第八十三話 しかし祀たちの前に立ちふさがるのは…。
ぐらり…。と地面が揺れたような感覚がした。それだけで気が付けばもうすでに其処は切り裂きジャック総本山だった。
「ほら、祀ついたぜぇ…って大丈夫か!?」
ついたとたんに祀は地面に座り込み、肩で息をしていた。
「だい…じょぶ」
佚榎はしばらくうなった後手を叩いてから祀に告げた。
「ここは俺が行くからさ、お前はここら辺で休んでろよ。すぐ戻ってくるからさ。帰ったら一緒に一杯やろうな~♪」
そう言い残し去っていく佚榎を見て祀はふと思った。これはいわゆる死亡フラグとかいうやつではないのかと。
しかしこの場から動けない今、ただ佚榎の帰りを待つばかりだった。
そうこうしているうちにだんだん睡魔が襲ってくる。最近は所長の指令で働き続きだ。休日はここ最近とっていない。働いてばかりで、睡眠もとっていなかったからだなぁと、祀は思いながら意識を手放した。
「最近祀の奴休んでないからなぁ…。今度俺が代わりに祀の仕事受けてやろうっと」
のんきに走って探索していると突然視界を何かが横ぎった。思わず息をのんだかすかな音で、それはこちらを振り返った。
暗闇の中でその目が光る。その眼は時には赤に時には蒼に光り輝いていた。その変化し続ける目がじっとこちらを見てくる。そして、その眼は少しずつ確実に歩み寄ってくる。頭に響くのは甲高い笑い声。ケラケラと笑い続ける声。
突如落としてその声はやみ、佚榎に語りかけてきた。
「檜葉呀佚榎。君は知ってるぅ?」
男は佚榎の周りをまわり続け、ひたすら話し続ける。
「僕はねぇ…。人を探してるんだよ…。君知らなぁぁぁい?」
右手の袖からゆっくりと斧を出すと男は佚榎の首に斧をつける。
斧の金属の冷たさと流れる汗の冷たさが今の現状を佚榎に伝えた。
一瞬の無音ののちにその男はキャハキャハと笑い言葉を紡いだ。
「切り裂きジャックぅ…。平田竜太を知らない?」
佚榎はゆっくりと首にかかった斧を外すと「知りません。お引き取り願います」と誠意をもって答えたつもりだった。
祀が目をあけると空の月はもうかなり移動してしまっていた。何時間寝ていたのか祀にもわからなかった。あいにく今日は腕時計というものを身に着けてはこなかった。ポケットにもしまっていなかった。
ようやく体が動くようになった祀は立ち上がると佚榎が向かった方向へと小走りで急いだ。
「佚榎ぁ?どこ行ったんだよー!?佚榎!?」
名前を呼んでも声すら聞こえなかった。祀は呼びかけながらもう少し歩いてみることにした。
やがて、声が聞こえた。
「祀!!!来るな!!!」
建物の角を曲がろうとしたときに角の向こうから声が聞こえた。佚榎の声だった。
「佚榎!?」
思わず角を曲がり佚榎の姿を探すとそこにはズボンのチェーンを振り回悪戦苦闘する佚榎の姿だった。思わずポケットから銃を出すと、佚榎を襲う男の足を一思いに打ち抜いた。
男は祀を睨むと消え去った。
「佚榎大丈夫!?」
男が消えた後すぐに佚榎に駆け寄った祀は佚榎の安否を確かめるとそのまま強制帰還した。
「切り裂きジャックって言ってた」
祀の部屋の中で、二人は男について話し合っていた。
「切り裂き…ジャック…」
これから起こそうとしていることを知らされている祀はその名に反応してしまう。
「なぁ祀、やっぱ切り裂きジャックってバラバラ殺人事件の奴なのかなぁ…?」
祀は唇を噛むと佚榎の疑問にそれとなく答えた。
「それよりももっと…もっとひどい奴らだ」
祀は一人切り裂きジャックたちが起こしたことを思い出し、再び唇をかんだ。
まぁ、こんな感じで子供に少し焦点を当ててこの章は終わりだと思われます!!!
次回 祀と佚榎が総本山を調べていた一方で凱史はマリーネ亡き地獄の偵察をしていた。
第八十四話 凱史は地獄で新たなものを見る。