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第百二十七話 Who we get to the "kingdom of God"

“神の国”にたどりつく者達

その箱は透明で、中には小さく赤子が丸まっていた。

ゴクリ、と喉が鳴る。

この赤子は普通ではないと鐵は悟る。既に箱は今にも壊れそうなほどに傷つけた。けれども、箱はその途端に自らの傷をいやしていく。

あぁ、これが祝福かなどと思っている時間はなかった。部屋の中央に置かれた箱の中の赤子がゆっくりと目を開いていく。まただ。また、来てしまう。あれに当たってはいけないと体を動かす。とっさに部屋から逃げようとするが、既にここは箱が作りなす空間。その部屋は既に支配されている。

殺されると思った。しかし、噛んだ唇から血がにじむのが気付かぬほどに、箱の行動は意外で、衝撃だった。

壊せと言われた箱が、消し飛んだ。

赤子が急成長し、箱には収まりきらなくなったのか?

中に詰まっていた薄青い液体と、赤子が一気に箱から出てくる。すでに三、四歳ほどに成長した赤子の顔は見たことのある顔だった。

あの特徴のある髪が濡れて顔に張り付いても、分かる。

なんで、なんでなんでなんでなんでっ!!!!

頭が警告を発している。逃げろと命令する。

「くろがね…」

赤子だったものが名前を呼ぶ。

鐵は思わず地面を這うようにして部屋から逃げ出そうとする。が、その子供は鐵の前に立ちふさがる。

「くろがねだ、くろがねでしょ!?あそぼ、あそぼーよ!!!」

彼と同じ顔が自分の目の前にある。けれどもこれは彼ではないことぐらいわかっている。

じゃあ、ここに立っている幼い彼は誰だ…!?

キャハキャハと笑う彼と同じ顔の子供は目の前でさらに成長を続けていった。

目の前で成長していく子供は、鐵が小さいころから知っている。

この頃の彼とはこの姿を知る前からの友達だった。

体が震えているのが分かる。

息が荒く、汗をかいて服が湿っていることも分かる。

けれども指一本たりとも動かない。

箱は壊れたのに、この空間の支配は続くのか……いや、最初からはこの支配と思っていたのはそもそもがこの子供の支配だったのか!?

鐵は子供の顔を見る。

何度見てもそこにある顔は、彼だった。

「むぅ…くろがねあそんでくんない!つまんない…あそぼーよぉー」

この前薬で戻ってしまった彼の姿となった子供は鐵の手を掴んでぐいぐいと引っ張る。

この癖も、彼と同じだった。

乾いている唇を湿らせて鐵は子供に一言だけ聞いてみる。

「君は、誰…?」

ん?、と顔を見て微笑んだ彼の口から紡ぎだされた答えは、鐵が当たってほしくないと予想していた答えと同じ言葉だった。

箱のもたらす祝福は、正常な人間からは考えることのできないような祝福だった。



次々と運び込まれてきた仲間の姿を見たとき、理緒は息をのんだ。

しかも全員が全員意識を失っている。いや、全員ではない。無表情なまま歩いてきた女の子は祀を抱えてい居て、その祀本人は、どうやら寝ているらしかった。

黒鍵はぱちぱちと手を叩きながらその女の子を迎える。

「よくできましたね、アラルトベーラ。マリーネに選ばれし永遠の聖女よ」

黒鍵はさらに続ける。

「そういえばシャガンが私を使ってマリーネを復活させました。まぁ正しくは復活させたつもりでいました。マリーネ王があれほどの弱い存在であるはずがない。まだ足りないのです。貴女の祈りが、貴方の、体が」

上目づかいで笑う黒鍵にアラルトベーラは蹴りを入れて先を急いだ。

「シャガンは何処。約束通りなら、彼と私は彼らを連れてくることで消えられるはず、彼を出して」

にやりと、黒鍵は笑う。

「彼は、あぁ、今ようやく到着したようですね、では、これで準備は終わりですね、さぁ始めましょう、これが“神の国”だぁ!!!」

ようやく到着したシャガンの顔を見てから、黒鍵は左手をアラルトベーラの体にねじ込む。

「あ……んぁ!!!」

その突然の出来事は、飛び散る血飛沫でアラルトベーラの着ている綺麗な白を染め変えていった。

「アラルトベーラッ!!!」

駆けよるシャガンは、透明な壁によって黒鍵とアラルトベーラに近づけず、ただその顔に血飛沫を浴びるだけとなっていた。

「アラルト、アラルトベーラァァアアッァァァァア!!!」

黒鍵は苦痛にゆがむアラルトベーラの顔に飛んだ血を舐め取ると、その耳元でささやく。

「貴方の体はマリーネ王の物となれるのですよ、気が付きませんでしたか?あなたは人間ではないのですからね」

ねじ込んだ手が次第に出されるにつれて、アラルトベーラの体から、黒鍵の手以外の物が取り出される。

「あぁ、やはりきれいですね、永遠の聖女よ、あなたの心臓がこんなにも美しく輝き、シンフォニーを奏でていらっしゃる。さぁ、お呼びいたしましょう、我らが新しき真の王、反逆王マリーネ前王の悪意を引き継ぐお方、聖王様を!!!」


助けを求めるアラルトベーラの手が、シャガンのほうへと伸ばされた次の瞬間には、アラルトベーラの心臓が握りつぶされた。


「あ、あぁああぁ……うぁああぁぁぁぁぁ!!!」

泣き崩れるシャガンの隣に現れた黒鍵が彼の耳でぼそりとつぶやいた。

「また、守れませんでしたね。あの時と同じだ。まったく同じ。騙されたことにも気づかないあなたは私たちに協力して、そして彼女は再びあなたと、彼女自身の手で殺されたのですよ」

意地悪く笑う黒鍵にストップの声がかかる。

「そろそろ、やめてあげなよ。僕が来たからにはもう彼も死ぬんだからさ」

革靴の音を響かせ現れた声の主は、鐵を引きずってあらわれた。

「くろがねにーちゃんったら、僕の顔見ただけで遊んでくれなくなっちゃってつまんなかったんだけど、シャガン、君なら僕を興奮させてくれる?」

暗がりから出てきたその声の主は、金色の髪を揺らしながらシャガンの前で座り込んだ。

ぺたんと尻を地面につけ、足をだらしなく伸ばした彼の姿は、小さい祀だった。

最近約束が守れていないような状態になっておりますが、どうかお許しください。


自分で最近考えている方向とは全く別の方向へと話が進んで引き返せそうにないのですが、黒鍵篇、最初はアラルトベーラなんていなかったし、だから当然死ぬなんてこともなかったはずなのですがね…。

とりあえず、自分でまいた問題の種です。

何とかなれるように努力はするつもりです!!!

小さい祀君風の少年が出てきたのですが、きっと彼は重要な役割です!!!

マリーネの悪意を告ぐとか言ってますが、きっと根はいい仔に違いないのです、だってほら、モデルが祀君だしね、なんて意味わかんないことをばらまいておいて、今回は逃げますよ。


それではまた次回~

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