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切り裂きジャックは殺しません!!!  作者: 和呼之巳夜己
chapter:The entreated one.
127/163

第百三話 二本の剣は交差して、 

一応、もうそろそろ終わりが近いのですけれども…。とりあえずは後二、三話で終わるのではないかと思われるのですが…。

すでに体半分意識半分が、母だった影に飲み込まれている。

外見は黒い影で、感じるのは痛覚だけなのに視覚が、そして体が母だとわかると中が温かく感じてしまう。

「母上…」

もう数年も母にあっておらず、恋しく思う砺磑は、影の中へと沈んでいった。砺磑の手を必死につかみ、影の中へと行かせまいとする凱史の体にも、貪欲な影は飲み込もうとしていた。

「戻って、きなさいよう…!!!」

力いっぱい影に片足をつけ踏ん張るものの、姉は影に沈んで行ってしまう。

あの時は何もせず叫ぶだけだった。ただ立ったまま、叫ぶだけ。

なんか、いろいろと、吹っ切れた。

「あんたまで、あたしを置いていくのかバカヤロー!!!!」

あの時とは違う。あの時はただ立っているだけだった。でも、今は守るための力も手に入れた。

気が付いたら涙がこぼれていた。

凱史はふと気が付いてしまう。どんな口を聞こうとも、実は自分が姉妹である姉を慕っていたことに。

「残ってる人の気持ち考えろよてめぇ!!!」

力ずくで引っ張った。もう腕が外れようが関係がない。この場につなぎ留めておきたかった。たった一人の姉を。居なくなるぐらいなら、腕を壊してでもいてほしかった。

姉を守ろうとする凱史の周りにも容赦なく影は覆いかぶさってくる。

「私は守るんだぁー!!!」



牙をむいた所長は懐から針のようなものをだし、指先に突き刺す。

「いてぇなぁ…いてぇ。でもこの俺の血が滴る針をお前に突き刺せば、俺とお前の血は一つになるんだぜ?めっちゃくちゃ嬉しいじゃんかぁ!!!俺とお前が一つになれるんだ!!!」

十本の指全てに針を刺し終えた所長は一息つく暇もなく祀に指を突き刺そうとする。


「弟を助けてやりたい。早く倒れてくれ。俺は弟を早く楽にしてやりたいんだ」

表情すら持たない影がこれまでになかった程声を悲壮に満ちたものに変える。

竜太と豪火竜はそんな影を睨む。

「ちなみに俺、もうくたくただから」

意味の分からない宣言をした竜太はすでに頭の方もつかれているのかもしれない。

「では、速攻で終わらせて、弟を楽にする」

影は、言い終わる前に体当たりを食らわせ、竜太をひるませる。

「俺が弟を守らなければいけないんだ」

影は手らしきものを伸ばすとそこには隠し持っていたであろう刃物が握られていた。

「殺す」

ちょうど鳩尾に来た一撃の後遺症はしばらくの悶絶だった。

「豪火、竜ちょっと時間稼いで…」

覇凱一閃からにゅるにゅる出てきた豪火竜は半実体を持つと威燕の前に立ちはだかる。

「………ちょっと、俺助けに行くから頼んだ……」

よろよろと頼りなく立ち上がった竜太は覇凱一閃を重そうに引きずると所長の背後に忍び寄る。

「変態両断!!!火龍撃!!!」

しかし、それは当たることなく、空を発火させただけだった。

「甘い!!!俺と祀の愛は龍魂などという甘い炎では断ち切れん!!!」

クルリ、と回転し竜太の顔に右の蹴りを、左チョップを右肩に打ち込んだ所長はニヤつきながら吠える。

「俺と祀の愛の武器。貴様にはつかわねぇぜ!?俺と祀の愛には立ち入らせない!」

所長は祀に視線を送りつつも四肢は竜太にぶつけ続ける。



「議長!お待ちしておりました。こちらのお部屋で行われる予定です」

受付嬢が営業用の笑顔で客に微笑みかける。

「あぁ、ありがとう」

議長と呼ばれた男はそんな受付嬢には目もくれずに教えられた部屋へと早足で進む。

カツカツ、という男が発する足音とともに呟かれる呪詛の言葉はその廊下に響き渡る。

やがて男は目的の扉の前で立ち止まる。

何の変哲もない、ただの木製の扉だった。中からは話し声が聞こえてくる。

男はこれから起こることを想像すると心臓が高鳴った。

じゅるり、と舌なめずりをし唇の渇きを潤す。

「さぁ、さぁさぁさぁさぁ!!!これから始まる!!!史上最大最悪の全滅戦争!!!乗ってもらうぜぇ?切り裂きジャック!!!俺の意のまま思うまま、動け喚け死に絶えろ!!!」

議長は、大きく扉をあけ放った___________。

会議は、始まる。



大きく交差する形で所長の胸に二本の剣が突き刺さっていた。

右から刺しているのは竜太の覇凱一閃。

左から刺しているのは祀の王牙雷流。

その二本が綺麗に所長の胸を刺していた。

「あぁ・・・あぁああぁぁあぁぁぁ。祀……僕を愛してくれないのかい!?」

びくんびくんと痙攣しながら口から血を吐く所長は優しく微笑む。

「僕はあんなに愛していたよ?毎日毎晩、君を忘れたことなんて一度もなか…」

大きく息を吐いた所長はそれっきり動かなくなり、次第に暖かさを失っていく。

「今までありがとうございました、所長。俺たちはあなたがいない新しい平和で生きていきます」

祀は王牙雷流を引き抜くと深々と礼をした。

それを見た竜太も覇凱一閃を引き抜き威燕の方へと走り寄った。

次回決着予定也―

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