第百十八話 The girl laughs; is pretty, and is beautiful.
少女は笑う、可憐に、美しく。
少女は、笑った。
《貴方って、ほんとにおもしろいのね》
おしとやかに声を立てて笑う彼女はまるでそこに天使が降りてきたかのように一面を照らしていた。
女性という種類の人間から、楽しいや面白いなどという言葉をかけられたことのない竜太はまともに顔を見ることすらできずに下を向いてもじもじとその場をごまかす。
そんな折、少女は突然に竜太の手を握ると、潤んだ瞳で竜太の瞳を見つめる。
《ねぇ、彼を、助けてあげてちょうだい…》
そういうと少女は涙をこぼしつつも、“彼”と“自分”の事をすべて話し出す。
自然と竜太は少女の手を強く、強く握りしめいていた。
そして、彼女の口から紡がれた言葉の一つ一つに竜太は息をのみ、そしてどんな物語よりも引き込まれていくのだった。
助けて、と口にしたのは何度目だろうかと、亮祐は自らを嘲笑う。
どうせ、この声は誰にも届くことはないし、届いたところで誰かが助けてくれるというものではない。
所詮これはただの叫びと同じことなのだと、自らを嘲笑う。
ただ、守ってやりたかった。
守られることもなく、ただ生きてきた今までの中で、初めて守りたいと思える人たちに出会えて、守りたいと思ったのに。
自分でやってみたい、やり遂げて見せたいと思った唯一の事なのに。
結局は父親の掌の上で転がされているようで。
お前には何もできないんだといわれているようなそんな事実が付きつけられているような気がして。
亮祐はゆっくりと目を閉じた。
じゃぁ、どうせこのまま抗っても、結局たどり着く場所が同じなら楽な道を選んだ方がいいのではないのか。
わざわざ苦しんで、そしてたどり着く程の場所でもない。
いいじゃないか。
堕ちてしまえば。
そもそも、中片亮祐という人間はそうした人間だったはずだ。
そうした、駄目な人間の一人だった、はず、だ……。
亮祐は、自分を納得させると、自らに押し入ってくる黒くドロドロとまとわりつく冷たいそれを受け入れた。
亮祐は黒鍵をより一層黒い炎を上げ再びその形状を変化させる。
ちょうど、亮祐自身が黒鍵を受け入れたころにその変化は身に現れた。
炎が亮祐を包みその炎は消えることなく亮祐の体にまとわりつく。
「うけ…受け入れたぁっ!!!中片亮祐がついに黒鍵に落ちたぞ。俺の中に居た邪魔な存在は今、この時消え去ったぁ!!!」
亮祐は大きくはしゃぐと声高らかに叫びだす。
「俺が、中片亮祐だぁっ!!!」
喜ぶ黒鍵を前に、理緒は地面につきそうになる足を無理やりに立たせる。
大きく息を吸い、吐くと同時に構えた拳で亮祐の顎を狙い、渾身の力でそれを開放する。
「ほざけっ!!!たわけ者が」
流れ落ちる涙とともに理緒は思いっきり右足でその体を蹴りあげる。
「わかった。必ずとは言えない。けど、出来る限りのことはやってみる」
竜太は少女の手を軽く握り、応える。
そして、そこでようやく手をつないでいることに気が付いた竜太は、一瞬にして顔を赤くし、手を離してしまう。
《ありがとう。けれど忘れないで。あなたが立ち向かうのは切り裂きジャック。そしてあなたは生身の人だということを。さぁ、私の手を、掴んで。連れて行ってあげる。》
少女はニコリと微笑むと空へと手を伸ばし、黒を打ち砕いた。
最初に謝っておきますと、期末テストでパソコンを触れませんでした。
ということで突貫工事で仕上げたつもりなのですけれども。
短いのは謝ります。
次回は長いの書けると嬉しいな…。
ということで次回の講釈でまたお会いしましょう