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第百三十七話 It is a smiling face which has not been shown until now.

どくん、と跳ねる心臓の音は確かに暗闇に響いた。

あぁ、ようやくだ。ようやく終焉を迎えることができるんだ。

この間はどうやって負けたんだっけ。うん。思い出した。あの時は俺は、俺たちは剣の一振りで負けたんだ。

ねぇ、今度はどうする??今度は、僕達はどんな方法であいつらに仕返ししてやる??

そうだね、じゃぁ私が決めてもいいでしょ??今度はね、私たちが力を一つに集めて、“下”にぶつけてやりましょうよ。

うふふ、それはきっと素晴らしい事ですわ。

ではいきましょうか……。私たちの力をもってすればあの方たちなど一捻り、いえ、赤子の手を捻るよりも簡単でしょうね……。

それより、早くいこうよ、僕もう待てなくなっちゃった。

まぁまぁ、この子ももう待てなくなっているみたいだし、そろそろ行きましょうよ。


そうだね、僕たちもそろそろ暴れたくなってきたしね。

行こうか、壊しに。



地面に倒れたまま、少年は黒鍵に手を伸ばす。

そして、無表情で通路を見ている少年の手を黒鍵はゆっくりと握り、起き上がらせる。

ゆっくりと起き上がる少年の目が一瞬、ぎろりと黒鍵を睨んだ瞬間に少年は黒鍵を蹴り飛ばし、首に手をかける。

「それでも僕は君のほうにはつかないよ。君や、大人たちに言われる一言よりも、僕はシャガンと一緒に居た時に感じたシャガンを信じるよ……」

少年は地面で倒れる黒鍵を押さえつけ、首にかける力を強めるとなすすべもなく立ち尽くしている竜太たちに“神の国”の破壊を叫ぶ。

我を取り戻したように竜太と祀を残し、理緒は砺磑と凱史を連れて来た道を戻っていく。今まで考える暇もなかったが、考えてみれば、ここに黒鍵がいるということは足止めをするといっていた八迫はここに来るまでの道中で倒れていることになる。最悪、黒鍵の手によって……と、そこで理緒はその考えを捨てる。

それは考えたくもないことだし、考えてしまえば万が一の可能性もたたれてしまうかも知れないと考えることすらも考えたくないと、理緒は首を振って駆け出す足を速める。

この狭い通路でこの大人数では黒鍵の的にしかならない。そう判断した鐵の意見によって鐵と佚榎、そして紋太はさらに奥へと続く通路にまでびっしりと並ぶ機械を破壊することに回る。

残る竜太と祀、そして少年は黒鍵に刃を向ける。

「あ、あはははは……」

突如狂ったかのように笑い始める黒鍵に三人は少し後ずさる。

それに気にもしない黒鍵は笑ったまま立ち上がると即座に竜太たちの後ろに回る。

「君たちみたいに僕に向かって来るのはいいけどさ、せめてそれが勝てる相手か、瞬殺される相手かぐらいの判断はつけようよ。そうじゃないと、死んじゃうんだよ」

突然の移動に反応できずに固まる竜太と祀を差し置いて少年が黒鍵の移動速度に反応し攻撃を仕掛ける。

竜太たちはやはりその速度に体がついて行くことができずに、少年と黒鍵の戦いを只見守ることになる。

そんな状況を見かねた黒鍵が依然として笑いながら竜太たちにちょっかいをだす。

「やっぱり君たちじゃぁ、僕の本気にはかなわないってことになるね。おとなしく僕と僕の半身との戦いのギャラリーをしているといいよ」

ケラケラと笑いながら黒鍵は少年を徐々に追い詰めていく。

「シャガンはお前は危険だと言った。だからシャガンはお前を消す方法を探ってたんだ。そして俺がお前に取り付かれる前に、シャガンは俺に教えてくれたんだ。お前をへし折る方法を!!!」

少年は黒鍵の右からの振り下ろしを足で蹴り返すと次に飛んできた突きを受け止めて少年が勝利を確信して笑う。

その笑みを見たシャガンの顔に若干の焦りの色が浮かぶ。しかし、それをはったりと考えた黒鍵が掴まれていない右手で少年の腕を切り落とそうと剣を振るう。しかしそれは竜太と祀の手に握られた日本の剣によって阻まれる。

「貴様らは止まっている強者にしか手を出せないとは…情けないヒーローどもだな!!!」

状況を有利に見ているのか、黒鍵は全く動じる気配もなく、どれどころか、黒鍵は少年につかまれている左手を剣状態から直し、緩んだ拘束から左手を抜き、再び剣状に戻すと少年の腹部に遠慮容赦なくそれを差し込む。

痛みに顔が引きつる少年に顔を向けたまま、黒鍵は三人に言い聞かせるようにゆっくりと言葉を紡ぎだしていく。

「お前らはこの“神の国”を壊すといったな。それからどうするんだ??“神の国”は落ちるぞ。運が良ければ何もないだろうが、早々物語は上手くできてはいない。人が逃げている場所に落ちたら??その前にお得意の剣で分解するか?無理だ。“神の国”の大きさを甘く見過ぎている。貴様らに分かりやすく言うなら、東京ドーム5,6個分と言ったところか。それにな、この場所にいるのが俺と貴様らだけだと誰が言ったんだ。第三者が乗っていてもおかしくはないだろう!?」

最終的な勝利を確信した黒鍵がゆっくりとその手を少年から抜き取ると、回し蹴りで三人を弾き飛ばすとその場で手に着いた少年の血を払い飛ばす。

先程とは打って変わって、地面でもがく少年に襲い掛かろうとする黒鍵の前に竜太と祀が間に割って入る。が、黒鍵の速度はそれをはるかに上回り、またもや竜太と祀の攻撃を払いのける。

「遅い、まだまだ追いついてこれないのか……こんなものでよくもまぁ……」

小馬鹿にした笑みを含みながら次々と斬撃を繰り出す黒鍵の攻撃を防ぐことしかできない竜太たちに、黒鍵は容赦なく追い打ちをかけ、そしてついには竜太と祀も少年の隣で地面に付すのだった。



「じゃぁ、そっち頼んだよ~」

と、言いながらチェーンを振り回し機械を壊していく佚榎の応えるように紋太がトラベラーとアドベンチャラーを乱射して機材を片っ端から壊していく。そしてそれに負けじと鐵が無言で機材を破壊していく。

機材はまだまだ後ろに続いている。

そんな中で、ゆっくりと光を放ち、明滅する何かが近づいていた。



駆け寄った時に、八迫は荒々しく。不規則に呼吸をし、そのほかは全く動かず、駆け寄った理緒たちに対する反応はなかった。

いや、その表現は正しくない。正確に言うならば八迫には反応するだけの余力はなく、それゆえに反応はなかった、というのが正しい。

だから咄嗟に体を起こした理緒が手加減なしに抱きしめた時にも反応はなかった。

砺磑も壊すことに重きを置いているので、どうしたらいいのかとその場で慌てふためく。

そんな中で凱史が冷静に本人曰くゴスロリ必須アイテムが入っているらしいポケットからどう見ても入らないような大きさの医療キットを取り出し、その中に入っている緑色の液体を八迫に全てかける。

途端に荒かった八迫の呼吸が徐々に落ち着いていく。

「うん、これであとはのんびりしてればいいんじゃないかな」

その言葉に理緒は安堵し、八迫の頭を軽くはたく。

それを見た砺磑は左のほうにある、倒れている八迫が部品から手作りでくみ上げた水陸空用自立走行車

を指さす。

「あそこで休ませて、みんなの帰りを待っていたらどうか」という砺磑の意見を採択した理緒と凱史と分担して八迫を運びながら水陸空用自立走行車へと歩いていく。

そこで出迎えてくれたのは、機械音声のはしるどー君の声だった。



「嫌になるよね。何度叩き潰してもまたよじ登ってくるようなウジ虫がごときその精神。まったく、尊敬しちゃうよね」

やれやれ、とさも体で表現したそうな表情で黒鍵は一歩一歩距離を詰めていく。

絶体絶命とはこういう状況で使う言葉なのかと、竜太はぼんやりと思う。そうした中で、少年が囁きかけてくる。

「君たちに、黒鍵に勝ちたいという意思はある?黒鍵を壊したいと思う意思はある??勝ちたい??」

ゆっくりとつかまれる手を見た竜太は、そして祀は間をおかずにその言葉に応え、叫ぶ。

『勝ちたいっ!!!』

その言葉を聞いた少年がこれまで見せたことのないような笑顔で満足げに笑う。

「じゃぁ、今度は僕が君たちに力を貸す番だっ!!!」

今まで見せたことのないような笑顔で。


やっぱりそれほど話が進まず……。

けれどまぁこれで。

次回は一週間後にできたらいいなぁと思うのですが、毎度おなじみの確約ができないって……。

しかも今回は三連休じゃなかったらあげられずに来週になっていたこと請け合いですね。

やっぱり自分で決めた期限は必ず守らなくてはならないなぁと思いつつ今回はここまでで逃げるのでしたっ!

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