第三十二話 地獄の新王
真昼の破壊編、遂に完結!
話は少なかったのに長かったのは、どこかの誰かがサボっていたから?
そんな事ありませんよね。
第三十二話 地獄の新王
「薪を火にいれ、どっさどっさ!
人間のがきで焼っ肉焼っ肉
新王への貢ぎ!貢ぎ!まずは香辛料の湯に入れーろー!」
誰かが歌っていた。そして、その歌っている誰かに、悶太は運ばれていった。
そこは、香辛料の湯。
地獄の反逆児のあとを継いだサグァンデュルは、悶太を食べる気でいた。
ステーキにするつもりでいた。
獣の顔をした奴は、悶太の着ている邪魔な布切れを破り捨てた。
「この布まで、サグァンデュル様はお食べにならない。」
そう言っていた。
そして、気を失っている悶太を運び、香辛料の中へ、体育座りをさせて入れた。
「薪をモット・・・・外からカリカリのこげこげじゃぁぁぁぁ!」
奴はお下劣に涎をたらして部下に命令した。
竜太は、それを見ていた。
「龍撃手、奴らを切り刻んでこい!」
「シャラキキカ、ホホセロバハニ!」
しゅじんの、おおせのままに。と、言った龍撃手は帰ってきた。
何もいなかった。
竜太は悶太をゆっくり抱きかかえると、久しぶりに想像した。
「一文字悶太に暖かい衣を。」
悶太の体にはいつの間にか立派な服が被せられていた。
「さあ、龍撃手、悶太をたのんだぞ。」
龍撃手は無言でうなずくと、今、来た道を戻っていった。
竜太は竜魂剣と、先に進んでいった。
サグァンデュルの待つ、元マリーネの部屋へと。
「サグァンデュル!」
竜太は扉を切り開いて叫んだ。
つもりだった。
けれど、その先にも扉があった。
「サグァンデュル!」
竜太は扉を切り開いて叫んだ。
つもりだった。
けれどもまだその先にも扉があった。
そして、三百七十三枚目の扉を切り開いたとき、サグァンデュルはいた。
叫ぶ事は、出来なかった。
「ほう、死者の面から解き放たれたのですか。まあ、先代の王、マリーネ様が冥界に召されましたからね。当然だ。それで、用は何か、お聞きしたく存じますが?」
竜太は無言で切りかかった。
「無粋な人間です事。オッホホホホホ。マロは愉快である。たいそう、ご立腹である!」
暗殺剣界戒を竜太のつま先まで振り下ろした。
「竜魂奥義聖者の戯れ!」
「マリーネ・・・様、冥界に逝くのは、私でも、宜しいでしょうか。このサグァンデュル、貴方様のような寛大なお力を、お持ちになれませんでし・・・・・がぁぁぁぁぁぁ!」
サグァンデュルの口から、心臓が出てきた。
「まじーねざばの、じんぞう・・・・・。わだじのものにじで、わだじが、まじーねざばのぶんぼ・・・・・・王を、づどめざぜていだだきだく・・・ぞんじばず・・・。」
口から、血を垂れ流しながら、サグァンデュルはマリーナの心臓を追い求めた。しかし、その前に、サグァンデュルは、動きを止めた。
そして、マリーネの心臓は、不規則に動き始めていた。
「やばいです!主、ここはお逃げに・・・。」
竜魂剣から豪火龍は出てきていった。しかし、主は、顔を抑えていた。
「うあぁ・・・・・・・あがぁ・・・・・ぐ・・・・はぁ・・・・はぁ・・・・・。」
そして大きく息を吸うと、倒れた。
動かなくなった竜太の代わりにでもなるというのか、マリーネの心臓は、早く忙しく動き始め、初めて一本の血管が、サグァンデュルの肉体にたどり着いた。そして、心臓は動いていき、遂には、サグァンデュルの口の中へと再び入っていった。
サグァンデュルの肉体は、しゅうしゅうと煙を上げ、身長が高くやせ細っていく。
マリーネの肉体に近づいていった。
そして、次の瞬間、サグァンデュルのものだった肉体は、遂にマリーネとなっていた。
「ふふふふ。サグァンデュル。我が良き部下よ。この肉体、少々もろいが、使わせていただく。まずは、こやつの死者の面を使って・・・・。」
「それはさせません!」
竜魂剣から、業火龍が出てきて、マリーネの前に降り立った。
「ほう、我が血肉を分け、創られた存在の業火龍。我が肉体に、再び舞い戻るがいい!」
マリーネは、業火龍を両手で捕らえた。
「ならば、主には、手を出すなよ・・・・・。」
最後の最後に消え行く瞬間、業火龍はそういった。
マリーネは律儀に答えた。
「ああ、今はまだ、な。地上殲滅部隊の数が足りんのだよ、業火龍。お前にも、我が分身としてきっちり働いてもらうぞ・・・。」
マリーネは竜太と業火龍の消えて竜魂剣を地上へ投げ返した。
そして、竜魂剣は、粉々になり、地上に付いた竜太の上に覆いかぶさった。
「サグァンデュルの肉体では、これまでのようには行かんな。まず、死者の面を操れない。不便な肉体だが、感謝するぞ。」
マリーネは、地獄の奥底へと、消えていった。
業火龍を吸収して。
「ある・・・・じ。」
業火龍は、マリーナの意志気体の中で戦ったが、黒いものに包まれた。最後の言葉は、主には届いていない。
竜太は、目覚めた上で、現実を理解した。
理緒も、八迫も、亮祐も、悶太も。
今誰一人として、動けない。
そして七の切り裂きジャック平田竜太の最愛の武器は、もう存在しない。
存在するのは混沌だけ。
次回予告 新章休養、本部一週間編始動!
竜魂剣も粉々になり、業火龍すらも消えた。
すべてはマリーネを倒すため、竜太たち切り裂きジャックも一週間という短い休暇にはることにした。
そして、その裏で動く五人の人影。果たして、その五人とは!