第九十話 見つかる一行
なんだか書いてたら今までで一番の文字数にはなったんじゃないかと…。
そんなことは言ってますが、話はそんなに進んでないと思います。はい。
まぁ、前々回の眞石版編よりは格段に短いと思いますので。何せ四十八話ほど書いたそうですから…。よくもまぁここまで同じ内容で書けたもんだと自分でも思います…。
そんなこと言ったら世界の小説家の皆さんはどうなってしまうのでしょうか。
まぁそんな感じで。
空に行けば、何が待っているのだろうか。
紋太はポチの後ろから同じように空を見た。そこにはこれまでと同じように何もない、けれど大きくどこまでも広がり続ける空があるだけだった。
本当にこの上に国なんて…ましてや犬や猫が人間のように知能を身に着けた存在となって生活しているのだろうか。
そう思うと空への興味がどんどん湧いてくる紋太だった。
空に行けば、何が待ち受けているのだろうか。
ポチはあれからずっと空を見ていた。そこにはこれまで見たことのないような下から見た空という景色があった。
本当に僕はあの国…誰かから奪ったという鎧をまとった国王が支配し続けている国に帰って何をする気なんだろうか。何ができるというのだろうか。
そう思うと何をしていいのか、何をしに行く気なのかが分からなくなるポチだった。
「今来ましたよぉーっと」
扉を開き制服のまま入って来た竜太は大広間に入った瞬間に尻をつき息をのんだ。
「な・・なんで犬が立ってそら見てんの!!!」
竜太はテレビを見ないか、数年前の出来事など覚えていないのどちらかで、レッサーパンダが立ったという一大ブームを知らないらしい。
最近は犬でも立ち、空を見ることがあるのだ。突如機械巨兵が襲いかかってきたり、不通に帯刀している人がいたりする人たちと闘ったり、地獄の王様と血で血を洗う戦いをしたり、空に島が浮かんでいるような世界だ。
何が起こってもまったく不思議ではない。
「うるさいわね?」
背後に潜んでいた理緒が腕に持っていたトレイで容赦なくたたきつぶす。
「ポチちゃん、牛乳飲む?」
竜太を叩きつぶしたというのに、見事にトレーの中から牛乳をこぼさずにポチの元へと届けた理緒はポチの前にトレーごと牛乳を置く。
「僕、牛乳好きだよ」
空を見ることをやめたポチは嬉しそうに牛乳へ駆け寄るとなめ始めた。
「犬がしゃべったぁ!!!」
叫ぶ竜太は再び理緒に、今度は踵で叩き潰された。
「うっさい!!!」
理緒が叫ぶと同時に大広間奥の灰色の扉から嬉しそうな八迫が飛び出してきた。
「でっきたぞーぉ!!!
作業着にヘルメットといういかにも土木関係の職人といういでたちにタオルをかけ、薄汚れた顔の八迫が自信作が出来たぜ、どうだこの野郎!!!という顔で誇らしげに胸を張った八迫が飛び出してきた。
「これで、空に行けるぞ!!!」
八迫の一言はその場にいた全員の注意を引いた。
「やった、ポチの国に行けるよ。全部任せておいて!!!全部僕たちが解決してみせるよ。僕たち実は慈善事業集団なんだ!!!」
紋太の悪気のないその一言はその場にいたほかの面々を少なからずへこませた。
「そりゃ、街守ってないよ、最近は…。自分たちの身内の問題ばっかり解決してるよ?でも、それがメインじゃないし…」
「ええ…ええそうですよ。どうせ私たちがやってることは人助けですよ…」
「そうか…。俺たちは君にそういう風にみられていたわけですね…。紋太君」
「うっそ!!!まじで空行けるんスか」
一人だけ頓珍漢な答えを返した竜太は状況を全く理解していなかった。
しばらくへこんでいた空気を壊したのは自称天才発明家等だった。
「とにかく、空へ出発だぁ!!!」
心なしかその声は泣いているようにも聞こえた。
「柴、守護犬使全隊出撃準備は可能か?」
鎧に身を隠した国王は芝の顎を撫でながら計画の進行状況を尋ねる。
嬉しそうに喉を鳴らしている柴は返事の代わりに嬉しそうに吠える。
「それだけではありません…。近づいてきていますよ。奴らが。犯罪者一人を連行しているということにも気が付かずに」
柴は怪しげな笑みを浮かべ、王を見る。
王もまた、その視線に応えるべく低く笑う。
「じゃぁ、猫人殲滅を先に始めよう。そのあいつらは来るよ。さぁ、始めようよ。完全殲滅侵略」
その声で、すべての守護犬使は一斉に宮殿から出撃した。
「今宵は荒れるよ。荒れて荒れて…血で空が染まるよ」
王は右手の指をすべてバラバラに動かし、不気味に笑った。
「ハウリング隊長!!!私たち三番隊は町の警備でありますな!?」
警察のような服を身に着けた駐在さんスタイルの守護犬使三番隊の一員は敬礼の姿で隊長に自らの使命を問う。
「国王様曰く、もうすぐこの街にニンゲンという生物が来るそうだ。われらに似通った、しかし下等な生物であるらしい。しかしその性格は野蛮で凶暴と聞く。心してかかれ」
背筋を曲げずに整った姿勢でハウリングは部下へ命令する。
次の瞬間に、街に衝撃が走る。
退避をさせることもしなかった国の生産力、奴隷が町と共に飛んで、消えていく。
「飛んでいくねぇ…。しかし、国とは王。国はどうなっても王である国に王さえ生きていたらそこが国。この彼らのとうとう犠牲を忘れるな。その為に、侵入者と罪人 をとらえ、拘束もしくは殺害するぞ。王の所有物を勝手に壊すのは、過ぎた遊びだと教えてやらねばならんからな」
ハウリングの手にいつしか握られていたその爪を深くはめると、衝撃が放たれた方向へと三番隊を率いて隊列を乱さずに歩き出していた。
「おお!!!さっすが鼻が利く犬たちだぜ!?さっそくお出ましだぜ?」
不時着した船から飛び出してきた八迫がこちらに迫ってきた犬を見て歓喜の叫びをあげる。
「お前はこの危機的状況を見てなんとも思わんのか…。少しは後先考えて着陸しろよ!!!」
船から転がり出るような形で犬人だけが暮らす世界に足を下した亮祐が八迫ににらみを利かせるが亮祐にはそんなことはお構いなしだった。
「あなたたちのせいで帰りのチケットがなくなっているわけですから、少しは気に病んではいかがかしら??」
後ろから拳を握りゆっくりと出てきた理緒を見て八迫は明日のほうを向いて弁解し始めた。
「だって、帰りの分の燃料まで行きで使う羽目になるなんて思わなかったんだもんねー。空がこんなに遠いなんて、誰が知ってたんだよ!?」
胸を張ってえっへんと威張る八迫を前に、三番隊は切り裂きジャックの面々を囲み終わっていた。
「貴様らが人間か?その鋼の塊に乗っているはずの罪犬人をこちらに渡してもらおう」
爪で八迫のほうをさしたハウリングはポチの身柄を引き渡せと迫った。
「僕のポチは渡さないんだからね!!!」
トラベラーを構えて船から出てきた紋太は景気づけに一発発砲した。
「渡さないんだからね!?」
トラベラーから放たれた銃弾はハウリングの頬をかすめてどこかへ消えた。
「それは宣戦布告ととらえるぞ!?そしてそれが意味するものは…殺せというお願いだ」
その声とともに三番隊は一斉に襲い掛かる。
「うん、ここらで名誉挽回しとかないと俺あとで絞られるよね!?絶対。だからここは俺に任せといてー」
八迫は軽く笑いながらハウリングの顔を殴り飛ばした。
「そちらの部下さんは任せるからねー」
八迫はのほほんとしながらハウリングを殴り飛ばしたほうへと消えていった。
「とか言って、あいつ絶対にここに戻ってくる気ないでしょ…。逃げたんでしょーがぁ!!!!」
理緒が久しぶりに汀を取り出して腹いせに一番近くにいた犬人に対し顔面に拳をめり込ませ、鬱憤を晴らしていた。
そしていまだ出てこない仲間の一人に対し怒鳴り声で召喚させた。
「はいぃ!!!」
その結果、竜太は竜魂剣を構えてびくびくしながら出てきていた。否、出てこざるを得なかった。
「とにかくここにいる雑魚様を蹴散らしてから、全部考えろ!!!」
亮祐がアドベンチャラーで一匹ずつ正確に狙いながら全員に言い聞かせた。
『了解―!!』
その場にいた全員が返事をした。竜太は不本意ながらだったが。
「貴様ら、この国をここまで壊しておいて何様のつもりだ!!!」
ハウリングは自らの手にはめている爪を振り回し八迫にいったん距離を取らせた。
「だがしかし、国とは王。王さえ生きていればそこが国。王に縋り付く雑草どもをいくら壊そうがいいかもしれん…。けれども王のおもちゃを勝手に壊すのは、いけないということを教えてやろう」
その爪は幾犬人もの体を裂き、殺してきた血塗られた爪。その爪が八迫ただ一人に向けられた。
「根本的に俺とお前たちの国の定義が違うようだからな。そこのところを教えてやるよ」
八迫はその場に落ちていた、そこに人が住んでいたことを証明するものを拾い構えた。
その八迫の顔を見てハウリングは鼻で笑った。
「そんな奴隷が使っていたものなどで私と互角に戦えるとでも思っているのか。ニンゲンというものは王の言うとおり下等生物だな」
八迫は手に持ったものを回しハウリングを笑った。
「教えてやるって言っただろ!?そのためにはこれが一番、効果的かと思ってね…」
手に持った生活感あふれる竿は、八迫の手によってハウリングに教育をするための最適な武器として選ばれた。
「逃げてちょうだい!!!紋太ぁ!!!」
その声が、どこかで聞いたような優しい誰かとかぶり一瞬の間動きが止まった。
その一瞬は素早い犬には絶好のチャンスにとらえられた。
その犬の助走をつけた体当たりで紋太は船に叩きつけられる。
「子供は馬鹿だな…。命をかけてこの場にいるのであればそれ相応の気力を持って挑まねば、このように殺される。来世では気を付けるといいよ」
そう言った犬は紋太に牙を光らせ噛みつこうとした。そしてその喉を噛み千切ろうと目を光らせて首を下す。
「覇凱一閃峰弾き!!!」
竜太が素早く覇凱一閃で犬の首をとらえ、上に向かってはじいた。
「ありがと、竜太」
素早く立ち上がった紋太は眩暈で再びその場に倒れる。
その状況を悪く見た亮祐がポチの名前を叫ぶ。
「紋太を連れて船の中にいろ!!!」
ポチは一生懸命に駆け出し、紋太を連れて船の中へと駆け込み、船の入り口で吠える。
「ちょっと、数が多すぎるんじゃないかしら!?」
理緒が汀で犬の牙を防ぎながらひとりでにボヤいた。
「どうするんだろうね!?人間たちはこの鎧を奪いに来ると思うかい!?」
王は戦争のさなか柴と戯れながらボソッとつぶやく。
「きっと鎧の事なんて知らないと思いますよ?ただ、 に何か吹き込まれてきたんじゃないかと」
腹を見せてゴロゴロとする柴は愛嬌をふりまきながら王のつぶやきにこたえる。
「そうかな?まぁどちらにしろ、もう遅いんだよ、全部が」
実は今回、町が壊れて犬人がうひゃーな描写を書こうと思ったのですが、思いとどまって省略させていただきました。
ご了承ください。
次回 始まる戦争【仮】