一枚のお守り
コウタとミキはサチコの家へ帰る途中、サチコが口を開いた。
「あなたたち、これからどうするの?」
二人は答えようがなく、黙っていると、サチコは言った。
「うちで一緒に暮らさないかしら?主人は去年海軍として戦死したの。家族はこの娘一人だし、この畑を一人でやっていたけど、頼れる身内もいないし大変なの。」
二人は迷っていた。どうにか元の時代に戻らないといつ死ぬかわからない。しかしどう戻るかわからない。
とりあえず二人はサチコの家に行く事にした。
コウタとミキはサチコの家に着くと一つの部屋を割り当てられた。
部屋に入るとコウタは言った。
「こんなところでいても命がいくらあっても足りねえ。一か八か戻るぞ。」
ミキが言う。
「どうやって?」
「俺らが気づいたあの丘へ行こう。」
二人は丘へ行った。何か元の時代へ繋がる次元の扉があるかもしれない、そう思い二人は周りを調べたが変わった事は何もない。
いくら探しても見つからなかった二人は一本の桜の下に座りこんだ。
「もう戻れないのかな、私たち。お父さん、お母さんに会いたいよ。帰りたい。」
そうミキは呟くと泣き出した。コウタはそっとミキを抱きしめ、
「俺が絶対に帰らせる。二人で元の時代へ帰ろう。俺がミキを守ってやる。」
たとえ自分に何かあってもミキだけは助ける。そう言いかけたが、言えなかった。
その時、二人の間に一枚の桜の花びらが舞い落ちた。
コウタは自分のシャツの袖を少し破り、その花びらを包んだ。
「これはお守りだ。ずっと持っていれば、このお守りが俺たちを助けてくれる。」
根拠はなかったが、今の状況でできるコウタの精一杯の優しさだった。いや、コウタ自身もそう信じる事しかできなかった。
「ありがとう」