#1 プロローグ的なもの
背丈のわりには少し大きめの制服。まだ何も入っていないスクールバック。
やや緊張しながら、母と中学校の門をくぐる。
僕、相田碧は今日から中学一年生。身長は男子にしては低め。成績は中の上。視力は低く、普段は黒縁眼鏡。毛質はストレート。
春独特の風が首の後ろをくすぐる。そして、空には桜の花びらが舞っている。まわりを見渡すと、自分と同じように大きめの制服に身をつづんだ生徒がいる。
ふと思いついたように母が口を開いた。
「そういえば部活は決めてるの?」
そうだ。母には言ってなかった。
「うん。」
小さく頷く。
僕はあの日からあの部活と決めたんだ。
――――
まだまだ寒さがきつい2月。小学校6年の僕は4月から通うことになる公立中学校の入学説明会に来ていた。長々と学校の特徴やら生活の様子についての説明を受けた後。
まちに待った部活見学の時間。在校生の勧誘の声が体育館内に響き渡る。
僕は説明会中に渡された部活動についてのプリントを見た。
そこには沢山の部活動の写真が載っていた。目をひいたのは、男子テニス部と吹奏楽部。どちらを見に行くか……。
「碧!」
後ろから母の呼ぶ声が聞こえた。確か部活動見学中は保護者は入学についての説明をうけるはず。
「分かってはいると思うけど、文化部にしなさいよ。」
「なんで?」
母は呆れた顔をする。
まわりの子たちは徐々に部活動見学に行っている。僕も早く行きたいんだけど。
「あなたピアニストなのよ!?ピアニストが指なんか怪我したらどうするの!」
母が険しい顔で言う。そうだ。僕は幼い頃からピアノを習っている。実力は全国大会に何度かでる程度。
母は僕を音楽系の職に就かせたいようだ。そのために、名誉ある来年のピアノコンクールに出させたいらしい。まぁ僕もピアノ好きだから良いけど。
「わかった。文化部結構多いから文化部にするよ。」
「そうしなさい」
母は微笑むと、保護者席に戻った。
僕は母が去ったあと、すぐにとある場所に向かった。
運動部がダメならやっぱりここでしょ!
その場所は、特別棟の4階、一番端の音楽室。
4階に向かう階段を登っていると、上の4階から柔らかな音が聞こえてきた。
けして高い、華がある音ではない。けど、心に残る音。
階段を上った先に僕に体の左側のみを向け一人の女子生徒がそこそこ大きな楽器を持って、曲を吹いていた。
楽器の名前は分からない。けれど、吹奏楽の楽器!って感じの楽器。
さらに、その楽器を奏でている先輩と思われる女子生徒。正直かなりの美人。少しクセ毛混じりの2つ結びがゆるく踊っている。
数秒、見とれてしまった。
僕の視線に気づいたのか、先輩は演奏をやめた。横目で僕を見てから、僕の方に体を向けた。
「吹奏楽部の見学ですか?」
その笑顔が可憐で忘れられなかった。
そして、吹奏楽部の見学,合奏を見た。
―――――
あの日以来、僕は先輩の笑顔と奏でる音が忘れられない。
だから僕は吹奏楽部に入ると決めた。
体育館で受付をして、母は体育館内へ、僕は教室に向かうように言われた。 母とは一旦別れた。
一年生の教室にひとりで向かっていた時。
僕は2ヶ月前に見かけた先輩と階段ですれ違った。
先輩は階段を駆け下りていて僕に気づいていなかった。ただ、ほかにも先輩がいて『急がないと入学式の演奏の最終確認ができない!』と話していた。
そっか。吹奏楽部演奏するんだ……。楽しみだ!
そして明日からは部活動仮入部がはじまる。先輩に会える!
はやく先輩の名前や学年を知りたい。できれば1歳上の方が長い時間過ごせるんだけどな……。
そんなことを考えながら僕は新しい教室に入った。
はじめまして、この小説を書いたものです。
今回、皆様の貴重なお時間を使って読んでいただきありがとうございます。
自分は文章力がないので、文法の指摘等ありましたら言ってください。
では、失礼します。
読んでいただき本当にありがとうございます。