第五十八話 派生
竜太は、唖然としていた。一人、弾かれた剣を握り締めて。
「おい、竜太!!!お前もとっとと戦えよ!!!」
八迫がマリーネの剣閃を弾きかわしつつ反撃の瞬間をうかがいながら叫んだ。
「旋回量!!!」
理緒が汀を振り回しマリーネの貴婦人と立ち向かう。
「アドベンチャラー全段射撃!!!」
「トラベラー援護射撃!!!」
亮祐が援護射撃を紋太が攻撃、防御などをあげる射撃を打ち続けていた。
「輪円回転剣!!!!!」
眞幻想が数十本の剣を円状に回転させてマリーネに差し向ける。
「これでは私から石版を奪うことなんて到底無理ですね」
全てを交わし弾き優雅に舞うマリーネは一瞬の隙も無かった。
竜太はそれを傍観しているしかなかった。今の自分には龍魂剣も何もない、ただの無力な学生だと実感していた。
「豪火竜!!!豪火竜!!!」
いつの間にか叫びながら、竜太は創造の剣をマリーネに思いっきり振り降ろしていた。
鈍い音とマリーネの口から発せられたうめき声で膝をついた。
膝を突く拍子に石版が一枚、運悪く台座にはまってしまった。禍々しい光をあたり一面に撒き散らしながら、一枚目の石版は台座ごと姿を消す。残る台座がまだかまだかと、自らにはめられる物が来るのを待つかのように振動し始めた。
「何、これ、生きて・・・」
理緒が思わず息を呑んで台座に目を奪われる。
「こんな物がまだ存在していたのか・・・!?」
八迫が一人、歯軋りして台座をにらんだ。
紋太はただ台座から目を背けることが出来ず凝視していた。
亮祐は、台座にはまってしまった石版の行方を考えていたが、決して答えには辿り着けなかった。
竜太と眞幻想の二人は台座に眼を奪われていなかった。
マリーネが意識を失っている一瞬を狙って竜太は竜魂剣を奪い取り、眞幻想は石版を二枚、奪い取っていた。
剣は返してもらうぞ!!!」
「俺の
石版は返してもらう!!!」
竜太はマリーネの竜魂剣を創造の力で。眞幻想は、石版の二枚を輪円回転剣で粉砕した。
ようやく気がついたマリーネは自分の体が軽くなったことに気がついた。そして竜太と眞幻想の方を向いて笑い出した。
「お前達に剣と石版が奪われたとしても結果は何も換わりはしない。これからが始まるんだよぉ!!!」
そう叫ぶと両手を交差させて再び叫んだ。
「暗黒闇波!!!」
とたん、あたりは闇に包まれ何も見えなくなる。
そんな中、マリーネの声だけが響き渡る。
《お前達、誰からつらく苦しい“死”を体験したい??》
誰も何も答えられず、しばしの闇が生まれる。そして、その闇を振り払ったのが・・・
《主よ!!!負けないでください!!!私は、いつでもあなたとともにありたいと思っていますから、どうか、どうかマリーネを!!!》
暗闇の中、竜太の中に、はっきりと豪火竜の声が響き渡っていた。
いつの間にか声に出して返事をしていた。
「理解った。豪火竜。お前の伝えたいことが」
大きく深呼吸をした。暗闇を吸って、吐き出す。心なしか、冷たい、悲しい味の暗闇を吸って吐く。
仲間達のうめき声が鳴り響く中、竜太は精神統一を始めた。
そしてある程度の時間がたった頃、竜太は今まで閉じていた目を開き、竜魂剣の柄で空間を斬った。
とたん、暗闇は消えて、今までいた場所が見える。
「竜太・・・」
理緒は竜太の方を指差してつぶやいた。
「それ・・・何?」
そういわれて竜太は始めて自分の手の中にあるものを見た。
「炎斬刀覇凱一閃・・・!」
竜太はつぶやいた。
「豪火竜が貸してくれた竜魂剣の派生武器、炎斬刀覇凱一閃だ・・・」
炎斬刀覇凱一閃は所々に竜の文様があしらわれ、赤い宝玉がはめ込まれた剣だった。
「行くぞ、マリーネ。豪火竜は返してもらうからな」
竜太は覇凱一閃を構え、マリーネの前に立ちはだかった。
続いて、理緒がその右。紋太が左に。さらに八迫がその更に右、亮祐が更に左に一列に並んだ。
最後に眞幻想が一人文あいている理緒の隣に並んだ。
「瞑浄王は復活させないし、豪火竜もお前には渡さない。お前から全部奪ってやる。覚悟しろ」
竜太はやっとの思いでこれまで言われてきたことを全て言い返した。
ー次回予告ー
ついに豪火竜奪還かと思いきやいきなりの登場の炎斬刀覇凱一閃。豪火竜の思いで作られているとかいろいろあるが、結果的に覇凱一閃は強いのか!?覇凱一閃のこれからの活躍、そしてマリーネとの最終決戦ファイナルマッチがようやく始まる!!!
次回、切り裂きジャックは殺しません!!!
第五十九話 炎上【仮】