第百二十話 It changes,it is born,and staeted.
変わる、生まれる、始められる。
俺は、いまだに膝を抱えている。
膝を抱えてひとりうずくまり、外の音を聞きながら強く強く耳をふさぎ嗚咽を漏らす。
外では俺を助けようと、守ろうと、俺ができなかったことをなそうと戦っている仲間が見える。
けれども、あきらめた自分はここから見ることしかできない。
諦めてほしい。
自分という弱い存在を切り捨てて先に進んでほしい。
中片亮祐という弱い存在は、そもそも切り裂きジャックなどという組織には加入していなかったのだ。
早く、安全に暮らしてほしいのに。
もう、いやだ。
お願いだから、俺を捨てて早く笑っていてくれよ。
俺が望むのはそれだけ。
俺、中片亮祐は死んだと同じことなのだから。
そもそも、俺という人間などいなかったと同等なのだから。
お願いだから、助けてほしい。
ふいに誰かに肩を叩かれた気がした。
けれど振り返るとそこには誰の姿もなく、しかし再び肩は叩かれる。
おかしいなと思いつつ、竾埀翅祀は首をかしげる。
気にしないことに決めた祀に対して、何かは必要以上に肩を叩いてくる。
「ッるっさいわぁっ!!!」
連続で叩かれることにいら立ちを隠せず叫び振り返ると、兄が立っていた。
え、と固まっていると、威燕は昔と変わらずににひひっと笑う。
《お前はこんなところで止まってちゃダメだろ。行けよ、この先へ》
俺ができなかったことを、お前が成し遂げてくれ。お前が友達を、大切な人を助けるんだ。
突然現れた威燕は一方的に言いたいことを言うだけ言って、勝手に消えてしまう。
「なんだよ、バカ兄……」
いつもと同じように助言だけして勝手にしろと言ってくる、そんな兄はいつからかそれすら言わなくなった。
いつまでも言ってるとぐれちゃうだろ、と言われたのはまだ七、八歳のころだ。
結局、今も昔もまだまだ安心してみていられる人間にはなっていないということらしい。
「俺、行くよ。兄貴に笑ってみてられるような人間になってみせるよ」
俺は、止まってらんねーんだぁっ!!!!
祀は勢いよくその体を起こす。
止まってはいられないのだ。
優しくて、好きだった。
最初は冷たかったけれど、竜太たちと出会ってからは優しくなっていくのを感じた。
これはうわさのつんでれかと思ったが、絶対違うのはわかっているし、そんなことを言ったら怒られるので、僕は決して言わない。
あの日、亮祐が軽く言ってくると言ったときに、僕はホントはついて行きたかったのに、亮祐はそんな時でさえも僕を守ってくれた。
今度は僕が守ってあげたいんだ。
今まで守ってくれて、素敵な居場所も作ってくれた亮祐に恩返しが、したいんだ。
今度は、僕が守ってあげて、みんなでまたお茶飲みながら騒ぐあの日常を取り戻したいんだ。
だから、僕、一文字紋太は再びこの手に握る二丁拳銃を構える。
このおかしい非日常を終わらせるんだ。
亮祐とまた楽しく外で遊ぶんだ。
あのころが楽しかった。
皆で裏山に行って秘密基地まがいの場所でワイワイと遊んでいたあの頃が。
けれど楽しいときなんてなくって。
でもまた楽しい、と心から思える今日が繰り返されている。
今度こそはこの手は離したくないんだ。
だから、俺は離さないようにちぎれぬ鎖を武器に選んだ。
せめて俺たち人間ではなくなってしまったと思っていた俺たち自身の絆は切れぬようにと。
その絆は広がった。
その絆も手放したくないんだ。
その鎖を断ち切られたくないんだ。
俺、檜葉呀佚榎はもう、大切なものを失いたくなんてないんだ。
笑えない。
親に捨てられて、地獄を見せられた。
そんな時に俺たち五人はひたすら耐えて耐えて耐えた。
一生あの地獄から逃げられないと思っていたのに、敵対視していた切り裂きジャックに助けてもらえた。
その時に一人で誓った。
この恩は絶対に返すと。
ならば今ならばちょうどいい機会のはずだ。
ここでのんびりと寝てなんかいられない。
立ち上がる。鐵の名のように、俺の体は決して負けない。
俺は、鐵だ。
名字など捨てている。
穢れた親と同じ苗字を語るぐらいなら、そんなものはなくてもいい。
いや、今は名字の話よりも、己を叱咤し、立ち上がる時だ。
喧嘩別れというものは悲しいなぁと、やっぱり思った。
喧嘩したままで別れるというのはいくら何でも後味が悪すぎる。
栗柄八迫は右掌で顔を隠しため息と共に立ち上がった。
いくら何でも喧嘩したままというのはないだろう。せめて仲直りしてからそれから別れるというほうがまだ納得がいく。
じゃぁ思う存分殴らせてもらってもいいんじゃないか。
それならやるべきことはわかっている。
今すぐに起き上がるんだ。
それから……
五人は同時に起き上がり、ふらつく体を奮い立たせ、
『シャガンっ!!!』
そして、五人は再びシャガンに向かい猛攻を始める。
その瞬間、
容赦ない焔は文字通りにとどまるところを知らずに竜太を取り巻く。
必死に避けるのが限界だ。
せめてジャックが使えればという思いは捨てきれないが、とそこで竜太は気が付く。
自分がいかに道具に、力に頼って来たかということを。
ならば、無理に自分だけで勝とうとしなくていいのではないか。
今まで通り、自分らしく戦えばいい。
あくまで自分は平田竜太だ。
ならば、ことごとく物に頼り切ってしまえばいい。
これまでと同じように、これからも。
それに、俺は例えシャガンに選ばれた適当な人材であったとしても、七の切り裂きジャックだ。
“七”の切り裂きジャックだ。
「来いっ!!!豪火竜、お前は俺の一部だっ!!!」
“想像”の、切り裂きジャックだ。
「俺はお前だ!!!」
“想像”の切り裂きジャックならば、“創造”の切り裂きジャックだってできるはずだ。
大して意味は違わないだろう。
ならばそれを思う存分に使えばいいんだ。
想像が経験していぬことを推し量る物ならば、現実に存在しないものを考えることならば、新しく初めから創り出すことも同等だ。
少なくとも、竜太の中ではそう定義されている。
開き直った竜太の右手から奇怪な電子音が鳴り響く。
そこには当たり前のようにジャックが付いていてけれどそれは今まで見知っていたジャックではなかった。
空中にディスプレイが浮かび上がり、そこに赤紫色の文字で、次のように記されていた。
≪これより形状移行を行います≫
その電子音は奇怪に何かしらの曲を奏でその形を変えていく。
ディスプレイには形状移行進度が着々と完了しつつある。
これならば……いや、必ずシャガンにも勝てる。
なぜかそう思う確信が、今の竜太にはあった。
シャガンが最初に見てしまったのは切り裂きジャックが復活するその瞬間だった。
光に包まれて、竜太の姿が掻き消える。
一瞬の閃光に目を細め、それでも見ようとすると、そこに立っていたのはくたびれた部屋着を着ていた竜太ではなく、切り裂きジャックとしての平田竜太だった。
奥歯が嫌な音を立てることも気に留めず、シャガンは歯をかみしめる。
「また、やりやがった。俺が、俺ができなかった、移行をぉおおお!!!!」
吠えたシャガンの体が掻き消える。
そして竜太の背後に移ったシャガンは右手に構える雷刀王者龍閃を背中に突き刺そうと振りかぶる。
「くたばれぇぇ!!!」
最近題名が決まらないことに悩んでいます。
いっそのこと第~話だけにしてみるかとか考えてみますが、なんか納得いかねぇ……。
ということで今日もどこぞで翻訳にいそしむのです。
次回あたりでかなり話が進むと嬉しい。
なぜなら・・・。
年末年始はパソコンが使えないからだっ!!!
というわけで割ときりがいい終わらせ方で辞められると嬉しいなぁ…。
それと、シャガンに向かっていったときの文章の句切れは仕様ですので。
間違っても後回しにしてたら忘れてたとかそういうたぐいのものではないのですので。
久々に長々と書いてみましたが。そろそろ、まとめた方がいいのですか、一回何文字とかって…。
まぁいいかと思い、今日はここまでなのでしたっ!
それではまた次回の講釈で!!!
【一回ぐらい本文より長いあとがきというふざけたことをしてみたいものだなぁ…。けど書くことがないよね、と思いつつ】