第百五話 小さい僕は独りぼっち。って、えぇ!?
僕の名前は竾埀翅祀、この建物を貰って住んでる、今ではただの中学生なんだ!!!………ほんとは、今日からちゃんとした中学生なんだけど。今までは四月からは中学生だ!!!なんて思ってたけど、ほんとは今まで春休みだったから今度こそ胸を張って言います、中学生です!!!
時間は朝六時十二分と三十三秒を過ぎたところ。
もうそろそろみんなを起こさないと遅刻しちゃうかもしれないので早く起こそうと思います。
「おらーおきろー。朝だよー?」
…。……。………。
知ってるんだ。ホントはこんなんじゃ起きるなんてありえないって。もしこんなので起きたら絶対に空から危ないものが降ってくる。と、言うよりも降り注ぐに違いない。そうなったら怖いので、玄関から一歩も出ない。何があっても出ない。絶対に出ない。出ないったら出ない。
まぁ、こんなところで考えていても仕方がないので壁に立てかけてある王牙雷流を鞘から出す。
心なしか、重いような気もする。
はしゃぎすぎちゃったのかもしれない。中学生だー中学生だーって。さすがに三時まで騒いでるのはやり過ぎだったかもしれない。
それはさておき、十分に殺気を込めて枕の上に乗っかる頭めがけてこの刃物を振り下ろそうと思うけど、きっと避けるだろうから、また枕は新しいのを買わなくちゃいけない。それでいつも文句言われるけど、それならそうなる前に早く起きてほしい。
でも、よくよく考えたら、この剣は雷を出せるわけだから、軽く焦げてもらえばいいと僕は思いついた。雷だから焦げることはないのは知っている。焦げるまで高音の雷で起こしてもらうって意味だ。
「豪雷竜、頼んだ―」
そう、僕の剣はどうやら竜太の炎斬刀覇凱一閃と同じ刀鍛冶が兄弟分のように打ったみたいで、どうやら王牙雷流にもちゃんと龍がいたらしい。
これは切り裂きジャックの栗柄八迫が、興味本位で調べた結果判明したことだ。僕はあんまり気が乗らなかったけどなんかアイスを渡されて、食べようとしたら八迫と剣は消えてた何てこともあり。
本人【龍?】今の今まで出てこなかったのは……寝てたらしい。
なんだか豪火竜の方がかっこいいなぁと思っていたら、軽く痺れさせられた。どうやら僕は考え事が口に出てしまっていたらしい。
「ほい、起きましたよ。じゃぁ、まだ寝てるから」
ニューッと再び剣に戻るけど、一体どれだけ寝ればいいのだろうか…。
そんな僕の前に佚榎と鐵が起き上がる。
「おはよー、祀」
佚榎がぼふぅと僕の頭に手を載せてわしわししてくる。
気のせいか、なんか佚榎が大きく見える。何でだろ。
ちなみに佚榎っていうのは僕の友達で、檜葉呀佚榎。
言っちゃあなんだが、子ども扱いをされるのは嫌いだ。佚榎と鐵は僕より誕生日が早いわけだから僕より年上ってなるんだろうけど、でもやっぱりそんなに年齢が変わるわけじゃないんだから、そんなあからさまな子ども扱いというのはやっぱり嫌いだ。僕はそんなに子供じゃない。
それに続いて、鐵もおはようと言って頭をわしわしする。
だから!僕は子ども扱いされるのが嫌いなんだぁー!
鐵っていうのは、僕のもう一人の友達で、……名字…なんていうんだろうか…。
僕の頭は二人にわしわしされていて、すでにぼさぼさだ。元から割と跳ねてる髪の毛はわしわしによって無造作ワイルドヘアーに早変わりしていた。むぅ…。くしが通りにくいから直すの大変なのに…。
それはさておき、そもそも僕を子ども扱いするんなら、あいつらが朝ごはんぐらい準備してくれてもいいんじゃないかと僕は思う。子供にご飯作ってもらって情けなくないのかー。現に、砺磑と凱史は手伝ってくれてる。
なんだかそこでも僕は子ども扱いされているような気がしてならない。包丁は持たせてもらえなかったり、にんじんは皮むき器を使わされたり……。
刀ちゃんと使えるんだぞーって言ったら、刀と包丁は違います!!!って二人に怒られた。こんな時だけ仲良し姉妹。
何でだろう…。僕はみんなを助けたはずで、リーダーって、呼んでなかった…?
なんだか少し泣けてきた。
よし、今日は朝ごはんの時に聞いてみよう!!!なんで僕を子ども扱いするんだーって。
幸い今日はみんな起きてくれたし、時間はある。よし、聞いてみよう。
な、なんですとぉー!!!――――――し、知らなかった…。ぜんっぜん知らなかった…。
どうやら今の僕は小学校二、三年生ぐらいの外見になっているみたいのなのです。
通りで、覇凱一閃は重く感じて、佚榎や鐵や砺磑に凱史が大きく見えるわけだ…。
通りで、僕が子ども扱いされてるわけだ…。
しかも、これはしばらく治らないらしい。
何でじゃ――――――!!!いつの間にこんな危ないもん飲ませたんだ!!!何で僕に飲ませるんだ!!!
あ、今気が付いた。そういえば僕の一人称が、いつもは俺だったのに今は僕しか使ってない!!!なんてこった…。
っていうか、今日これから入学式なんだけど。入学式から欠席って第一印象最悪かー!しばらく治らないって言ったら、しばらく休みじゃんかー!第一印象どころかもうヒキコモリのレッテル張られてるわ―。もう僕中学校行けないじゃんかぁ!
それでさぁ、僕はどうしたらいいのかな…。
とりあえず、切り裂きジャックのマッドサイエンティストさんの栗柄八迫さんに助けを求めに生きたい。けど、外に出られない。
靴は大きさが違って歩けないし、その前に今から歩いて行ったらそれだけで時間が無くなってしまう。
僕は中学校にいかずに小学校に行くのか―!
何で義務教育なのに戻ってるんだよー!
おかしいだろー!
皆まとめてばかー!もうまとめてバカ―!!!
僕はこのまま一人でお留守番かよ!!!怖いじゃん、寂しいじゃんか!!!
決して僕が弱虫とかそういうんじゃないんだ。小っちゃくなっちゃったからほんの少し心細いだけなんだ!
そんな葛藤をしているうちにすでに佚榎は学ラン、ていう僕も今日着る予定だった制服を着てるし、鐵はとっくに準備できてソファーでテレビ見てるし。
凱史と砺磑は女の準備は長いのよーって部屋にこもってるし。
「もうやだー。やだったらやぁーだぁー!」
………。そもそもなんで僕がこんな目にあってるんだろうか…。何で?僕なんかした?いや、なんかはしただろうけど、こんな対価が来るほどの大それたことはやってないぞー?
部屋にこもって布団にもくるまってると突然扉が開いて佚榎が入ってくる。
ほっといてほしい。僕はもういいんだ。泣いてるんだぁー!
「よ、大丈夫?祀ぃー」
ニコニコ笑ってるし。にやにやしてるし。絶対心配なんかしてくれてなし。絶対面白がってるし…。
「じゃぁ俺ら学校行ってくるから、お留守番頼んだわ」
え!?マジですか、僕お留守番確定ですか。助けてくれてもいいんじゃないかな…。
それと、また頭ポフポフするのはいい加減にしてほしい…。さっきようやく、くしとうしたのにあっという間に無造作ワイルドヘアー祀君に逆戻りだ…。
もういい加減にしてほしい。
「ガッコー行きたいー!!!」
なんだか泣けてきた。すんごい泣けてきた。僕だって中学校楽しみにしてたのに…。
「僕は中学生だー!!!」
もういい、泣く。泣いて泣いて泣いて、困らせてやる。誰も学校なんて行かせないんだからな。僕の体がちっちゃいうちは誰一人学校になんか…。
「いってきまーす」
あっ!あいつら四人がそろいもそろってこんな幼気な子供の僕を置いて学校なんて行きやがった…。
………つまるところ僕はこの家に今ひとりなわけで…………誰もいないわけで…。
「うわわーーーーーー」
目にもとまらぬ早業だ。僕は一瞬のうちに布団にくるまり枕を抱きしめ震えてる。
お化けは怖くない。怖くないんだけど、ちょっと恐ろしい。ちょっと恐ろしいから…やっぱり怖いっ!!!
僕はそのまましばらく震えていた。
がたがたぶるぶる、がたがたぶるぶる。
ふと気が付くともう朝のニュース番組は終わっていて、微妙な時間帯になっていた。
どうやら僕は泣き疲れて眠っていたみたいだ。いや、泣いてない。泣いてなんかないし、ぜんっぜん目元も赤くない。だって僕は泣いてないんだから。
そういえば午前中は入学式と学校紹介で、午後お昼食べてから帰ってくるって言ってたなぁ…。
まだまだ帰ってくる気配はない。
僕は独りぼっちになってしまったのだ。
恨めしい。僕が僕のためにちょっと誇らしい気分で中学校の制服を壁に立てかけていたことが恨めしい。壁におとなしくつるされて、あざ笑うようにこっちを見ているような制服が、恨めしい。
そんな時、僕の耳に扉がゆっくり開く音がした。何でこんな時にばっかり五感は敏感になっているんだろうか。ちょっとは自重してほしいと思う。
そんなことより、侵入者はゆっくりと階段を上ってくる。
あいつらならあんなに静かなわけがないから絶対不審者だ。
ひょっとしたら所長の残党の回し者かもしれない。
そんなのが来たら今の僕に戦う力なんてないも同然で、あっという間に捕まってしまうに違いない。
僕はとっさに、けれどやっとの思いで王牙雷流を体いっぱいで抱えるとベッドの下にもぐりこんだ。
小さいのも意外と便利だ……イヤイヤイヤイヤ小さくなければ今頃学校で、もし欠席だったとしても戦える!やっぱり小さいなんていやだぁー。
携帯で助けを呼ぼうか!誰に?誰もいない。連絡しても学校では使用禁止だからきっと使えないだろうし。じゃ、じゃぁ切り裂きジャックの皆さんの誰かに連絡できない。誰とも電話番号交換してなかった。
あれ、もしかして本格的のピンチ。
いろんな意味でやばいみたいです。
しかも、侵入者の足音は複数で、感がいいのかピンポイントで僕の部屋に近づいてくる。
なんだ、侵入者の分際でせんさーでもつけてるのかこのやろー。ふざけんなこのやろー。
そんな悪態をついても何も変わることなく、ドアノブはゆっくりと回され、扉は軽々と開く。僕の場所体と足しか見えないが、あれは誰だろうか。傍らには珍しい真っ赤な蛇がいる。
「あれ、祀君いないのか…」
む、この声には聞き覚えがあるぞ。じゃぁ、あれは真っ赤な蛇じゃなくて龍だ。だとしたら僕はもう一人じゃないんだ!!!
僕はベッドの下からはい出ると右手を挙げて元気に返事した。
「はい、はーい、僕はここ、ここにいるよ―!!!」
僕の方に背中を向けていた男の人と龍はゆっくりとこっちを振り向く。
そして、僕の方を見た顔は、やっぱり僕のよく知った顔だった。
「な……何で小さいの!?」
僕が知りたいです。僕に答えを教えてください。
竜太は僕を見てあわあわしている。豪火竜は僕を見て背中に乗せてくれる。こうしてみる意外と大きい。後、あったかくて乗り心地もいいや。
やっとの思いでのほほんとした僕をひょいっと抱きかかえると竜太は走り出した。
「よし、今から八迫んとこ行ってみてもらおう!!!」
僕はその時竜太が神様か仏様かそんな風に見えた。
これで、僕は助かるんだー!!!
ちりりん、と自転車のベルが鳴る。僕もうれしくなって一緒にチリリン、と言う。
ちょっと子供っぽいかなぁーなんて思うけど、こうなった以上、もう何も恥ずかしくない気もする。
自転車の風は思いのほか気持ちよくて、考えてみたら自転車なんて乗るの初めてだなぁと感慨にふけってしまう。
自転車の風は気持ちいいんだけど、無造作ワイルドヘアー祀君がワイルドライフ無造作ヘアーになってしまう。
ところでワイルドライフ無造作ヘアーってなんだろう。名前からしてすごそうだけど。
再びチリリン、と竜太がベルを鳴らす。
「楽しいか?」
突然竜太が僕に話しかけてくる。
きょとん、としながら僕は竜太の方を見る。
けれど竜太は僕の方を見る余裕なんてなくて、ただ、前を見ている。僕も続いて前を見る。
「とっても楽しいよ。生きてるって感じがする。あいつらといれて楽しいんだ」
これは嘘じゃない。僕はホントにそう思っているし、たぶんそれはこれからも変わらない。
それから、僕と竜太は世間話とか、僕の身の上話とかをしているうちに何度か止まったことのある屋敷が見えてきた。
あれが、切り裂きジャックの本部だ。
竜太は僕を自転車から降ろすと背中に背負う。腰に覇凱一閃を下げているので僕も真似をしてみるが、一人で立つと引きずってしまうと思い、僕はやめる。
「八迫―連れてきたー」
これで僕はやっと普通の中学生に、今度こそ中学生になれるんだ。
期待で胸をいっぱいにし八迫の部屋に入って話を聞いてるうちに、僕は薬をかがされた。
睡眠薬っぽい。
僕は寝てしまった。こんなに寝たら夜眠れないじゃないか。僕の背が伸びなくなってしまう。ッ小さいことに困っている僕の悩みなど、誰も知らないんだろう。
寝ている僕はなぜかあの後、を思い出していた。
「ヤダ!!!やだったら、イヤだ!!!」
亮祐と紋太が言い争っている。
亮祐は紋太が僕たちの住む方へ行けというし、紋太は亮祐と一緒がいいという。
互いに一歩も譲らない同レベルの口げんかは切り裂きジャック唯一の女の人の手でかたずけられた。
なんというか、うまい。客観的に聞いていなければ思わず首を縦に振ってしまいそうになる…。それぐらいうまかった。
結果として、亮祐が定期的に会いに行くという形で紋太は小学校が始まるころに僕たちの家にお引越しするという形に収まった。
そこで僕は思い出す。
そういえば……。
「むにゃ…」
ゆっくり目を開いた俺はまず最初に上半身を起こす。
どうやら無事に戻っているようで念願の学生服を着て寝かされていた。
ふと周りを見るが、周りには誰一人として人はおらず、代わりにポチが寝ていた。
時計はすでに十二時を超えている。お昼の十二時ではない。よい子はお休み、の十二時だ。
幸いまだ眠い。この格好のまま明日は学校に行けばいいだろう。僕は再びソファに転がると目にかかる前髪を手で払いのけて眠りについた。
たまには童心に帰るのも悪くないって、よく言うけど、俺はもう御免だなぁなんて、そんなことを考えながら再び落ちていく。
あぁ、後でまとめて問いたださなきゃなぁ……。
絶対俺はおかしくなってる。何考えてんだろ俺。俺何考えてんだろ。
書いた直後にこんなに悩んでしまうような作品が出来上がっちゃいました。
ホントに何してんだ…。
まぁ要約するとですね、祀君小っちゃくなっちゃった!!!ってだけです。
ちなみにこれ書いてる目的は亮祐と紋太の話、あれを入れるのを忘れてしまったからです。
この手法は自分が苦しむだけですが、割と使える!!!
なんか書き忘れたことがあったらこの方法で誰かをまた小っちゃく…しませんよ。
同じようなのはさすがにもういいだろと学んだのです。
まぁまだかけることはありますが、そんなに書いちゃうと本編っぽいものより長い後付けになっちゃうんでここら辺で。
でも、本編より長いあとがき、いいかもしれないなぁ…。
次回第百六話 入学式行けなかったんだよばかやろー!!!【仮、というか絶対に違うと思いますよ】
次は黒鍵とかいてくろかぎとまんまによみますが、黒鍵編、ですかねぇ…。
いいや、ちまちま短編書いていこう!!!