第五十七話 事実
「お前は何も知らなかったのか・・・。これは、瞑浄王イバラーグを甦らせるための三枚の石版。一つ目の石版は、瞑浄王の体を封じ、二枚目の石版で体を。これこそが地獄の宝物。そして、全てを完結へと一方的に導く最後の鍵。これをあの台座にはめさえすれば、全てが終わるために全てが始まる・・・。二世界融合すらも始まる。国王、獄王すらもひれ伏す、イバラーグが降臨する。そして、それこそが私が求めていた全ての始まりにして到達点。三枚目の石版でその二つを縛り付けている鎖、怨呪の鎖を解き放ち、イバラーグと肉体を同化する地獄の奥義。貴様は、そこで終わりの始まりをよく見ておくがいいさ」
眞幻想は自分が知らされていた事実との異なる点について驚愕していた。アレは自分達の望みを叶えてくれる道具で、そのために自分は動いて、全てを創めようとしていたはずなのに。
しかし・・・・。眞幻想には決して譲る事の出来ないことがあった。
「それが、例え俺の願望、地球の創造を手伝ってくれないにしてもそれは俺が、集めてきた物だ。お前に献上するために集めた物じゃない。貴様に渡すぐらいなら、壊すか、最悪あいつらに渡すさ。だから、俺はそれを全力で取り返す。覚悟しろ、地獄の反逆児!!!」
眞幻想は双剣を異空間に転送して長剣を二本呼び出して構えた。
「究極剣士の称号を甘く見るなよ・・・」
眞幻想は、マリーネに一人立ち向かっていった。
金属音がかすかに届いていた。そして目をゆっくりと開けた紋太の目に映っていたのは眞幻想とマリーネが戦っている姿だった。
紋太から見てみたらどちらも敵方で、どちらを狙ったらいいのか、トラベラーを構えつつ悩んだ。
そして結果、マリーネを撃った。
先ほどから、眞幻想の叫び声とそれに続く金属がぶつかる音と銃声が切り裂きジャックには聞こえていた。
「紋太だ!!!紋太がいる!!!」
過保護な亮祐が竜太の背をどついて耳元で叫んだ。
暗い螺旋階段を下りていた竜太はいきなりの衝撃に耐え切れず一人螺旋階段をひたすら転げ落ちていった。
「・・・。バカ。お前押すなよ・・・」
転げ落ちる竜太の姿と泣き声を耳にして八迫は思わず手で顔を覆いながら苦笑いしてしまった。
「そ・・・そんなことより、早く追いかけなきゃいけないでしょうが!!!」
理緒が若干あわてたようで一人全速力で走りながら竜太を追いかけていった。
「ほら、行くぜ!?亮祐」
そういうやいなや八迫は亮祐の手を持ち、螺旋階段の柵を乗り越えた。
「ばっ!!!・・・・ばかぁぁぁぁぁ!!!」
紋太のことで忘れていたが、今自分がいる場所が途轍もない高所だということに気がついた亮祐は涙を拭う事すら忘れて絶叫した。
「騒がしい奴らが来るようだな・・。数は一人でも死んでいる方が、物事は俊敏に行なえる。眞幻想。貴殿はよく勤めを果たしてくれた。消えて存在を虚無へ導いてやる!!!竹刀奥義火炎炎上柱ぁ!!!」
マリーネが持っていた龍魂剣から、激しい火柱がほとばしり、眞幻想を囲い、その輪を徐々に縮めていく。
紋太が一応眞幻想に手助けしようとトラベラーを撃つが貴婦人に弾かれる。
「龍魂奥義火炎竜!!!」
そして、竜魂剣から豪火竜が飛び出て、眞幻想に向かう。
眞幻想は火柱で身動きが取れない状況にいた。
「ううぇいうおっぷはっ!!!」
螺旋階段からちょうど竜太がその場所に転がり落ちてきた。
それに若干驚いたマリーネは竜魂剣を振り降ろすことをためらった。
数秒の空白を置いてから竜太はようやく自分がどういった状況下にあるかを悟り、切り裂きジャック残りの三人はその場に到着し、台座付近に全てがそろった。
竜太はマリーネが持っている剣に目を奪われていた。
「竜魂・・・・」
竜魂剣がマリーネの手にきっちりとはまっていた。
「ふふふ。これはもともと私の持ち物だ。お前に一時的に付与していたに過ぎないんだよ。死者の面にしてもそうだ。お前の持ち物にお前の物なんて一つもないだろう?何があるんだ。お前には何が残っている?」
竜太は下を向きながら立ち上がった。
「まだ、仲間が残ってる。友達が残ってるっ!!!」
創造の剣でマリーネに切りかかった。
それに引き続き、八迫が、理緒が、紋太も亮祐もマリーネに立ち向かった。
「その石版は、お前には決して渡さない!!!」
眞幻想も千本近くの剣を呼び出し、立ち向かった。
次回、全ての駒がそろった台座版で全てを抱えた最後が始まる。
龍魂剣を構え襲いくるマリーネに、竜太は一人、立ち向かうことが出来ない。
しかし、マリーネを倒し、石版を奪わないと瞑浄王イバラーグが復活してしまう。果たして、竜太はどうするのか。
第五十八話 龍魂【仮】