第三十六話 破壊
基地が壊れていた。おそらくそれは先日の先頭によるものであると、私の脳は、そしてわれわれのデータベースは処理をする。
これは好都合だ。
目の前には作業服を着たその道のエキスパートのような少年が立って建築している。
しかし、エキスパートな少年など存在するはずがないと思うので、私は彼をわれわれが処理すべき対象として捕らえる。
こちらに背を向けてのんきに飲んでいるそれは最近の新商品のかふぇー日本道のかふぇーラテである。
予断ではあるが、ワタシはアレを気に入っている。すでにワタシの私室の冷蔵庫から押入れにいたる全ての収納スペースはアレのためにあるといっても過言ではないほどだ。
「おい、お前」
突然の声に反応した彼に。
振り向いた彼の口を私の口で塞ぐ。
ふぐぐとくぐもった声がする。
私はこれで彼の記憶を知る。
これが私の役目だ。相手の口からすべてを吸い尽くし、私の中に蓄積する。そして蓄積されたデータは私の一部より、われわれのデータベースへと送信される。
すべてを吸い尽くすまで十秒。
口を離したとたん彼はワタシのほうに倒れる。軽く酸欠状態に陥っているようだ。
しかし、それもつかの間だ。私は情報を得る代わりに夢を与える。私が存在る限り続く覚めぬ夢を。
こうして夢を持った彼は私の不要な手駒となる。
やがて、それは世界へとおよび遺されるのは彼らの中のごく一部になりその残った彼らは世界すべてを敵に回す。
彼らを消滅させる彼らの敵、私たちの捨て駒。
「さぁ、私についてらっしゃい。永遠に覚めぬ夢を与えてあげるわ」
うつろな目をした彼はワタシに逆らうことなく、黙って従う。世界を支配する女王たるワタシに相応しい手駒たち。
これでワタシへの彼からのお願いは完了した。
後は、残っているアレとかに遣らせればいい。
ワタシは彼からのお願いを全うしたのだから。
支配だけがワタシへのお願い。後始末は彼がしてくれる。ワタシの大好きな彼が。
そのとき、悶太は足りなくなった木材とコンクリートを補うためにかろうじて無事であった裏倉庫へコンクリートと木材を取りに行き、もって帰って来るところだった。
しかし、いざ帰ってきてみるとどこにも家族とも言える彼はおらず只、そこには彼の身に纏っていたであろう安全こそ第一のヘルメットや、作業服だけが落ちていた。
すぐさま異変を感じ取った悶太は、腕につけた便利時計形のジャックで連絡を取ろうとしたのだが、それはつながることなく、突然、彼の目の前には一振りの剣が空から落ちていた。
その剣の上に普通に立っている男もまた、突然と現れたのだった。
「貴様もまた我らの邪魔をする正義のものか。」
悶太には何一つとして今の状況がわからなかった。
しかし、ひとつ確認できたのは、亮祐が彼らにさらわれてしまったということだった。
そのほかには何もわからない。
誰が何の目的で彼をさらって行ったのか。