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第百十二話 People not forgotten.

忘れられぬ者たちよ

止めたかった。

けれども意識はあるのに抗えない、地獄攻めを味わわせられていた。

目の前にいる家族はぐったりと力なく、意識を失っている息子を助けたいのに体は全く動かない。

恨んだ。

力有るシャガンを。そして力なき不甲斐ない己自身を。

何一つとして守ることはできない…。

力有る者に抗えずに使われていくのみ。


止めたかった。

けれども意識はあるのに何一つ現状を変えられない、そんな地獄を見せられていた。

目の前にいる仲間はもう何時間も意識を失い続けている。

目を、逸らしたかった。

守ると意気込んで、自分の力を過信して、そして今に至る己の馬鹿さ加減を恨みたかった。

何一つ成し遂げることもできない…。

ただ、力なく抗うこともできず、体の中から滅んでいく道しかない。


ただ、助けたかった。



シャガンは竜太の頭に自らの頭をつける。

激しい閃光と共に竜太の体は痙攣していく。

シャガンは時折、ふむ、だの、ほう、など一人で納得しながら閃光は一層激しさを増す。

「情報は集められたな」

人目を気にせずにシャガンは下劣な笑い声で吠え続けた。



やっとの思いでたどり着いた帰る場所はそこにあった思い出を何一つ知らない輩によって荒らされていた。

足の踏み場などほぼないほどに荒らされた中から役立つものを探すのは至難の業だった。

けれどもやっとの思いでかき集めた武具の数々の中竜太と祀の二本の剣は不思議な鎖で鞘から抜けない状態へと加工されていた。

「王牙雷流…豪雷竜…!?」

祀の声に微かに反応する王牙雷竜はしかしながら剣から出ることはかなわなかった。

刃が鞘から抜けぬ剣を腰のホルダーに差し込むと、祀は竜太の覇凱一閃を手に取る。

こちらもやはり鞘から出られぬようでただ震えるばかりであった。

三十分の自由探索のうちに集まった全てで歯向かうことのできる物は多くなく、そして何よりどれほど持とうとも心もとない。

八迫はこれまで道具に頼ってきた自分の愚かさを一笑し、心機一転武具開発に取り組む。

さらに続くじ活動の中、紋太は光る何かを見つけ、思わず駆け寄る。

紋太が近づくにつれ輝きは薄れ、紋太が触るころには依然と変わらぬ姿の武器が眠っていた。

亮祐がいつも使っていた、アドベンチャラー。

あんなにおどけていった亮祐は裸一貫で強大な敵に挑んでいったのだと思い知らされる。だとしたら、今同じような状況下におかれている自分たちはどうなってしまうのだろうかと、不安ばかりが頭を回る。



刻印の元に立ち尽くしたのはいくつもの闇だった。

竜太を虚ろに取り囲むそれらはどれもが生気がなく、到底生きているとは思えないような状態だった。

目は鈍い赤色を放ち、動脈は時折不自然に増大する。

もしも竜太がこれを見たとしたら逃げ腰になること間違いなしだった。

一つは竜太とほぼ同じ背丈をし、髪を短く刈り込んだ冷酷な顔立ちをした少年。

一つは二つの首を一つの体に生やし滴る涎を物ともせずにただ立ち尽くす獣。

一つは蒸気を上げ物騒な単語を連呼し、体からいろいろ生えている巨大な機械。

一つは異常なまでに細い腰にこれまた異常なほどスリムな体型をし不可思議な面などを弄び竜太を凝視する王。

一つは微動だに動かずにそこにただあるだけの存在。

一つは息荒くたった一人の名前を狂いながら叫ぶ猫背の男。

それを見ているのは竜太の父親と亮祐、そしてシャガンの九名がただ一人、元七の切り裂きジャックの姿を穴が開くほどに見詰めていた。

シャガンは吠える。

「桐原須藤、国獄王にガルガンティア。マリーネと福音業ゴスペル・カルマ更に所長さん。あなた方がなし得なかったその果ての願望…今なら叶えられる。私の配下となり、共に切り裂きジャックを滅ぼそうではないか…」

その場に呼び出された六つの魂は同時にシャガンの方へ体を向けると一斉に襲い掛かった。

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