう。話はそれからでも遅くはあるまいて』


 【執念】の果実がそう提案する。有益な情報を手に入れられるかもしれないのにタツトがそれを断るはずもなく、


「話の内容によってはかなり助かるかもしれんな。すまない、恩に着るよ。えぇと......【執念】の果実。」


『ええんじゃよ。我は“その方が面白いから”という理由でお主に助力しようとしているだけなんじゃから、礼など不要じゃ』


「......分かったよ。俺が死ぬほど痛い目にあってるのを面白いと形容されるのは腹が立つがな。......ところでさ、お前名前とかないのか?いちいち“【執念】の果実”とか呼ぶの面倒くさいんだよ」


 これまで「【執念】の実」を「【執念】の実」と呼んでいたタツトだったが、そう呼んでいるうちに段々とその語呂の悪さや冗長な語感に辟易してきたようだ。


『そうじゃのう......そう言われてものう、我は意識があり、記憶があるといえど結局はただの“実”じゃからな。これといった名前は持っておらぬわ。一果物にわざわざ名前を付ける物好きもおらんでの。そうじゃ、どうせならお主が名付けてくれぬか?なるべくかっこいいやつならなおよしじゃわい』


「いや、そんな急に名付けろって言われてもな......」


『そこをなんとか頼む。ほれ、この通りじゃ。』


 心の中で“お願いのポーズ”をとる【執念】の


「いやどの通りだよ。お前の様子は見えてないから何してるか分かんねーよ。どうせ名付けてほしい理由も、その方が面白いからとか言い出すんじゃないだろうな」


『......その通りじゃ、よく分かったの。感心したわい』


「はぁ......そうだなぁ......」


 タツトは頭をかきながら実の名前を考える。しばしの逡巡ののち、はたと思考を止め、良い考えを思いついたとばかりに喜色ばんで言った。


「そうだ、ポチとか良いんじゃないか?呼びやすいし、愛嬌があるだろ」


『我をその辺の犬っころと一緒にするでないわ!もっとマシなやつを考えるのじゃ!』


「ポチが犬の名前なのは異世界でも共通認識なのな。それじゃあ、タマなんてど『それは猫の名前じゃろ』

.....じゃあパトラッシュ『それは犬』.....ならトムとか『それは猫』.....じゃあショーンで『それは羊』.....いや、待て待て、なんで俺の世界の共通認識と寸分違わぬそれを持ってるんだよ」


『普通にお主の想像していることは我にも伝わるので、お主が頭の中に描いた動物を言ってるだけなんじゃが』


「あぁ、そういやそんなことも言ってたな。それってちょっとセコくないか?一方的に考えてることがバレるって地味に辛いんだが」


『そんなこと言われても、仕方ないじゃろ。お主が考える方がいけないんじゃ』


「んな無茶苦茶な......って、そんなことはどうでもいいんだよ。クロ、取り敢えずこの場所についてお前が知ってることを全部俺に教えてくれ」


『おぉ、そうじゃったな......ん?クロ?それは我の名前かの?』


「ん、あぁそうだ。今思いついたから言ってみたんだ。ほら、お前のその執念の感情とか糸とか、色々と黒っぽいものが多いだろ?安直な発想だから、なんか引っ掛かるなら別のにしてもいいぞ。もうちょい考えてやるから」


『いや......クロ......クロか。ふむ。なかなかどうしてしっくりくるではないか。見識深く聡明な我の名にぴったりじゃ。これからはクロと呼ぶが良い』


「お前ってたまにめちゃめちゃ上から目線飛ばしてくるよな......。何回もアピールしてるその「我は博識」みたいなのはどういう意味だ?たかが果実にそんな知識深そうな形容詞付けたくないんだが」


『ふ、たかが果実、されど果実よ。わしが【概念の実】として誕生したのはもう覚えてないが二千年以上昔の話よ。そして、そのときから常に記憶があったものでな、この世界の歴史の知識に関して言えば、人間では我に適うものはまずいないじゃろうな。」


「そういうことなのか。......待てよ、そんなに長い間生きてたっことはお前腐ったりしてないのか?勢いで食っといてなんだけど今更不安になってきた」


「いい加減我をただの果物扱いするのはやめてくれんか、それで、この地についてじゃがのーーー」





ーーー【執念】の果実もとい、クロ曰く、タツトが召喚されたこの地は名を【異常地(イレギュラー)】というらしい。正式名称ではなく、単にこの世界の人間たちが、超常現象そこのけのこのエリアに畏怖の念を込めてそう呼んでいるだけとも付け加えていた。ちなみに、人間が住んでいる地域のことは人間界とそのまま呼ぶらしい。なんとも安直なものである。


 また、悪夢を体現しているようなこの地であるが、この星のおよそ五分の一を占めているらしい。が、そこに棲まう化け物どもは何故か人間界に侵食することはないようだ。理由は数千年前から生きているクロでも分からないらしい。


 【異常地(イレギュラー)】を星の五分の一と言ったが、人間界が残りの五分の四というわけではないようだった。曰く、魔王が統治する魔界と呼ばれるエリアも存在しているらしく、人間界とちょうど半分半分くらいの面積だということだ。


 つまり、異常地(イレギュラー)、人間界、魔界で1:2:2の比率で存在していることになる。


 クロはタツトと同じように異世界からやってきた人間の事に関しても見識があるようで、過去に異世界から転移されてきた人間は、等しく“アルンセリア王国”なるところで歓待を受け、全員が王国の侵略を図る魔王討伐を目標に掲げ、何度もその魔王とやらを瀕死の重傷まで追い詰めたそうだ。


 だが死に至らしめるには力が及ばず、魔王は何度も復活を遂げているらしい。魔界側も魔界側で、何度も戦力を立て直しては再度王国に向けて軍隊を送っているようだった。更には、もうそろそろその魔王が前回の戦いでの傷を癒しきり、復活する頃合いだということだ。「狙ったようなタイミングだな」と皮肉気に相槌を打ったが、クロは『ねらった“ような”ではない。実際に()()()んじゃ』と返していた。


 さて、【異常地(イレギュラー)】の詳細についてだが、これに関しては何せ人間が立ち入れないもので、(立ち入ったとしても惨殺されて記録に残らない)如何せん文献が少ないらしく、クロも博識、とまではしかないらしい。


 が、クロの話を聞いて分かったこととして、これからの動向に大いに参考になるであろう情報が二つ。


 まず、【異常地(イレギュラー)】には九つのエリアが存在しているらしい。【氷河】【砂漠】【宮殿】【密林】【岩場】【花畑】【火山】【沼地】の八エリアと、そしてもう一つ存在しているようだがクロは『さすがの我でも、そこについての話を聞かされたことはついぞないな。力になれなくてすまない。最上位クラスの神なら何か知っていそうではあるが』と申し訳なさそうに言っていたのでどうやら知らないようだ。仮に【不明】とでもしておこう。


 また、もう一つの情報として、【不明】を除いた各エリアにはそれぞれの“ヌシ”がいて、驚くべき事にそれぞれが神格化されているようだ。曰く、遥か太古の神話に「かつて強大な力を有した神々と【異常地(イレギュラー)】の化け物とが戦った」とあり、どうやらそれは真実らしい。しかし、神側があっけなく全滅したらしかった。その事実に目の前の壁が遥か高みにあることを再度自覚してしまったタツトは自嘲気味に「そんなのにこれから挑もうとしてる俺はなんなんだ?神か?」と拗ねていたが、クロは『ふふ、まあそうふて腐れるな』と愉しげに笑うだけであった。


 ヌシが神格化を遂げた要因はその神々にあるようだった。なんとも悍ましい話ではあるが、神々にを打ち倒した化け物共はその死骸を喰らい、もともと神々が持っていた概念に干渉する力を自らのものとしたらしい。もともと持っていた能力と併せて、最低でも3つ以上の概念干渉系のスキルを手にした魔物が八体。それを聞いてタツトはもはや絶句を通り越して呆れてしまう。



(いや............無理だろ................)


 

 タツトのその悲痛な心の叫びは、彼の今の状況を最も的確に表すそれであった。


 

読んでいただきありがとうございます!

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