表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
切り裂きジャックは殺しません!!!  作者: 和呼之巳夜己
chapter:The entreated one.
110/163

第八十六話 砺磑はその場で立ちすくみ、鐵は何もなく。

前回がいきなりの乱入文章だったので。

ちなみに今回で序章は終わるかと思います。

次に書くときに気が変わっていなければ。

まず、とび膝蹴りで一番近くにいた動く死体の腰の骨を砕く。

続いて右から襲ってくる動く死体には左で驚く動く死体の右肩を踏み台に顔を壊す。

更には自分の体重を手で支え回転し、周りの動く死体も巻き込んで絶命させる。

そこでようやく砺磑は一息ついた。

「お前はやんねぇの!?凱史」

鼻で笑いながら自分に向けられたその言葉に一瞬にして頭に血が上った凱史はいつの間にか手荷物傘の骨が折れるという心配をせずに首を折っていった。

一瞬の間に二人の周りには動いていた死体の山が出来上がっていた。

そしてその場に立つのは二人の少女。一人はスーツを着崩したっている砺磑。もう一人はゴスロリ服の凱史だった。


「それで、君たちは地獄で何を見てきたんだい」

所長はブランデーを飲み干してから二人に尋ねた。所長の部屋は相変わらず煙くさくて濁っている。

「報告書を見る限りではね、地獄の王マリーネは死んでいるということが確認されたという事はわかった。しかし、マリーネが築きあげたものはどうしたんだい。マリーネの城は!?兵器は!?」

所長は報告書を机に置くと引き出しから何かを取り出した。

「君たち、いいの?君たちがちゃんと働かないと君たちの大切な中身、全部壊れちゃうよ?全部ぜぇぇぇぇぇんぶ消えてなくなっちゃうよ」

その何かが思い出させるのは消えてしまった町、親…すべて。

凱史はその場でしゃがみこみ頭をかきむしる。

砺磑はその場でただ立ち尽くす。その眼は何も見ていない。

「でも…君たちがんばってるから今回はなくしてあげるよ。代わりに今度、今度こんな能無しの報告書を贈り物に帰ってきたら君たちのこれ、壊しちゃうかもしれないなぁ」

所長は手に持った何かを左右に軽く振る。

砺磑は自然とつぶやいていた。

「次は、頑張ります」

いつの間にかその眼からは涙が流れていた。しかし、それに気が付けるほどこの場の空気は優しくはなかった。

恐怖による支配だった。



絶望感と虚無を抱えた二人は何も考えず、考えられずに集会所の椅子で倒れ込んだ。

ソファーで寝ていた鐵が立ち上がっても、二人にはそれすらも気にならなかった。

茶色の椅子が、その重みでかすかに音を立てた。

それと同時に鐵は所長の部屋へと歩きだしていた。


鐵が開けるとなぜか所長の扉はきしんだ音も立てずにスッと開く。そして鐵は所長室に入ると備え付けのソファーに再び腰かける。

所長の部屋で唯一ソファーに座れるのは鐵だけだった。

「鐵君。君たちのオトモダチの女の子は実に役に立たないねぇ。代わりに祀君はとっっっっても役に立ってくれるよ。もちろん、君や、佚榎君も大活躍。うちから出た落ちこぼれの剣士君とは違うよ。勝手に出て行って勝手に弱小組織を作り上げて勝手に操られて死んで…。その上切り裂きジャックに加担したんだ。死んで当然だよねぇ」

表情一つ変えることなくソファで足を組んだままの鐵は所長の言葉がだれを誹謗中傷しているのかということが分かった。

この組織で全員がなついていた兄役のような人だった。

いつみてもきれいだと思うほどの剣術を持っていた人だった。

鐵は部屋に入って初めて口を開く。

「私たちの兄…眞幻想の悪口はやめてください」

静かな怒りが含まれていることにも気が付かず所長は言葉を続ける。

「あぁ・・・君たち孤児には眞幻想さんがとっても優しい唯一の肉親的役割だった人だもんねぇ…。でもほら、そんな彼でも勝手に死んじゃったじゃない。言うこと聞かず飛びだしてさ」

限界だった。鐵にはその言葉の羅列を聞いていること、自分たちの兄を侮辱しているその男の吐く息の音すら限界だった。

いつの間にか勝手に手が動いていた。

ゴトンッという音を立てて所長の部屋の来客用の机が二つに分かれて地面に転がっていた。

「やめてください」

鐵はもう一度同じように怒りを込めて言い放った。

所長は自らのコートの襟を正すと自分の椅子に座り引き出しから一つの封筒を出す。

そしてその封筒を鐵へと投げつける。投げられた封筒は殺意とともに鐵の膝へと落下する。

「今日は、これですか…」

すでに腕を組んで鐵の方を見ないままに所長はぶっきらぼうに言う。

「とっとと行け。俺はこの机を直さなければならんのでな」

言葉が終わる前に立ちあがった鐵は何も言わず部屋から出ていく。

一人残された所長は扉を睨みつける。

「あのくそ餓鬼どもが…。女はまだ家族の身を案じてるから扱いやすいが…。男どもときたら薄情で暴力的で…。憎たらしいことこの上ないな…。まぁあいつらも所詮捨て駒だからな。いいように使って体壊して苦しんで死んでもらうしな…」

くっくっく…。という所長の声が部屋に響いていた。


そして鐵は何もなく無事にその指令をこなし、所長に報告書の束を投げつけた。


「あのさ…祀!?」

カポポーンっと音が鳴り響く男の大浴場で佚榎は祀に今まで聞きたかったことを尋ねた。

「お前何でそんなにあいつの言いなりになって働いてんの?」

祀は桶にお湯を入れるとそれで自らの頭に着いた泡を流してから答える。

「単に、あいつの言いなりになっとけば信頼が得られる。ここから助かる方法も見つけられるかなぁって」

ザバァっと音を立てて祀は風呂に入る。

続いて体を洗い終えた佚榎も隣に入る。

「じゃぁ何で佚榎はそんなに祀のこと気にかけるんだい」

珍しく起きていた鐵を誘うと三人は大浴場で親睦を深めようということになった。

「別に。友達が困ってたら誰でも心配するだろ!?単に祀は一番心配させる奴だからだよ。働いてばっかだし。それに俺は鐵の事も心配だぞ!?毎日あんなに寝て大丈夫なのかなぁ…。とか、結構心配してんだぞ!!俺はー」

ザバァっいきよいよく立ち上がった佚榎は拳を振り上げて男二人に力説した。

「どうでもいいから早くしまえよ…」

そんな佚榎の演説をしり目にちょうど目の高さに来ていたものを見て祀はつぶやく。

鐵もそれを見てから思わず言ってしまった。

「佚榎ってさ、でりかしぃがないよね」

そんな二人のやり取りを聞いた佚榎はいきよいよく鼻のあたりまで潜るとぶくぶくと泡を出し始めた。

そのあまりにも子供っぽいしぐさを見て祀と鐵は笑った。

そんな中で佚榎は再び拳を振り上げ演説を再開した。

「俺たちはいつまでも一緒に笑ってられるようにしような!!!」

演説に熱くなった佚榎は祀と鐵のほうを向くと再び立ち上がり、祀に見せつけるような格好になってしまった。

「どうでもいいからそれを早くしまえ!!!」

二回目からは容赦なく祀が佚榎の頭をつかんで大浴場の中で湯煙殺人事件を起こそうとしていた。

鐵はその二人のコントを見ていた。

「これってあれだよね、夫婦漫才!!!」

その一言で祀と佚榎はかたまり、同時に鐵を凝視した。

一瞬の沈黙があり、二人の標的は鐵へと移った。

こうなったらもうそこは風呂であろうが関係ない。戦場だった。


一時間ほどの入浴が終わった後、三人は大浴場の備え付けマッサージチェアでのぼせていた。

「お前たち、後でおぼえとけよ」

顔を真っ赤にした祀がつぶやく。

「お前こそ、ふざけるのもたいがいにしろ…よ」

佚榎がぐったりとしながら言い終わると同時に冷たいものが投げられた。

「やっぱり温泉=コーヒー牛乳だよねぇ」

いつの間にかいなくなっていた鐵が手に三本のコーヒー牛乳を持って現れていた。

そこからも、三人の話や格闘は止まることを知らなかった。



「ありがとう…ね」

言った瞬間に凱史は自分で言ったことの意味を知り赤面しながらお湯に口をつけ泡を出して遊び始める。

砺磑はその言葉を聞いて青い髪を結うと凱史の横に入り、その頭をくしゃくしゃになっても撫で続けた。

「だからやめなさいって言ってんじゃないの!!!私はそこまでお子ちゃまじゃないのぉー!!!」

思わず叫んだ凱史を見て砺磑はにっこりとほほ笑んだ。

「そうやって生意気なほうがお前らしいよ、凱史」

そうして、姉妹の思い出話は始まった。

いいわけではありませんが、男どもの部分が長いのは自分が見た感じがこんなんだからなのです。逆に砺磑凱史姉妹のほうはわからないのです…。

まぁ、仲良くなってるところも書きたかったということから来た突発ネタでしたが。


まだこの集団が何を持って何を行うのかとかまだ決まってないので全く関係のない新しいお話に代わると思いますが、どうぞよろしくお願いします!!!


次回 第八十七話 未定

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ