第八十七話 所長は彼らを操りたくらみを進める。
なんだか体の調子が悪いのですが、まぁ大丈夫だろうと思い込むことにして、毎回夜中に更新ですいません…。次回もきっと夜中ですよ!!!ということで、本編どうぞ。
所長は、笑った。
コポコポと音を立てて眠るその生物を見て笑った。
所長が見ている生物は眠りについていた。その体にまとうものは何もなく、ただ管が付いているだけ。その管も一本二本という量ではない。ざっと五十。その生物は何かの液体に閉じ込められたまま眠りについていた。
「いい。いいぞいいぞ…。私が生み出す世界の禁忌。新しい生命体」
所長はその生物をうっとりと眺めてから近くにある制御装置にデータを送った。それは祀が、佚榎が、鐵が砺磑が凱史が集めてきたデータだった。
「君たちはどう動くんだい!?これを知って…」
所長はその生物の入っている器に寄り添いひとり呟く。
「君たちは、これを壊すのかい?壊されるのかい?一緒に壊れるのかい?どちらにしろ、僕の実験に狂いはないよ。誰もこの生物が一体などとそんな優しいことは言っていないのだから」
カチッと電気を消すと所長は自室へと戻った。
その部屋に残された世界の禁忌は器の中でビクリと肩を震わせた。
管が一本自動的に外される。
祀は佚榎、鐵を自室に招いてのんびりと休みを満喫していた。
「なぁー佚榎ぁ?」
ベットで寝転がり本を読みながら祀はそこらへんでテレビゲームをしているはずの佚榎に声をかける。
返事が返ってこないので本から目を外し部屋を見渡すと案外近くにいた。
じっと無言で見ているとやがてカチャカチャとボタンを連打しつつ佚榎は上にいる祀を見た。
「なんだよ」
言おうか迷った祀だったが決心してすべてを佚榎に話そうと尋ねる。
「お前、夢見る?」
なおも祀を見ながらのままで佚榎は質問の意味が分からず首をかしげ逆に尋ねた。
「夢!?夢ってあの…寝てる間に見るやつ?」
祀はほどなくして頷く。
「…。あの日、俺たちが死んだ日の事を見る?」
祀から目をそらし壁を見つめ続ける佚榎を見て祀は思わず謝った。
「ご・・・ごめん!!!変なこと、聞いちゃって」
「見ねぇな、俺は。祀は見るのか」
祀は口を開こうとしなかった。佚榎はそれを答えと取り、解決方法になれば、と思いコントローラーを置き、祀の元へと近づくと祀の目を見て伝えた。
「忘れろ。あの日の事なんか全部忘れちゃえ。あいつが来て全部壊していったことなんか忘れろ。あんなの、覚えてたって何一つ良いことはない」
佚榎が言い終わると同時に鐵が部屋に入ってきて続けるように促す。
「俺たちはあの時あの場所で死んだんだ。今、此処で生きてるのは俺たちじゃないんだ」
「でも、祀は忘れられないんだよね。忘れちゃいけない、と思ってるでしょ。目の前にで死んでいったお兄さんの事も忘れちゃうことになるから」
鐵の言ったことは的を得ていて、祀は本をベットに置くと体を起こしてから弱弱しく頷く。
「いい祀、君のお兄さんは、竾埀翅威燕は君にこんなことを望んでなんかいなかったと思うよ。あくまで客観的な視点からの意見だけど、従順な犬になってほしくてあいつからたった一人の弟を命を賭して守ろうとしたんじゃないと思うよ」
そっとベットの端に座った鐵は祀の顔を直視した。祀もその顔をを直視する。
「別に…親は良かったんだ。あいつにどうされようが。だって、助けてくれなかったんだよ?あいつが壊した町を見て、あいつに殺されるのが怖くて怖くて…自分が助かり、子供が奴隷のようになることを選んだんだよ!?兄ちゃんだけが、おれをたすけてくれようと、してっ!!!」
祀は目にかかるぼさぼさの金髪を振り払いながら心中をさらけ出した。
と、同時に恐ろしげな音楽が流れ出す。
一瞬で身構えた三人だったが佚榎が音の正体に気が付きに焼けて振り向く。
「負けちゃった…」
佚榎が指差した先にはゲームオーバーの文字が流れるテレビゲームがあった。
鐵はポフッと祀の金髪に手を置くとゆっくりと告げた。
「威燕さんはもういなくなっちゃったけど、君はまだここにいるんだよ。ちゃんと生きていかなくちゃ。その為にはいやなことは忘れるのが一番!!!」
言い終わった鐵は柔らかい祀の髪の毛で何度もポフポフと遊び始めた。
子ども扱いされてるなぁと若干思ってきた祀はその手を払いのけると鐵にボソッとつぶやいた。
「子ども扱い…すんな」
できる限り起こってみた祀だったが、上目使いで睨まれている鐵はただ笑い続けるだけだった。
「でねでね!!!やっぱり、デキてると思うのよ、私」
フリフリが付いた目障りな服だなぁと思いつつ砺磑は妹凱史の言うことを聞いていた。
凱史の話は最近の祀に対する佚榎の態度は恋人のそれだと思うという事や、でもでも最近は鐵もそこに交じって三人でデキてるんじゃないか!!!といいうとっても幸せな脳内物語で、興味もないそれを細部まで詳しく聞かされているの砺磑は優しくするんじゃなかったと心から思い始めていた。
「だから!!!だから最近三人は一緒にお風呂に入ったり、夜祀の部屋に集まっていたりしてるんだと思うの!!!」
その眼はとても輝き、うら若き乙女です!!!と主張するほどに輝き、それに加える甘ったるい話を聞かされ続けて早三時間の砺磑は月が移動するさまを窓から眺めていた。
それからさらに二時間後、凱史の脳内ではなぜか幸せな家庭が三人に間に築かれていて毎日のように甘い生活が云々。
「もう、寝ていいか?」
心の底から叫びたかった本音が口から零れ落ちると凱史の目は途端に覚めていった。
「そんなにお話つまらなかった?」
…。三人の一日一日をすべて網羅するかのように人生設計まで作られた話を聞くのはいかに好きでも飽きるし、そもそも私はそんなに三人の事は好きでもない…。という本音が再び漏れるのを必死に抑えた砺磑は時計を指さし、
「あ…明日も早いからまた明日な!!!」
いうが勝ちの精神で言った途端に布団にもぐりこんだ砺磑はものの見事に数秒で眠りにつくことができた。
なんだか最近は竾埀翅祀君のことばっかり書いているような気もしなくもないのですが。
ま・・・まぁ金髪碧眼ですから!!!【まるで俺が金髪碧眼好きみたいだ…違うのに】
なんとなくですが本編は進んでおります。そして…まったく出てこない切り裂きジャックの面々はいったい今何しているのでしょうか。
とりあえず今回で序章は終わりです!!!
これからもちょこちょこ出てくるであろう祀君たちをよろしくお願いします。
次回八十八話 未題