第百四話 全ての終わりを告げる鐘となる。
今までで一番長い文字数になりました。
その分わかりづらくなってしまったかと思いますが、これでようやくこれからしばらくのめどが立ちました。
とにかく、これにて祀編【仮】終了です。
沈黙を保っていたその部屋に突如としてバンッという大きな音が室内に響き渡る。
音を出した本人はそんなことを気にも留めずにその音が完全に消えたのを感じ取って書類の束を見て話を続ける。
「こんなことが許されていいのか!!!」
見事に真っ白な髭を蓄えた初老の男は胸に評議員の印をつけていた。しかしこの場ではそれは何も珍しい事ではなかった。
この室内に招かれている全員の胸には当たり前のように評議員の証がつけられていた。
その室内にいる人は皆、どの人も年を重ねており、それゆえの権力を持つ者たちだった。
「つまるところ、君はこれまでの数々の事件を立証し、告発すると…そういうことなんだね!?」
頭に毛が薄く、痩せこけた男は書類に目通し机に爪をぶつけ、遊びながら男が言わんとしていることを要約した。
「告発するということは、日本支部を解散させると…そう判断していいんだね?」
要約に対する反応が返ってこないことをよく思わなかった男は再び同じ質問を問いかける。
すると、この件を持ち込み先ほど荒々しく机をたたいた男はその場に似合わない顔で笑みを浮かべ、元から低い声を一層低くし、賛同の意を表した。
すでにディスプレイには日本支部が起こした事についての対応、費用などが事細やかに記されていた。
そしてその中の一角には日本支部の面々の写真が掲載されていた。
「では、次に何か騒ぎを起こしてからというのでどうでしょうか?」
外見に似合わぬ真っ赤なスーツを着込み紫の髪を団子状にしている老婆はふと提案してみた。
しかし、机をたたいた男はそれを否定する。その顔は、その老婆を見ることなくただ、この場で最高権力を振るうものの目を見続けている。
「すでに彼らは総領の命までもを危機にさらしておられるっ!!!これ以上の危機は総領の命に関わる________」
「安心しろ」
その時ちょうど会議に混ざってきた男は頭に巻いていた包帯を取るとその素顔を周囲にさらした。
その場にいた誰もが息をのみ、ある者は椅子から落ち、ある者は胸の前で十字を切り続けていた。
「俺は、まだ生きている」
それは、切り裂きジャックとマリーネとの間に起った戦いのさなか命を落としたはずの総領の顔だった。
「俺は、死なない。つい先ほども五、六歳の男の子に協力してもらったところだ」
くっくっくと笑う総領の発言に場が湧き上がる。
「また…またあなたは子供の命を奪ったのですか!?これで何度目だと思っているんですか!!!事件そのものをもみ消す私たちの身にもなってください」
「すまねぇなぁ…。だが、こうでもしなきゃ、俺は死んでしまう、からな」
くっくっくと再び笑う総領にも取締役の秘書の手により会議の書類が渡される。
総領は軽くお礼を言うと書類に簡単に手を付けた。
「あぁ、あいつらを狩り取るってのか。いいんじゃねぇの?すでにあの国には守るべき存在も、何一つとして存在しないんだからな。すでに我らの物となる手筈は済んでいるんだろう?その為の器だ。その為の伝説、だ…」
総領はその場にいた全員の顔を見渡すと懐から布を取り出し、机に放り投げた。もっともそれに近い席に座っていた女はそれに手を伸ばし、布を外していく。
「世界の希望、世界の欲望だ。大切に扱えよ」
そして、言うだけ言った総領は音もなく消えていく。
総領が消えると同時に女は布を取り払うことに成功した。
布にくるまれていたのは鍵、だった。たかだか二十数センチの黒色の鍵。さほど重みがあるわけでもない、見た感じ特徴もないような鍵。しかしその鍵は何かと鳴動していた。
再び室内はざわつき始める。
オォオォオォオオオォォォオォォオ__________
更にそれだけにとどまらずに、鍵からは微量の風が送られてくる。
一番鍵の近くにいた議員の一人が椅子から倒れ落ちる。
ある議員が恐れおののき、
「あれは命を奪う鍵……!」
そして議長はその鍵を見たとたんに叫んだ。
「これにて会議を終了する!!!そして、その鍵はこちらで保管させていただく」
かくして、日本支部解散の計画と鍵の謎を残したまま、会議は終了となった。
誰もいなくなった会議室に、議長はただ一人留まり続け、天井を見続けていた。
汚れ一つない真っ白な壁から垂れ下がる中世西洋の宮殿にでもありそうな豪華なシャンデリア。それに突然電気が灯る。それは会議室に来訪してきたものがいるという証明だった。
「貴方はこの鍵を、どうするおつもりですか?霊体をばらまいてまで…」
来訪者の方も見ずに議長は天井を見続け、問う。けれどもその質問に答えは帰ってくることはなかった。
「貴方は本当に実行するのですか。日本支部の器は、それほど成長しているようには思えないのですが」
議長はいつの間にか手元に置かれていたリモコンでディスプレイを操作する。
これまでの数々の記録の中で、一枚の写真が移った時、議長はその写真を虚ろに見る。
「平田竜太は決してまだ伝説の七の切り裂きジャックになれる器の段階ではないと、私は判断するのですが」
ディスプレイに移り込んでいる一枚の写真を消去し、電源を切ると議長は立ち上がる。
「貴方は成し遂げるつもりなんでしょう!?私が何を言おうと。総領、あなたの私欲の計画を…シャガン総領」
そう言い残して議長は会議室を去っていった。ポケットに黒鍵を忍ばせて。
誰もいなくなった会議室でシャガンは一人笑う。
「俺のために動き出そうぜ、議長。すべては俺のため。神の国計画は実現可能の物となっているんだからよ。俺が生きてた時とは違う。動き出せるんだよ、前へ」
やがてシャガンも姿を消す。
その時、切り裂きジャック本部ではごく数名しか知らされていなかった。
切り裂きジャックの存在意義と、その活用方法を。更には、なぜ平田竜太が必要か、ということを。
更には、シャガンが過去に遺していった数々の呪いを。
それが日本支部に対してぶつけられるのはそう遠くない未来である。
何も問題は解決してなどいないのだから。
「弟よ…」
狂ったように呼び続ける威燕は弟しか見ていなかった。つまり、その間に立っている竜太のことなど眼中になかった。
豪火竜の元へと駈け出した竜太は突然現れた壁によってさえぎられた。
否、それは壁ではなく人間型生物として命をもてあそばれた竾埀翅威燕のそのなれの果てだった。
黒は一層と激しさを増し、混沌とともにこちらに体を向けている。
「ううぅ…」
ぶつかった衝撃に耐え切れずに竜太は倒れ込む。
そこには仁王立ちの威燕がいた。
「龍は倒れた。次は貴様の番だ」
威燕が黒を振りかざす。
ふと目線で豪火竜を探すと、それは息荒く横たわり、消えていくところだった。どうやら時間切れを表しているようだった。
視線に気が付いた豪火竜は小さく吠える。
「むぅ…どうやら、時間切れ、ですな…」
苦々しく笑う豪火竜はやがて覇凱一閃に吸収されていく。
何もできない。
自分を助けてくれると言ってくれている人たちが戦ってくれているというのに、ただ、見ていることしかできない。
目標が肉親だというだけで、手も足も出ない。
その肉親は、今自分を殺そうと歩み寄ってきているのに。
「さぁ、一緒に行こう、祀…」
手には光すらも吸収してしまいそうな黒が握られている。
それを見た瞬間、祀は地面を蹴り上げる。
せめて、最後は自分の手で解放してあげたいと、地面を蹴りあげ王牙雷流をしまい、金箔を構える。
いつも手に伝わる手ごたえは、感じなかった。
「ねぁ、あなたまであたしからこの子を奪うの!?」
影に囲まれ押しつぶされていた凱史はふと目を開ける。
そこには砺磑が消えていく姿と、影が睨んでくる。
「ねぇ、あなたはそうまでして私から大切なものを奪うの!?」
母であった影はもう一人の娘を忘れたかのように睨んでくる。それは娘に向けられるような視線ではなかった。
「貴方なんかに娘は渡さないわ!!!」
影は、砺磑をつかむ凱史の手を掴み強引にはがし、姉妹の中を裂く。
汚いものでも触るかのようにつかまれた凱史の手を、影が手を離す瞬間、影に変化が起こった。
突然、周りの影が一斉に悲鳴を上げ、一つに固まっていく。一瞬は影に飲み込まれていった砺磑も不純物として認識され、影外へと吐き出される。
もう、母だった人のことは考えない。私を忘れてしまったようなそんな人の事は私は覚えていなくてもいい。私の分まで、砺磑が感傷に浸ってくれるはずだと、私はそう、信じた。
だから私は今戦ってくれる人を思う。
「何が起こったの?祀、勝ったのかしら…」
砺磑の手を握ぎりながら、凱史はつぶやいた。
私の家族は、姉一人だから。
そんな中、なおも悲鳴を上げ続ける影は完全な黒い球体へと変化し、祀が向かって行った方向へと吸い寄せられるかのように消えていく。
「………所長………」
凱史の脳裏に、ふと残忍な笑みを浮かべる所長の姿が浮かぶ。
私たちに指令と偽って私用を頼んでいる、いつもの所長のどす黒い笑みだ。
「気を付けてね、祀」
砺磑の手をぎゅっと握った凱史は祀の無事を祈った。
冷たくなっていた体が体温を取り戻し、右手の指が時折かすかに動く。静かに、だが確かに動くその指は生きていることの証明だった。
次第に、静かだった呼吸の音が聞こえだし、それに気づいた竜太は振り返る。
しかし、振り返る前に竜太の頭はものすごい握力で持ち上げられる。
そしてその死者だった男は蘇り、ゆっくりと口を開いた。
「痛かった…だからそろそろ本当に愛しちゃうよ…。愛して愛シテあいして、殺しちゃうよぉ!!!祀ぃぃ!!!」
生き返った所長は体に青い炎を宿し、竜太の頭を鷲掴みしながら祀に歩み寄り、その途中にいた威燕を左手で吸い込む。
「久々に会えた弟は、愛せたか?ニヒャヒャヒャ!!!」
その口から滴り落ちる涎を気にも留めることなく、所長は竜太をつかむ手にさらに力を加える。
むぎゅ…と変な音と共に竜太は意識を失う。
「愛!!!素晴らしきそれは、この世を救えるたった一つの宝具!!!!」
息を荒く叫ぶ所長の愛は祀ただ一人に注がれていた。
「……さぁ、祀、こっちにおいでぇ」
それに祀は答えなかった。答えられなかった。
一度ならず二度までも目の前で何もすることなく命を失っていった威燕の姿は祀を落胆させるには十分すぎる薬なはずだった。
全てが所長の計算されているシナリオ通りに事は運んでいるのだった。
「ふふふ。僕に来てほしいのかい…行くよ、今すぐ君を殺しに行ってあげるよ」
所長は今まで作ってきた人間型生物を吸収し、先程と比べ三倍ほどに膨れ上がっている体で祀に歩み寄っていった。
もう手を伸ばせばその金色に輝く髪に手が触れるほどの距離に至って、所長は不気味にほほ笑む。
それに対し、祀は俯いていた顔を所長に向ける。と右手でつかんだ金箔で竜太を捕まえている所長の手を斬りつけた。
斬りつけてから、祀は斬った感触ではなかったことを不自然に思い、自らの右手を見る。そこに祀はやっと気が付いた。持っていた剣が王牙雷流でないことに。結果として金箔は刃こぼれした事に。
「んふふふふ…痛くないっ!!!これも愛だねぇ…、僕達を守ってくれるア、イ」
所長の手は再び祀へと延びる。
しかし今からでは抜刀速度が間に合わない。なすすべがなくなった祀はとっさに叫ぶ。
「く、盟神探湯!!!」
叫んでから、祀は失敗したと悟る。今の今まで何の反応もないから忘れていたが、所長の手には意識を失った竜太がいまだつかまっている。
盟神探湯は熱湯を浴びせて罪の判決を促すもので、その湯は火傷させるものでもあり…。
一瞬目を覆いたくなるような光景になるだろうと予想し、目をつぶる。
案の定、奇声が聞こえて祀は申し訳ない気持ちでいっぱいになる。そして、恐る恐る目を開けると、竜太が湯気に包まれ、立っていた。
「熱い、痛い熱い、痛い、熱い、痛い―!!!」
叫びながら痛さをぶつける竜太の覇凱一閃は龍魂と熱を取り巻き、所長の体を解体していく。
解体されていく所長の大きさはどんどん従来の人間の大きさへと強制的に戻されていく。
しかしその速度に負けることなく人間型生物の吸収は行われている。
削られては治り、削られては治る。まったくの無駄であることを祀は悟った。
打つ手も、それを考える時間も残されていない祀は頭脳より本能を信じ、今度こそ間違えることなく王牙雷流を手に取り、所長へと斬りかかる。
膨大な数を作られている人間型生物の吸収に対し、限られた力しかない人間とでは、話にもならない状況に置かれていた。
そんな中、竜太が突然叫ぶ。
「俺は!!!お前なんかで立ち止まれない!!!お前を超えて、切り裂きジャックに訴えるんだ!!!壊れてるあいつらを叩きなおすんだ!!!」
突然の竜太の叫びに反応した覇凱一閃の刃が一瞬変色する。鋼色から濃い紅色へと。
覇凱一閃の律動はより一層激しさを増し、刃の色も、それに続く形で濃くなっていく。
更には、いつの間にか祀の王牙雷流もそれに呼応するかのようにその刀身に激しい雷をまとわせる。
紅い覇凱一閃は所長の体を滅して、迸る王牙雷流は所長の体を分解していった。
それは剣が叫んでいるかのように二人を通じて外へと放出される。
まるで、剣自体が意思を持っているかのように。
そして、竜太と祀は流れ込んでくる言葉をそのまま口にする。
「王牙紅雷一閃!!!」
これまでにない覇凱一閃の発火と、これまで見たことのない王牙雷流の落雷は互いが絡み合い、より大きなものとなり所長を含めすべてを壊していく。
祀は柄を握り直しそれを深く差し込む。
「ありがとうございました。所長!!!あなたのおかげで俺たちは人間としていくことができます!!!」
今度こそ、終わりにしようと祀は決心を込め深く深く差し込む。
「イヤだ!!!イヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだ!!!俺は死にたくない、祀と一緒にいるんだぁ!!!おいで、僕と君とは結ばれている!!!出会うべくして出会った二人なんだよ!?」
聞いていて腹が立つ。なんというか、むさくるしいというかなんというか…。
竜太は思わず右手を剣から離し、顔面に拳を叩き込んでいた。
「ぐずぐずうるっさいんじゃ!!!嫌われてんだからいい加減にしろ!!!」
竜太とともにさらに燃え上がる覇凱一閃は所長を貫通させていた。
先程と同じように痙攣をおこし、血をしたたらせながら所長はゆっくりと祀の頭に手を置く。
「でも、それでも僕は愛している。愛して愛して愛しているんだ…」
不気味にほほ笑む所長の顔は凍りつき、そして生存不可能と思われるほどの血を吐き出す。
所長は人間型生物の吸収速度を速めるが、力の前にすべてが崩れ去る。
更にけいれんは続き、血は零れる。
そして、床一面が血で染められる頃、祀はゆっくりと王牙雷流を所長から抜き取り、剣の油をふき取る。
ゆっくりと竜太の方を向き頭を下げる。
「ありがとうございます。俺たちを助けてくれて」
言い終わると同時に祀は地面に倒れる。とっさに手を伸ばし、かろうじて血の床に倒れることを防いだ竜太は祀を背負うとゆっくりと歩きだした。
「これから君たちは、自由に生きていけるんだ」
「祀!!!」
離地園の発着場にした場所に竜太の姿が見えると、凱史が駆け寄ってくる。しかし、背中で背負われ意識を失っている祀を見るとほっと安堵のため息を漏らす。
「寝てるだけですか…」
クルリと回って船に消えていく凱史の頬は赤く染まっていた。そんなことに気が付かない竜太は呑気に船に乗船した。
「じゃぁ、本部までー!!!」
空元気で叫ぶ竜太の頭に理緒は拳を叩き落とす。
「っさいわ!!!」
一撃で竜太は静かになった。涙目で理緒を睨むが、その視線は理緒には全くの無駄だった。
「じゃぁ、帰るぞー」
亮祐がエンジンをかけ、船が浮く。
やがて、一行は離地園を離れようと離陸する。けれども彼らは忘れていた。
離地園所有者の企みの全てを。
全ては、神の国計画。
だがそれは所長すらも知らぬ事だったが、計画は所長がどれほどやろうとも達成することはありえなかった。
計画には欠けているものがあったのだ。
それは黒鍵。すべてを解き放つ黒い鍵。そして、それを操る者。
そしてそれは、切り裂きジャックの議長の手元にあるのだった。
切り裂きジャックたちの本部で休ませてもらってから数日後、町がまだ眠りについているころ、一人の少年は歓喜の声をあげた。
「…っほんとに、いいんですか!?」
朝日を浴びてキラキラと輝く祀の金髪は町内の目を引いた。パジャマ姿で外に出ているのは二の次だ。
しかし誰もが寝ているような時間だったため、一人の少年の目に留まるだけだった。さらに、そんなことは気にも留めない当の本人は、普通の子供の格好をしていた。年相応の格好なのだが、本人の身長の問題もあり、どう見てもランドセルを背負うような年齢にしか見えないのだった。少し背伸びをして、もうすぐ中学生、というような容姿だった。
そんな祀は亮祐と二人、これから自分たちが住む家の前で立っていた。
「もともと、君は竜太に助けてくれと頼んできたんだろうが、こいつにはできないだろうから、こっちでちょっとだけ余計なことしたんだけど、迷惑じゃないかな?」
亮祐があはは…と笑いながら言うのを聞いた祀は再び頭を下げる。
祀の金髪に反射した太陽光が目にまぶしい。亮祐は思わず目を細める。
「新しい家に、学校に家具とか…俺達に普通をくれて、ほんとーにありがとうございます!!!」
頭を下げている祀に対し亮祐は慎重に話を進める。
「それで、頼んでいたこと、なんだけど任せても大丈夫かな?」
質問の意味を理解している祀は黙ってうなずく。
「任せてください。こんなに沢山の物を貰ったんです。何かあったらすぐに言ってください!!!俺にできることがあったら手伝わせていただきます」
にっこり笑う祀の頭にぽふっと手を置くとわしわしと撫でてから呟いた。
祀は一瞬きょとんとするが、思い直して亮祐を見る。
「頼んだよ。竾埀翅祀君、俺は、いつでも力を貸すから」
亮祐はそれだけ言うとその場所から姿を消した。
その場から文字通り消えた。
祀は亮祐が言った言葉は紋太を頼むという意味でしか解釈できなかった。だから、その時何も考えずに任せてくださいと返事をした。それは所長から解放してもらった後で頼まれていた。けれども、その言葉にはもう一つの意味があったのを、祀は知ることがなかった。
大きく伸びをした何も知らない祀は亮祐がくれた家の中へと入っていった。
「さてと、洗濯するかなぁー。選択の後は買い物行ってご飯作ってやって、そんぐらいかな?」
すっかり主夫と化した祀は鼻歌ともに建物の中へと消えていった。
それから祀は声をあげて叫んだ。
「お前らとっとと起きて働けぇー!!!」
少年たちの人生はふりだしから、始まる。
「目標補足。監視を続けます」
電子音が空疎に響き渡った。
それに男の声が続く。
「監視続行。違法行為を発見次第、突入します」
背中に執行官と縫われた羽織を羽織っている男は耳に着けているマイクに報告した。
最近思い始めたのですが……変なタイトルだよね。
しかもなんか殺さないって言ってるくせに……ねぇ…。
それでは次回からはしばらく休憩としてなんかちみちみしていきます。まぁ、いわゆる短編ってところですか…。そんなことしたら、裏面の意味がなくなりますねぇ…。
ということでまぁまだ祀編は終わりませんよ、終わらせませんよ。季節外れの新学期ってとこですかね…
次回第百五話 入学式だよ、早く起きろよ!!!