第八十話 再会
前回までの比較的簡単なあらすじ
竜太はとても強いマリーネとの最後の戦いをしていました。
マリーネが放った冥界の誘いは、外にいた切り裂きジャックたちの元にも振動となって響いていた。
そしてそのことにいち早く気が付いた八迫は老体にムチ打って立ち上がると、竜太がいる方向へと目を向けた。それを目にした理緒は、同じ方向へと目を向ける。口の中へと魚肉を押し込んだ後で。その異常な様子に気が付いた紋太は二人の目線を追う。そしてその方向にある人に気づく。亮祐も同じように目だけを向ける。
切り裂きジャック四人は同じことを思った。『勝て』と。そしてその声は…。
暗闇に包まれた中、竜太がかすかに明けた瞳で見えたものはシャガンだった。正確に言うならば、シャガンだったものだった。
口の端から血を流し、左右の目の色が変わったままのシャガンだった。腹部からは獄帝の刃、その漆黒の刃がシャガンの血で赤くなっている刃が見えていた。
やがて、煙は晴れて竜太はシャガンの後ろに立つマリーネの姿を見た。
「まずは切り裂きジャック、一人目…」
スッと刃を抜くと、その刃を支えにようやく立っていたシャガンは地面に倒れ込む。その衝撃でシャガンは咳込み、血を吐く。その血は、竜太のズボンに飛んだ。
「次にこうなるのは、お前の番だよ…。七の切り裂きジャック平田竜太」
獄帝の刃と獄帝の御剣を手にしたマリーネは確実に竜太を殺そうと身構えていた。
シャガンの血は今なおズボンに染込んで、足が濡れていくのがわかる。
しかしそれを振り払い構えを取ろうとする竜太の足を何かがつかむ。
「か…勝ちたい…か?」
シャガンの手だった。すでに冷たくなりかけているシャガンの手だった。
声にこたえずにその顔を見ているとシャガンはもう一度呟く。今度は顔を竜太のほうへと起き上がらせながら。
「勝ちたい…か!?」
再び投げられた問いに竜太は、その声に応えた。
シャガンは不気味ににやけるとその姿を消した。そしてかすかに聞こえる声で呟いて消えた。
「このツケは払ってもらうぞ…」
「死ね!!!平田竜太!!!」
叫び飛び掛かる竜太の前に見覚えのある龍が姿を現していた。
それは豪火龍だった。
突然現れた豪火龍を前に竜太はただ立ち尽くし、マリーネはその剣を止め、叫びだす。
「あ…ふぅ…あふ…シャガン…!!!シャガンめぇ!よくも…俺の…俺のを!!!」
何も言えずにただ立ち尽くす竜太に対し、豪火龍は口を開いた。
「お久しぶりです。私の贈り物は役に立ちましたか?」
戦闘中だということも忘れ、竜太は豪火龍を抱きしめていた。豪火龍は黙ってそれに応じる。
「会いたかった…。ありがとうって、言いたかった…」
豪火竜はかすかに頷くと竜太の手に在る自分が贈った剣に触れるとその中へと入り、竜太へ語りかける。
「ありがとうございます、主。けれども今は、冥浄王を殲滅することが先決です」
豪火龍の言葉で現実を見た竜太は服の袖で涙を拭うとそれまでより一段と重みを増した自らの剣、炎斬刀覇凱一閃を握りなおし、なおも苦しみ続けるマリーネに近づいた。
「あふぁ…・あうぅ…い…。殺す。殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すぅ!!!戦力は足らんが構わん!!!」
肩で息をしながら、マリーネは呼び寄せた。
「こい!!!地上殲滅部隊!!!」
次の瞬間には、マリーネの周りには武装した兵士たちが現れていた。その一人一人が明らかな殺意を竜太ひとりに向けていた。
「覚悟しろ。こいつらは一つで一つの大陸を滅ぼせる。それがこの数だ…。まだ増える…まだ増えるぞ。俺の世界…俺のための世界から呼び寄せるこいつらはとどまることを知らない!!!暴れろ!!!俺のための戦力!!!」
マリーネのその声で、地上殲滅部隊は動き出した。
同時に竜太も豪火龍の提案で動き出していた。
「来い!!!竜撃手」
マリーネと動揺に竜太の周りにも竜撃手が集まっていた。
「シャカラキキホロロア!!!」
地上殲滅部隊の相手を竜撃手に任せた竜太はマリーネのすぐそばへと足を進めた。
「お互い、捨て駒は確保しているということか…。ふふふ…。やはりお前が相手となり、私の前に立ちふさがると何一つ退屈をしないよ…。でも、飽きてくるんだよね、戦争にもさ。終わらせるよ」
獄帝の刃と獄帝の御剣をぶつけ、一つに練成すると、そこには新しく一振りの刀が生まれた。
「貴様と対をなす刀の一つ。邪竜魂剣」
獄帝の刃のように漆黒に染められ、輝くそれは姿かたちが竜魂剣と全く同じだった。
違うのはその禍々しさだけであり、それは幾億の血をも吸いこんできた剣だった。
その剣を見た竜太は指を一本立てると宣言した。
「次の一撃で、最大の一撃でお前を斬る。お前は、どうする?」
邪竜魂剣を構えたマリーネは「一撃を放つ前に消し去ってやる…」というとその刀身を頭上へと持ち上げた。
豪火龍は自らの力をすべて剣に流す込んだ。
「終わらせるぞ、マリーネ」
竜太は豪火龍の力で刀身の色を変えた覇凱一閃を握る手により一層力を込めると目の前に迫るマリーネの剣、邪竜魂剣へとその刀身を思い切りぶつけた。
キィィィ…ン…と、金属の音が響いた。
最近思うことは、あれですよ。あれ。
豪火竜の“りゅう”という字は“龍”なのか“竜”だったのかということですね。
あと、自分で書きなぐっていたときに書いていたマリーネさまの持ち物披露…みたいな事を全く覚えていなくてかけないということですね。
まぁ、そんなこともありましたが、ようやく決着です。
次回 第八十一話 終幕