第七十三話 略奪
今回はかなり時間をかけて進めたつもりです。実質かなり終盤だと思うのですが…。
そんなことを毎回のように言っている気がしなくもないのですが…。なるべく今年度中には終わらせていただきたい!!!マリーネ様、ふぉーえばーってことですか…。
まぁ、とにかくとにかくです!!
第七十三話 略奪
お楽しみください!!!
「さぁ、こちらにおいで…。君こそが私の創る強さとなれるのだから。」
頭に響きわたるその声に導かれて眞幻想は一歩足を踏み出した。
踏み出した足は地面に触れることなく、黒い靄に吸い込まれていく。頭に響き渡る声だけに支配されている眞幻想には、それに気づく事はできずに黒い中へと消えていった。
そして目の前に現れる一人の血まみれの青年。その青年は口を開いた。
「ともに、暴れよう…」
そうささやく声は、どこか優しそうで、暖かくて…しかしその声とは裏腹にその表情は、冷たく、嫉妬に満ちていた。さらにその眼は、どこか彼方を見ているようだった。
眞幻想はいまだなお響き渡る声に支配され続けていた。
そこに聞こえてくる男の声は頭に響くその音を打ち消して届いてくる。
その声だけが、この苦しみから救ってくれるような気がした。だからそんな気がした眞幻想はその声にうなずいてしまった。うなずき、何もない黒い場所に体を預け、意識を失ってしまった。
目の前でタオ手溜め幻想を見ると血まみれの青年は微笑み…。
「もう、貴様を許しはしないぞ…。今度こそ殺して殺して殺して殺してやるううぅぅぅうぅぅぅう!!!」
マリーネは右手に持った剣を竜太の眉間に構える。竜太は発火している覇凱一閃を振り、炎で空気を切り裂き、つぶやいた。
「もう、終わらせたいんだ。お前とのことなんて…」
まず、マリーネが竜太に飛び掛かった。右手の剣で竜太の首を切り落とすことを目的に飛び掛かった。
「そろそろ諦めて、参りましたって言えよ♪そしたら俺は慈悲深いから殺さないよぉー♪」
そういうと、魔王は手に持っていた槍を地面に深く差し込み亮祐を蹴り飛ばした。
「ほぉーらほら…♪苦しいのが続くだけだよ♪」
亮祐はすでに立ち上がる力すらも残っていなかった。立ち上がる力どころか、意識を保つのも容易ではなくなっていた。
「このままだと逝っちゃうよ♪」
しばらく蹴り続けていた魔王だったが急に蹴る足を止めるとぼそりとつぶやく。
「つまんなぁい♪もういいよ、死なせてあげる♪何がいい♪斬首?♪切腹?♪」
にこにこしながら首を右へ左へ傾けしつつ、亮祐に死に方を選ばせていた魔王は右手を鋭利な刃物に変えると亮祐の髪をつかんで無理やり立たせた。
「斬首がいい?♪じゃぁ、そうさせてあげるよ♪ほんと、君って殴られたり蹴られたりするの、スキなの?♪変なのぉー」
亮祐に話しかけている間も魔王の右手は徐々に右上へと上がっていき斬首の準備を始める。
「カウントダウン始めますー♪ごー…」
亮祐は日の光に当てられかすかに輝く刃物を見て目を閉じた。死ぬということを実感した。
「よん~♪…」
死ぬ前には走馬燈が駆け巡るという噂を思い出していた。そしてその噂を鼻で笑って否定した。
ーほんとに死ぬときになったら、何も思わないんだな…。ただ…ただ怖いとかは、思えるんだ…ー
亮祐は静かに息を吐き出した。
「さんになっちゃったよー♪」
もう死んでしまう…。そう思ったのになぜか頭の中には取り溜めていたDVDを見たかったというどうでもいいことが浮かんできた。
「に♪だからもうすぐ首切れる♪」
なぜか耳には魔王の楽しそうなあどけない声とともに木がへし折れていくような音が聞こえていた。
「い♪ち♪」
木がへし折れていく音はどんどん近づいてきて…。
「勝手に殺してんじゃねぇ。首がどうしても斬りたいならおれが切ってやるよ」
亮祐が耳にした声は眞幻想の声だった。
「鉄茨黒銃」
聞こえた眞幻想の声は冷酷非情無比で、何の容赦もためらいもなく銃の引き金を引いて魔王の頭を打ちぬいた。
「鉄衣鎧化」
魔王を打ち抜いた銃を消すと自らの身に鉄の鎧をまとわせた眞幻想は再び森の中へ姿を消そうとする。その背中に亮祐は声をかけた。が、帰ってきた返事はたった一言。
「消えろ」
そういうと眞幻想は消した魔王の槍を持ち去り森の中へと姿を消した。
「あんた、大丈夫!?そんな血だらけの汚物みたいな恰好で…」
反対方向から突然声をかけてきたのは理緒だった。
「私みたいなか弱い女の子を置いて一人で行くからこんな風になるのよ!!!反省しなさい」
突然しゃがんだ理緒は「よっこらしょ」と声を出すと亮祐を抱えると、歩き出した。
「あっちに紋太居るからそっちで休めばいいんじゃない!?」
亮祐は死を免れたという緊張からの解放によりすぐに気を失った。
「おのれっおのれおのれ!!!」
何度も何度も剣をふりかざした。しかしそのたびに竜太は覇凱一閃で剣筋を変え地面をえぐらせる。
「俺は今度は負けないよ。お前の道具にも頼らない。俺は、俺が、俺だけが持っているものでお前に勝ってみせるよ」
そういった竜太は剣の柄でマリーネの顎を素早く突く。
一時的に脳震盪を起こしたマリーネの足をめがけて素早く竜太は剣を叩き込む。マリーネの体の反対側に回ってもう一度剣を叩き込む。
「あうぅあうあ…」
マリーネは足の痛みでしゃがみ込む。そして竜太は再び体を反転させると覇凱一閃を逆手に持ち、頭を叩く。
「まだだ…。俺の苦しみはこんなものじゃなかった。友達を奪われて、飲み込まれて…」
攻撃の手を休めて竜太がつぶやく。
「何百倍にして返してやろうか…」
マリーネはその声を聞き、顔が真っ青になる。
「まずは、百二十倍から…気が済むまでやらしてもらうぞ…」
竜太は逆手持ちだった覇凱一閃を持ち直すとマリーネの首を斬る動作をした。
「なんて言ったけ…お前はこういう時。そうだ…終わりの始まり…だ」
次回、ついに本気でマリーネとの最終決戦へと望む平田竜太。
鳥王を鳥目鳥目と言ってバカにした理緒。竜王と和解した紋太、魚王を三枚に下さず勝利した眞幻想に獣王と壮絶かつ簡潔な戦いをした八迫。そして最後に残念ながら自らの手では魔王を倒すことのできなかった亮祐…。ついに五王を倒した切り裂きジャックwith眞幻想。
そして残されたのは敵将冥浄王マリーネ!!!対するは七の切り裂きジャック平田竜太!!!
ついに始まる最終決戦【よてい。】!!!
圧倒的な強さでマリーネに確実な損傷を与えていく竜太か!?
莫大な量の地獄道具を駆使して闘う冥浄王か!?
眞石版編最大決戦を制する者はどちらだ!!!
次回 切り裂きジャックは殺しません!!!
第七十四話 死闘