雪の中の、小さな小さな御話
これは、雪の降るある村で伝えられている童話。
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あるところに、小さな小さな女の子がいた。その女の子は眼の色は青く、金髪だった。耳がとてもよく聞こえた。目をつむっていれば、何㎞先の音でも聞き分けることができるほど。ちょっと周りの人とは違うけれど、それでも仲良く暮らしてた。
「えいッ!!」
「このぉ、やったなぁ!?」
今日も、いつも通りみんなで笑って、遊んでいた。
あくる日の事だった。その日は、強い吹雪の日だった。
女の子は、かすかに泣き声を聞いた。とても小さくて、一人で泣く声。
「――――行かなきゃ」
洋服を着込んで、女の子は駆け出して行った。
轟々と降る雪を、ゴーグルで防いだ。ゴーグルにびしびしっと雪があたって、見えなくなったら手で拭った。
「ぅぇぇぇぇ…」
「すぐ、近くだ―――」
女の子は走る。やがて、小さな男の子を見つけた。こんなに寒いのに、とても薄い服だった。
「危ないよ!」
女の子は男の子を連れて、洞窟へと入った。洞窟に雪は入って来なかった。タオルで男の子の髪を吹いていく。
「ねぇ、おねぇちゃん、だぁれ?」
男の子は漸く泣き止んで、口を開いた。女の子は「私は、ユキ」と答えた。「君の名前は?」
「僕、マサト」
それから、いつまでもいつまでも二人で喋り続けた。おやつにチョコも食べた。
「えへへ…」
ユキは、頭の中に何かが響くのを感じた。
「おねぇちゃん、嘘をついててごめんね」
それは、あの男の子―――マサトの声だった。
「僕はね、死神」
みると、マサトは真っ黒い服に変わっていた。
「ここに堕ちた死神なんだ」
マサトは、寂しそうに笑った。
「ここで人間と一夜を過ごせば戻れる――だから、おねぇちゃんを利用してた。」
ユキは、ショックだった。それは、マサトが死神だから。ではなく
「ユキ、ありがと」
マサトの体は、消えていく。
「マサト!!行かないで!!」
マサトと別れるのが、嫌だったのだ。
「「バイバイ。また会おうね―――――――」」
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学校に新しく来た子は「マサト」という名前だった。
誰もいないところで、二人は笑った。
「「また、会えたね」」
その時、ユキの体は崩れ落ちた。