第十四話 音音長邪の音色
ガルガンティア戦が終わり、切り裂きジャックは、病院で休養中だったのだが・・・・。
第十四話 音音長邪の音色
ガルガンティア侵略から二日後・・・。
八迫、悶太、理緒、亮祐、竜太の五人は、切り裂きジャック専門病院ホスピタルジャックに入院していた。ジャッカーは専門の車業者に頼んで直してもらったり・・・。でも直せなかったものもある。ガルガンティアが放った覇道弾エヴァーニェン・サージェによってえぐられた、地面だ。そればっかりは、何もできなかった。
竜太は、寝ているとき、何かの音を、ここ最近毎晩聞くようになっていた。
八迫の脳内にも、それは響いていた。そして、その音色とともに、誰かがしゃべりかけてくる。
「さあ八迫。君の本当の力を出すんだ。君の力はあの力があってこそなんだから。」
竜太は、それを知らない。亮祐も、理緒も、悶太も。八迫だけが知っている。この声は、桐原須藤だと・・・・・。そして毎晩のように聞いた音色は、次第に八迫の意識と、理性をなくしていった。
その度に音色はやんで須藤の言葉だけが響く。
「さあ。君はもう僕のものだ。暴れろ。栗柄八迫。」
音色は止まらない。支配を止めようとする、精神力も、次第に消えていく・・・・。
ある日、八迫は暴走した。
「グルルルルルルル。ウガアアアアウウウウウウウッ!」
いち早く気が付いた理緒と亮祐が捕まえる。亮祐は悶太に頼んだ。
「八迫が暴れている理由を突き止めて、止めさせてくれ。」
悶太は、うなずくと竜太の顔面にスリッパを投げつけ、起こした。
「ふげでっ!」
顔面にスリッパの跡を残した竜太が起きあがった。
「にゃに?」
亮祐は、面倒くさいという顔で竜太の方を向くと、悶太に言った説明をもう一度言った。
「八迫が暴れている理由を突き止めて、止めさせてくれ。」
今度は棒読みだった。
悶太は竜太の手をつかむと病室から出るために、ぐいぐい引っ張ったが、小学生の力で中学生を引っ張るのは無理があった。
「いけばいいんでしょう・・・。」
竜太は仏頂面で退室した。
「ウガアアアアアアアアアアアアッ。ドルルルルルルルルルル。」
あたまのなかにながれるすどうのこえをとめようとするが・・・・・・
竜太は、頭に笛の音が響いていた。悶太の頭にも。それは病室では強く聞こえ、今、病室から遠ざかるにつれて、笛の音は弱くなっていく。
「なあ。悶太。笛の音色、聞こえてるよな。」
悶太は立ち止まると竜太の方を向いて答えた。
「うん。」
竜太はホームズのまねをする。
「と言うことはだ。ワトソン君。」
「僕ワトソンじゃなくて、モリアーティが良いのに・・・。」
なかなか渋いところを突く悶太だった。
「今回の事件、遠ざかる笛の音色・・・・・。、真実は見つかったよ。」
最後の方は、もうやけくそだった。
悶太が変わりに答えを言う。
「今回の事件、犯人は、病院にいる。」
八迫は、暗い、深い海の底にいた。
ここなら誰にも分からないんじゃないんだろうか。
そう思った八迫のほおには一筋の涙がこぼれる。
須藤を止められなかった悔しさ、悲しさ・・・。
それらが今、体の外にでていくような気がした。止めようと思っても勝手に流れ出る。
八迫は、深い、暗い海の底にいた。
「須藤・・・・・。」
八迫はやっと一言漏らした。
まだあいつが生きていた。
そんなこと、今まで知らなかった。
次回、あいつが再登場!