第八十八話 君臨する鎧
前回断言しましたとおりに無事に別のお話を始めることが出来ました。
一応舞台は空に移るわけですが、八迫さんの天才テクニックで飛行機でも作ってもらいましょうか?
どうやってそこにたどりつくかってことが非常に問題です。
戻ってきて初めに見えたのは壊れている半壊本部だった。
「…。えっと、誰もこの場所直さなかったわけ?」
きょとんとその場で立って本部を見た八迫が言った一言で、亮祐が目覚めた。
「…。俺の事馬鹿にすんなよ!!!」
バッと右手を天に突き出したまま亮祐は叫んだ。右手に持った機械のボタンを押しながら。
「親のスネ、なめんなよ!!!」
途端に空から地面からいたるところから工事の人…全員が服のどこかに中片の家紋をつけている。
全員、中片家の雇った人だった。
「ひぃぃぃ…」
どこからでもわらわらと出て来る変態のような人間を見てその場の意識ある者全員がそのゴキブリ並みの行動力に息をのんだ。
動くものに飛び掛かってこないだけましかもしれないが。
いまだ右腕を天に突き出している亮祐の元にゴキブリのような人たちが綺麗にまとまり跪く。
「それで、本日はどのように致しましょうか」
「ハッピーなオカマみたいな感じぃ?」
「今回こそは、命がかかった仕掛けを!!!」
「今日空いてる!?亮ちゃんお店きてよぉ~」
なんだかさまざまな人を雇いすぎて人選ミスをしていると思う八迫をしり目に彼らは匠の技で本部の修正を開始して、終わった。
「じゃぁ、今夜はお店に来てねぇ亮ちゃん?」
全員が元いた場所へと元来た道をたどって消えていった。
作業員がだれもいなくなった本部前でいまだ右手を上げる亮祐の肩へ八迫は手を置いた。
「お前は夜どこで何してんだ!?」
怪しい人ばかりいた作業員の人を見た八迫はその疑問を笑顔とともに亮祐にぶつけた。
「えっと…。その…別にやましいことしてるわけじゃないんだよ。あの人とかオカマなだけだから」
「そことお前のつながりの説明を求めるんだけど」
答えに困った亮祐は右手をやっとおろすと八迫の手を方から外し、本部に向かって駆け出した。
「待て!!!変態!!!」
「亮祐ってああいうのが好きなのかな…」
紋太が上目使いで理緒に解説を求めた。
「え!?え…ええっと…。男の子にはそういう時期があるんじゃないかしら…たぶん…。きっと…」
どんどん小さくなる回答を聞いた紋太の目は一瞬曇る。
「僕はそんな大人にはなりたくないな…」
理緒はそれを聞いてうなずく。
「ああはなっちゃだめよ。あんなのと、こんなのには」
あんなの、で本部へ消えていった亮祐を。こんなの、で地面で血を流して倒れている竜太の姿をさし理緒も紋太を連れて本部へと入っていった。
「絶対大人にならない!!!」
断言した紋太は本部の扉を開けて理緒を先に入れた。
「まぁ、レディーファーストなのね。大丈夫、紋太は立派な大人になれるわよ。今だってこんなに立派ですものね」
嬉しそうに笑った紋太は扉を絞めて、鍵もしめた。一人忘れていることを忘れて。
「それで、今度はどんな面白いこと始めるんですか!?」
耳をぴんと立て、しっぽをパタパタとご機嫌そうに振るその生き物は王座に座る鎧に話しかける。
「今度は、完全に壊しちゃおうと思ってるんだよ。全部壊してから、宮殿ごとどこかに行こうじゃないか。例えば・・そう。下界とかにね。楽しそうだろ、柴」
柴は更にパタパタと尻尾を振ると嬉しそうに笑った。
「ワンッ!!!」
柴は、犬だった。柴だけではなく、その国に住むものすべてが犬だった。
誰も姿を見たことがないという鎧をまとった王もまた、犬であるとだれもが信じてやまなかった。
そして、誰もが犬以外の生き物であるなどと怪しむ者はいなかった。
「ところで、柴。あの子はどうしてるかな、この世界にたった一人でやってきた赤ん坊。確か名前は、一文字紋太だったっけ」
カチャカチャと鎧を鳴らしながら、国王は鼻を鳴らす。
「すでに滅びたといっても過言ではないよね、一文字の血は。あの子もほら、もうすぐ死んじゃうわけだしさ」
柴は国王の周りをぐるぐるとまわり嬉しそうに吠える。
「俺たち犬人はこれより国土拡大を始めよう。もう、この国だけでは飢えてしまうよ。だから…」
国王はいったん言葉を止め、壁に貼ってある世界地図へと歩み寄ると一つの島国をさした。
「こんな猫ばっかが暮らす毛玉みたいな国はいらないよね。柴、全部壊しちゃおう。壊して壊して、新しい犬人の国を作ろう」
そのほかに誰もいない王室で、柴が賛同の意を示し大きく吠えた。
柴と国王が始める猫人の国の侵略。
そこにどうして切り裂きジャックがしゃしゃり出てくるのか…。
そして紋太君のルーツも明らかになるのでしょうか!?
次回 始める戦争【仮】