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第百二十九話 He woke up without mercy.

目覚めた彼は容赦することなく。

その瞬間に少年の眉間にはしわがより、一瞬でシャガンは吹き飛ばされる。けれどもそれで少年の気がすむわけでもなく、更に追撃がシャガンを襲う。

「先に死にたいかぁ!!!」

ひたすら攻撃を受け続けるシャガンは、手の届く範囲で倒れている竜太の黒鍵に手を伸ばす。絡まった黒鍵を必死に外そうともがくが、黒鍵は留まるところを知らぬように強く竜太に巻きついていく。続いて、背後から容赦なく追撃を続ける少年の炎雷刀王者龍閃えんらいとうおうじゃりゅうせんは炎と雷をまとい、シャガンの身を包んでいった。

竜太は一向に動くことなく、黒鍵に縛られ地面に倒れている。シャガンが必死に掴んだ手から移っていく炎と雷は、黒鍵から更に竜太へと移っていき、その体を焦がしていく。

限界はすでに感じている。けれどもここで終わってしまってはまたあの時と同じように、何もすることなく終わってしまう。それでは終わってしまう。このまま消えてしまってもアラルトベーラは許してくれないだろう。きっと彼女の事だ、自分の身の安全なんて顧みずにきっと自分の事を守ってくれなどと言ったのだろう。ならばここで彼らに恩返しぐらいしておかなければ彼女は口もきいてすらくれないだろう。だったら、彼をたたき起こしてやるぐらいの事は、しておきたいものだと、シャガンは一人歯を食いしばり竜太を睨みつけた。それから思いっきり拳を握り、竜太の顔面に叩き込む。

「起きろ、平田竜太ぁーっ!!!」

かすかに指先が動くだけで、一向に起きようとしない竜太を前に再び殴ろうとするシャガンの手を少年が踏みつける。それからゆっくりとすわりこむとシャガンの顔を持ち上げ、顔ににじんだ血を舐め取る。それから炎雷刀王者龍閃えんらいとうおうじゃりゅうせんを床に突き刺し、開いたもう片方の手でシャガンを殴りながら笑う。

「邪魔ですよ、あなたがいるとバランスが崩れちゃう。それにね、“神の国”は建国されるべき国なんですよ。あなた知らないでしょう、“神の国”が何なのか。あなたの考えを教えていただけますか、シャガンさん。あなたが追い求めた“神の国”とは何なのですか??」

言葉に詰まるシャガンに少年はさらに執拗に追い立てる。

「おそらくあなたが考えている“神の国”は彼女、アラルトベーラと幸せに仲良く二人で生きていける……そんな場所だと考えていたはずだ。完全無欠に永久平和によって守られた世界……それが“神の国”……笑えてしまいますね。あの場所はそんな場所ではない。むしろ、その逆です。あの場所は地獄ともいうべき場所です。あの場所で幸せに暮らせる場所などない。早々に朽ち果てるが目に見えていますよ。あそこにいらっしゃるのは神だ。神がおられる宮殿だ。人々を救いへと導いてくださる、神がいる……楽園だ」

違う。

あの場所は、あの場所は幸福で、満ち溢れているんだ。

「あの場所は、あなたがいけるようなところじゃないんですよ」

勝利を確信したゆがんだ顔がシャガンの前でぼやけて見える。そうか、俺が周りを、自分を、他人を傷つけて手に入れたかった場所は、救いを求められる場所ではなかったのか……。

「否、あの場所に行けるのは貴殿ではない。我が断言しよう」

不意に聞こえた声の主はいつの間にか少年の後ろに立っていた。

逆光でその姿は誰の物かはわからないが、その手には炎雷刀王者龍閃えんらいとうおうじゃりゅうせんを片手で持っていた。けれども、シャガンはその姿を見て、呟いた。

「竜太……?」

その声を聴いた少年は嬉しそうに振り向き、黒鍵を戻しながら竜太に黒鍵を振り下ろす。

「やめておけ。貴殿の人たちではもはや何も傷つけられはせん。」

うるさい、と叫んだ少年はがむしゃらに黒鍵を振り回し、その途中で銃に形状変化させ弾丸を放つ。しかしそのどれもが竜太に当たることもなく、炎雷刀王者龍閃えんらいとうおうじゃりゅうせんの中から豪火竜と豪雷竜が出てきて弾丸を防ぎ、そして斬撃を切り返す。

「何度やろうとも無駄なことだ。貴殿のその剣も。豪火竜、豪雷竜、みんなを任せた」

『御意』

止めた弾丸を少年に向けて吐き出し終わると豪火竜と豪雷竜は捕まっている八迫、紋太、理緒、凱史に砺磑、佚榎と鐵そして亮祐に祀を助けに後ろに下がる。

「さぁ、次はどうする、貴殿に残されているのはもはやこの場での自害以外にはないと思うが」

その瞬間に、少年の顔に焦りと同様、そして恐怖が入り混じり、思わず後ずさりする。

「黒鍵……どうすればいいの!?ねぇ黒鍵!!!」

年相応に顔で他人に頼り涙をにじませる姿は見ていて滑稽だった。

竜太はこれまでにないほどの笑顔で少年を凝視する。

「どうしたのかな……助けてあげようか!?今ここで楽にしてやるよ」

竜太はゆっくりと少年の首に炎雷刀王者龍閃えんらいとうおうじゃりゅうせんをつけ鋼の冷たさを伝えると舌なめずりをして返事を待った。

「ぐすっ…ふぇ……」



どうやったらここから抜け出し皆を助けられるか、とひたすら考えているときだった。突然聞きなれた声がした。

「助けに来ました、理緒殿」

言うやいなや豪火竜にを縛りつけられていた紐を焼き切ってもらうと自由になった体を伸ばし、それから小さい子供の首に剣を当てて笑う竜太の姿を見て、駆け出した。

止めなければいけない。

どうやらそれは砺磑と凱史も同じだったようで理緒の視界の端で二人が駆け出すのが目に見えた。

豪火竜田と豪雷竜は次々と紐を焼き、仲間を助けていっていた。

いまのあの子供ならどうにかすれば助けてあげられるのではないだろうかという考えは、甘いのだろうか。



これが追い求めていたものだったと、悟る。

ジャックから発する気のようなものが竜太の身を包み込んでいる。これが切り裂きジャックとしてシャガンが追い求めていた、切り裂きジャックの最終形態ともいうべき姿。どうしてなんだろう、という考えはもはや起きなかった。むしろ彼ならば当然とまで思えた。自分ができなかったことをどんどんとやり遂げていく彼ならば。

けれど、こうまで人格と言うものは変えることができるのだろうか。普段の竜太を知っているシャガンから見ていると、この竜太はどこから見ても竜太らしさが残っていない。この力は、身を滅ぼすのではないだろうか。シャガンの目に映る竜太は、己を滅ぼしながらも戦っている狂戦士のように見えた。少しだけ、少しだけ竜太の事が心配になった。



「さぁ、どうする?」

竜太は少年の顔を見て、にやけ続ける。

少年は震えながら返事をしない黒鍵に何度も呼びかけ続ける。その姿は今の竜太を更に喜ばせていった。

予想より早く出来上がりました。

そんなわけで今週末にまた続きが出せたらいいですね……


一応次であの子の処分は決定して、祀との関係性が分かるようには努めます。



次回予告がすらすらと次回予告できることがうらやましい!!!なんでできないのかと考えたら思い当たったのは、次回予告できる内容の物がないからでした。

笑うしかないぜ!!!


それではまた次回の講釈で

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