第四十一話 殺意
竜太の運命がやっと決まりました。
そしてこれからの展開の大筋の一部も確定しました。
なんていうアバウトな決定だろうか。
これは決定といえないだろという突っ込み、お待ちしてませんよー。
それは明らかな殺意により行われた行為である事は明確だった。
竜太の足元に飛び込んできた刃物を持った何か。
これは決して人間であることはなく、人間の文明ではありえないものだった。
ありえるとしたら、新しい敵か、マリーネぐらいだ。
そして、ソイツに戦おうと思うと、変身しなくてはならなくて、しかしこんな街中で変身なんかしたら変人扱いされるのが明確で。
結局のところ竜太は逃げるしかなかった。
「何でこんなことになっちまったんだよぉ~」
「っち、ここでの活動に慣れていないのか」
竜太の居た場所に降り立ってくると、マリーネは刃物ごとそれをネジ砕いた。
周りの通行人の中はいきなりやってきたそれに目を丸くするものも居た。
叫ぶものも、さまざまだ。
「だまれ、弱者よ。貴様らの死生はあとでじっくり決めることなのだから・・・」
マリーネはそういうと竜太のあとを空中移動で追いかけた。
「八迫?亮祐?悶太?理緒・・・」
竜太は必死に連絡を取ろうとしていた。
連絡しているが、全くこちらからはつながらない。
狙われているのが俺ではなく俺たちであることにぞっとする。
「竜太、聞こえる?」
突如なったジャックにびっくりしてお漏らししてしまったのは少しだけ内緒だ。
理緒からの連絡だった。
「理緒・・・今、どこに居るの?」
「今私は大通りのベルコのクレープ屋の行列にならんでいるわ。ちなみに、戦闘後の糖分補給中よ。あんたもおそらく狙われてると思うけど・・・」
ベルコ・・・。そういえばここは確かベルコとかいうショッピングモールのはずだ。ここのクレープやは一階ファーストフードコートにあるはずだから、すぐとなりだ。
「理緒~」
理緒を見つけた竜太は思わず走って近づいてしまった。
「あぁ、竜太・・・。あんたも襲われたのよね。もちろん」
それからしばらく、理緒と竜太は一階ファーストフードコートにて間食兼ねて作戦会議をしていた。
「まぁ、返信がないのを見ると、全員捕まったか・・・」
その先の言葉は言わない、いえない。
「とにかく、一度本部に戻って情報収集してみましょう。それから行動を起こしても遅くはないはずだわよ」
理緒のこういうときの行動力はすごい。
竜太なんか何の取り柄も泣いただのおばかさんなのに・・・。
「そん・・・な・・・・・」
本部で待っていたのは半壊していた本部がさらに半壊、全壊している姿だった。
ここまできれいに壊されているともうここに二度と同じものを創ることはできないと考えていいだろう。
「とに・・・かく、本部の中に何かあるかもしれないわ。各自変身して捜索開始ね」
そういって二人別れた竜太と理緒だったが、それが間違いだった。
二人が行ったどちらにも罠が張り巡らされているのだから。
「理緒さまが、こんなところに来るなんてあとで金持ちのボンボンからおいしぃー物奢って貰わなきゃいけないわねぇー。うふふ」
すでに頭の中は食事で一杯、理緒の通ったあとの道には転々と謎の液体がたれている・・・。
決してこれは女性だと思ってはいけない。
これは女ならぬ生き物がたらすことの出来る液体。
涎だ。
ドンだけこいつは飢えてんだと思うなかれ。只単に胃袋が四次元になっているチョコット怪力の少女なだけなのだから。
理緒はいつの間にか、いつもみんなで談話していた場所に来ていた。
そこで座っているのはお金持ちのぼんぼん。
「亮祐、無事だったのね!ところでなんでこんなところに一人で居るの?」
廃墟と化した中にかろうじて形を残しているソファーに座っている亮祐に歩み寄る。
そして肩に手を置いて話を続ける。
「私と竜太、なんか変なのに襲われちゃって、だから、みんな集めて一気にたたいてあげましょう!」
亮祐はゆっくりと顔をこちらに向けて、やさしく微笑む。
「それでか・・・。誰もいないし、壊れてるし連絡もつかないし、どこに居るかもわかんなかったから、ここで待つことにしてたんだよ。よかったよ、誰か来てくれて。これで一回帰れるよ」
亮祐は口をあけてその口の中に手を突っ込んだ。
「おえ、おあえをこおすんば。おいて、えくかするあえにうええう」
理緒はとっさにその場から一歩引いた。
「私を殺して、それで、木偶化するために連れて行くですって!」
・・・。なぜ言葉が通じているのかは、謎だ。
全く持って謎だ。
「ふぅ・・・。こんなところに居て誰かに襲われないかな・・・」
先ほどから通路を猫背で恐る恐る歩く少年は、物音がするたびにそちらを振り向いておびえていた。
この通路が元は何なのか、それすらも全くわからない。
すべては、ダークガーディアンのせいだ。
そんなこんなであたりに注意していなかった竜太はいきなり何かに躓いてこけた。
それはもう、すごい音を出して。
すてーん、でもずでーんでもなかった。
ぐわっしゃーん、どがどがどがばっこんどがばこびだがっがんぐしゃ!
こんな音で表すのがしっくりする位すごい音だった。
例えるのなら、恐竜が建造物をえぐり倒れる音、それに黒板を爪で引っかいた音と、卵がつぶれる音を混ぜた感じの音だった。
当然、まわりの瓦礫はゆれて、倒れた。
次回、四十二話 基地