第七十八話 遺言
貫かれたマリーネの剣はほどなくして抜かれ、それと同時に眞幻想は地面に倒れた。地面には赤い液体が流れ落ちる。
「今に死ぬぞ。さぁ、少々待ってやろう。看取ってやれ。彼の最後を…戦争を始めた張本人の死を」
そういったマリーネは剣に付着した眞幻想が生きていた証をさも汚そうに払い落とす。
いつの間にか、体が動いていた。マリーネの顔を全力で殴っていた。これまでびくともしなかったマリーネがふらついた。
「ふざけるな!!!」
竜太は初めて自分が起こっていることに気がついて、それを止めようとした。けれども自分で自分を抑えるということはできそうもなく、ただ感情の流れに身を任せ、こぶしを緩めず叫び続ける。
けれども自分が今何を叫んでいるのかもわからない。
ひょっとしたら自分は今支離滅裂なことを叫び続けているんじゃないかと、思う。
「今になって…やっと気が付いたぞ。竜太。環境破壊など私の幻想だったんだな。神の計画に狂いはなかったのだな」
突然乾いた眞幻想の声が聞こえた。
その声は今まで聞いていた眞幻想の声ではなかった。シャガンの支配からも、解き放たれているようだった。
「眞幻想!!!」
やっと自分を抑えられて眞幻想へと駆け寄り、しゃがみ込む。
「眞幻想!!!」
しゃがみ込んだ時に、眞幻想はゆっくり微笑んで竜太に告げた。
「マリーネもシャガンも変わらない。お前にしかできないことだから…。ガルガンティアや、桐原須藤を倒したお前にしかできないことだから、俺はお前に頼むよ。終わらせてくれ一から十までのすべてを」
こんな時だというのに竜太はその言葉を聞いてボーっとしていた。そして徐々に湧いてくる実感。遺言が告げられるということの実感。重く心にのしかかるということの真意。
竜太は眞幻想の刀を手に取ると、立ち上がった。
「俺は、お前たちを許さないから。俺はお前たちが何言おうとお前たちを倒すって、仲間と約束したんだ」
その手に握られているのは炎斬刀覇凱一閃と眞幻想の剣、非幻想破壊。シャガンの手から取り戻した龍魂の剣と眞幻想の剣、二本の剣の峰をすり合わせて構え、マリーネとシャガンを見る。
「約束、したんだ」
シャガンはいつの間にか構えを解いて笑っている。
「お前は…貧弱なお前は俺と、マリーネの二人を同時に相手してなおかつ勝とうということか…。笑える…。これは笑えるぞ!!!」
シャガンは構えなおすと竜太を指さす。
「解散はなしだ。こんなに生意気なガキは手のひらで遊ばせるに限る」
マリーネは鞘に剣を収めると仁王立ちして、話し始めた。
「三つ巴の最終戦争…というわけか。ならば、再戦と行こうか…」
正三角形になるように並んでいた三人は同時に飛び出すと剣で切りかかった。
そして、三人六本の剣が交わり火花を散らした。
それが最終決戦の開始の合図になった。
と、こんなわけでやっと最終決戦なのですよ…。一応この後はそのほかの切り裂きジャックは出演しないようですよ。最終話まで。
とにかく、この話をうまく丸め込んで終了させられるよう最大限の努力はさせていただきますので、最後の最後までどうぞよろしく!!!
そういえば番外編ですぐかけるとか言ってたシリーズが未完のまま止まっていることにようやく気が付いた和呼之巳夜己でした。