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切り裂きジャックは殺しません!!!  作者: 和呼之巳夜己
chapter:The entreated one.
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第九十五話 彼ら、決裂す

なんだかお話が今回もこんがらがってきちゃいましたよ…。

悲鳴が轟く部屋で国王は二人の姿を見て、鎧の中で微笑んでいた。

「もっと叫べ、そして私の鎧の糧となれ」

ほとばしる電撃や炎の中に紋太とポチはいた。その口からは悲鳴がやむことなく発し続けられている。

その悲鳴を糧に、王の鎧は少しずつその姿を変えていた。

つやつやしていたその外観は鋭い棘に包まれていく。

「叫べ。そして私の鎧を成長させろ」

紋太の喉からはいつの間にか長時間にわたる悲鳴により、血の塊が出ていた。

しかし、それすら本人は気が付いていない。

そして、鎧はその血を吸いさらに成長を続ける。

「…。まだ、終わらせないよ。一文字の血筋は、必ず終わらせるんだ。俺の手で」

王は紋太を蹴り飛ばすと低く笑った。




「え…!?」

白綿は一瞬の出来事を目の前に、恐怖を感じていた。

一瞬の間に柴はその体を苦の字に曲げ苦しみもがいていた。

「あっけない。他愛ない。つまらない」

祀は金箔を宙に放る。それは放物線を描いてくるくると回り再び祀の手に収まる。

「俺は、人間じゃないよ。人間じゃなくなったんだよ」

意味ありげに祀は微笑む。そして金箔を鞘に戻し、柴を片手で持ち上げる。

「人間じゃ、無くなったんだ」

「はぁ・・ぐん・・・・」

柴は泡を吹きながら手足をばたつかせる。

「金箔は、切り裂いている相手の周囲の酸素を奪う。つらいんだよね。息、出来なくて」

ゆっくりと目の高さまで持ち上げた柴の目はおびえに染まり、祀を直視していなかった。

「人間は慈悲深いんだけど、俺はもう…ね」

目を細めてゆっくりといったその言葉が終わる前に、柴はその四肢を痙攣させ、白目をむいて、気を失った。

もう、柴の命は危険地帯に入っていた。

「おね、お願い!!!助けて」

その様子を只見ているしかなかった白綿はようやくその口を開き、祀に懇願する。

その姿がかつての兄と重なって見える。

はっとした祀は自分の手の中の命を見る。それはすでに意識を失いぐったりとしている。

自分がしていたことを思い知り、その手を放し、金箔の力を開放する。

しばらくして柴の胸は再び動き出す。

自我を取り戻し、行為を知った祀はその場で膝をついた。

それは、自分たちを殺した者が行ったこと同じ行為。

「っ!!!…」

息が、詰まった。

自分がした行為に。

「よくも、柴を!!!!」

その刹那、祀の意識は白綿の毎によって奪われた。




地獄、とはよくできた言葉だと竜太は思ってしまった。

こんな状況をも、そんな一つの言葉で表現できてしまう。

まさにそこは地獄、だった。

その部屋に入ってまず見たものをこの世の言葉で表せと言われて絞り出し、言うとするならば地獄だった。もしくはそのたぐい

あたり一面に紋太のものであろうと思われる血が飛び散って、その紋太本人は目を開いて倒れている。

不規則で弱弱しい呼吸音とそれによる腹部の動きにより、生存していることは見て取れる。しかし、いつ止まってもおかしくないと思われるようなひどい状況だった。

しかし、その隣にいるポチは血の一つもはかずにその場で意識を失っているだけだった。

理緒が顔色を悪くしながらふらふらと紋太に歩み寄り、その体を持ち上げる。

「とにかく、帰るわよ。このままじゃ、何もできない」

先ほどまでと打って変わってしおれたかのような姿で理緒は元来た道を帰っていく。

竜太はその肩に思わず手をかけようとした。

しかしその手はためらいから理緒の肩に届くことはなかった。

なのに、なぜか理緒の肩には手が乗せられていた。

「連れて行かれちゃ、困るんだ」

その声が天井に立っていた王の言葉だと気付くまで数秒の時を有した。

叫ぶより先に体が動いていた。

竜魂剣を鞘から抜き出し、その手を切り落とす。それからようやく叫ぶ。

「逃げろ!!!」

理緒もその言葉を理解し走り出す。紋太に負荷をかけない程度の速度で。

「だから、連れて行かれちゃ困るんだって」

残っている方の手を伸ばし理緒を手にかけようとする手を再び竜太は防ぐ。

「連れて行ってもらわなきゃ、困るんだよ」

生身だったその腕は一瞬のうちに鎧を身にまとい龍魂剣の刃を握る。

一瞬にして王は完全な姿を取り戻した鎧に包まれていた。

「馬鹿にするのもいい加減にしろよ」

これまでののほほんとした声とは打って変わった冷たいこえは竜太ただ一人に向けられた。

王はそういって鎧の先から爪を出した。

「殺して、捕まえて殺すよ」

王は竜魂剣と爪を交え、襲い掛かってきた。




「ん!?」

ようやく血が止まった八迫はそこに倒れている一人の人を見つけた。

「…。ここって俺たち以外にも人がいるのか…」

「よっこらしょ」と、思わずつぶやいて八迫は少年を担ぐ。

それと同時に奥の扉が蹴り飛ばされる。

思わず身構えた八迫の不安はぬぐわれた。

「早く、逃げるの!!!」

紋太とポチを担いだ理緒だった。しかしその表情に余裕はなく、その表情から一応の気配を察した八迫も、来た道を戻っていく。




「で、俺たちだけで逃げるわけだな…?」

戻ってみると亮祐がエンジンをかけていた。

「竜太を、おいてくのか?」

八迫が睨みつけるようにつぶやく。しかし誰もその言葉にはあえて反応しない。

「おいていくのか!!!」

思わず叫んでいた。

今、この場で戦っているであろう仲間を一人置いて自分たちは安全な場所に帰ろうとしている。それを十分に理解している八迫は自信を考えず声を荒げ、叫ぶ。

「仕方ない…」

亮祐は下を見ながらかろうじて聞こえるほどの声で呟いた。

その亮祐へと歩み寄った八迫は胸ぐらをつかんで壁に叩きつける。

「お前はいっつもそうやって…。いつまでもこいつをガキ扱いして重箱に閉じ込めておけばいいさ!!!何にも知らない薄情な奴になれるように手塩かけて育てればいいさ!!!いつもいつも紋太紋太って…そんなに大事ならなぁ!!!」

八迫は一呼吸おいて自問自答してみた。

これから言おうとしている言葉は言ってもいい言葉なのか、言わずに止めておけばいい事なんじゃないのか。

自分を抑えようと、制御しようとする。

が、言ってしまったと気付いてのは言ってしまった後だった。

「一般家庭で普通に生活させてやれよ!!!」

言ってしまったなぁと気が付いてから八迫は壁に叩きつけられていた。

「こんな時に内輪もめしてる場合じゃないでしょう!?あたし達には今、命かかってんのよ!!!」

今度は八迫が胸ぐらをつかまれる番だった。

そしてさらにかっとなって、頭に血が上っていると自覚もせずに、言葉は続けられてしまう。

「じゃぁ、お前たちだけで帰ればいいだろう!?かえって呑気に昼ドラ見ながら煎餅かじってろよ!!!」

捨て台詞のように叫んで八迫は船を降りた。

居場所も無くなってしまった自分が入れる場所ではないと自覚したから、船を降りて、そして帰っていく船を見ることもなく再び来た道を戻っていった。

今は、竜太を助けようと思うだけだった。

薄情な奴じゃないやい。

思わず、呟いた八迫は、何かを隠すかのように地面を蹴り飛ばし走り出した。

それからようやく気が付く。

拾った子を船に置いてきたことに。



「甘いなぁ。これで自己犠牲だけで逃がせたと思ってんだろう。甘い甘い。だからガキは甘い」

壁に貼り付けられてしまった竜太は必死に逃げようともがいた。

「ほら、どうした、やってみろよ。お前の力はこんなものじゃないだろ?やってみろよ。龍魂、爆発させてみろよ。それともあれか、これの使い方知らない?」

竜太は変幻自在に手から炎を出したり消したりする王の話をただただ聞くしかなかった。

「竜魂はな、使い方があるんだよ。こういう風に人を殴ったりする使い方があるんだよぉ!!!」

炎をまとった鋭い爪の一撃は、竜太もろとも壁を飛ばすことなど造作もなかった。

たぶんこれは二十話以内で納められると思いますよ!?

今のところの予定ですけれども。

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