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仲間より人権が欲しい

 サカグチは町の入口の前で目を覚ました。その町を外観だけで判断すると、良い言い方をすればさっぱりしていて綺麗な町、逆をいえばまだそれほど発達していないように見えた


「まあ、いかにも最初の町って感じの場所だな。こんなクソ平凡な場所が俺の故郷なんて吐き気をもよおすな」

〈ここは旅人が最初に配置される場所ですからね〉

「いや常識を打ち破ってこその男だろ。出てきていきなりマグマステージの中央から始まっても全然構わん……って、お前いたのか」

〈はい。キュリです。これからも妖精として声で旅をサポートさせていただきます。まだまだ出だしですが、どうかよろしくお願いします〉


 キュリがスッと頭を下げる音が聞こえた。


「足を引っ張るなら帰れバカやろう。こういう自分で未熟者って言う女キャラは失敗しても「テヘッ(ハート)」って言ったら許してもらえると思ってるから腹が立つ。しかも、あながち間違ってないのが更に腹が立つ」

〈テヘッ〉

「…………。てか、俺はどうしたら良いの?」

〈そうですね。まずは入口の少し先に立っている女の人に話を聞いてみてはいかがですか?〉

「ああ、あのザ・モブって感じの女か。了解」


 サカグチは一点に立っていてずっと笑顔な女性に話しかけた。すると、その人は表情を変えずに慣れているかのように対応した


「こんにちは旅人さん。そしてようこそ『はじめの町』へ。ここは初心者の旅人さんが集まる場所でして……」

「うわー、俺こういう会話は軒並みスキップしてたな。めんどくせえ」

「あのね、旅人さん」


 その女性は表情を変えずに言った。


「私もお前みたいなフンドシ一丁のクソ気持ち悪いオッサンと会話なんてしたくないのです。ですが仕事で仕方ないので、出来れば黙って話を聞いて早めに終わらしたいのですが」

「えっと……、すいません」


 そしてサカグチは自分の姿を見た。アバターのままの格好に初期装備のこん棒であった。


「やべえ完全に忘れてたわ……。まあ、話を続けてくれ」

「はい。ここでは主に初心者の旅人が集まる場所です。まあ、中には旅を諦めて町人になった人もいますけどね。小さいながらレジャー施設や買い物をする場所など生活するものが完備されているので、住むに困ることも無いですし」

「脱サラか」

「まあ、そんなものですね。というわけである程度この町について説明させてもらいましたが、もっと細かく説明いたしましょうか?」


 そう言われると、サカグチは少しゲスイ顔をして言った。


「いや、自分で見て回るわ。それより見て欲しい物があるんだが」

「はい、なんでしょう?」


 サカグチは女の前に立ち、横を向いた


「いくぞ! 必殺ッ!」


 前ダッシュと後ろキャンセルを凄まじい速さで繰り返した。そうすると、残像と重なってビクビクと

腰を振っているように見える


「どうだ、この既存のゲームには絶対に無い動き! フンドシの男を舐めんじゃねえぞ! フンッフンッフンッ!」

「…………。」


 この行動を、3分間続けた


「ふう、今日はこの程度で許してやろう」


 サカグチはどや顔でその場を立ち去ってからもう一度女の方を見た。すると後ろを向いて嘔吐えずいていた。


「よし、勝ったな」

〈何に?〉

「男には、負けられない戦いがある」

〈だから何に?〉


 サカグチは町の中へ入って、色々な店をざっと見て回った


「てか、人が多いし物品は本当に何でも揃ってるな。製作者が最初はここを拠点にしろと言わんばかりだな」

〈するどいですね。確かにここである程度戦力を整えてから旅をするのが普通ですね〉

「なるほど。それじゃあこの町で一番人が集まる場所ってどこだ?」

〈広場です。仲間や情報を探したりする交流場所になっていますからね〉

「まあてきとうに2、3人仲間を掻っかっさらうか」


 そして広場へと向かう途中、サカグチは気になっている事を聞いた。


「なあキュリ、実は一個悩んでる事があるんだけど」

〈…………え? は、はい、なんでしょう?〉

「ん? どうした? 女の子の日か?」

〈違います! 妖精はそういうのはありません。排泄等も無いです〉

「昭和のアイドルかよ」


 キュリは少し照れた声で答えた。


〈ただ……、その、サカグチさんが初めて私の名前を呼んでくれたので驚いただけです。今日は記念日ですね〉

「女の子特有の何でも記念日にしてしまうクセやめろ。じゃなくて、俺が聞きたいのは、これから仲間を作って行く上での事なんだけど、まあ選り好みをする訳じゃないが、ネットと現実の性別が違ってる奴だけは嫌なわけよ」

〈女の子のキャラで多いって聞きますね〉

「いや相手の性別自体はどっちでも良いんだ。ただ合ってさえいればな。だから、相手の性別が分かる機能とか無いか?」

〈出来ますよ。妖精ポイントを使うことになりますが〉

「オッケー、ならやれ」

〈即答ですか……、まあとりあえず妖精ポイントの説明をしますが、これは戦闘等でマスターであるサカグチさんが成長する度に上がっていきます。今の私はアナウンスしか出来ませんが、このポイントを使って特技を手に入れれば、攻撃や補助的な魔法も使えるようになります〉

「よし、やれ」

〈…………、了解しました〉


 サカグチは、特技『ネカマスコープ』を習得した。


 広場には既に人で溢れかえっていた。その中でとりあえず、目の前にいる3人の女パーティに声をかけた。


「あのさあ、いま仲間探してるんだけど」

「ああ、私たちも……、って、え? キャー、化け物ーーーーー!」


 全員が悲鳴を上げながら走り去って行った


「……、眼帯の角度が悪かったかな? まあ、女はもういい。男だよ男。結局男でレベルを上げて物理で殴ってごり押しするのが一番強いんだよ!」


 次に、ガタイの良い男2人組みに声をかけた。


「おい、俺と一緒に力でこの世を支配しようぜ。俺たちが活躍して歴史の偉人の覧にマッチョばかり載せて、未来の女どもを泣かせてやろうぜ」

「わー、化け物ーー!」


 そして、誰もいなくなった。


「…………、ちょっと金のきゅうが左によってたかな……。よいしょっと。まあいい! 男とはな、男とはなあ! 一人で生きてこその美学、いや、男一匹で生きてこその男道だろ!」

〈匹って獣か何か?〉

「っていうわけで、仲間探しまーす」

〈賢明ね〉


 しかし、その後も仲間が増えることは無かった。


「いやまあ、ありと言えば全然ありな展開だな。むしろ良かったと言える。所詮最初の町でウロウロしてるような連中なんかどうでもいいわ。AV女優のブログぐらいどうでもいいわ」

〈頑張って3時間も粘ったのにね〉

「まあ今一番欲しいのは仲間ではなく、アイテムだな。序盤の薬草とかはかなり貴重な戦力になるしな。とりあえずアイテム屋に行くか」


 そして露店になっているアイテム屋の前に行った。


「おい、薬草をたくさん出してくれる?」

「いらっしゃいませーって、キャーー! 変態!! 変態変態!!!!」


 そして、また誰もいなくなった。


「…………、何がヤバいってさあ、若干煽られる事に快感が出てきたというのがな。これを人が成長するっていうことなのかな」

〈違うと思う〉

「まあ、次だ。アイテムなんかその辺の雑魚モンスターを殺して手に入れれば良い。それより防具だよ防具。HPが少なかったり回復手段の乏しい序盤では、いかにダメージを食らわないかが重要になる。よって防具だろ、うん」

〈うん〉


 そして防具屋まで足を運んだ。


「わーー、化け物ーーーー!」

「せめて話をしようよ名も無き商人君!」


 二度ある事は三度ある事は何度でもある。


「……もう人権が欲しいわ。装備アイテム云々関係なく、人である事の権利が欲しいわ」

〈保健所だったかしら?〉

「それ犬! まあ、今までは言い方が悪かった。平民を相手に普通に事を進めようと思ったのがそもそもの間違いだ。いきなりバッと押しかけて、ワッっと驚いてる所にサッとかいものを済ませる。もうこれしかねえ!」

〈なんか、だんだん魔物と同じ思考になってきましたね……〉


 キュリはサカグチが心配になってきた。


 歩きで武器屋のドアの前まで到着した。そしてクラウチングスタートの構えを取り、ダッシュでドアを突き破った。


━━━バーーーン


「ダイナミック入店成功!」

「…………、い、いらっしゃいませ……」

 武器屋の商人は完全に目を見開きながら驚いた

「いや、お前は良い商人だな。みんな俺を見たら一目散に逃げ回ってたからな」

「私は逃げるよりも、この剣で退治しようかと思いましたが……」

「いや、その気概や良し。さすが武器商人と言ったところだな。そこに痺れる憧れる」

〈もうヤケクソですね……〉

「うっせえ。それはそうと武器商人、今の俺の手持ちで買えるのって何か無いか?」

「はあ、いくらお持ちで」

「100ゴールドだけど」

「100では何も買えないですね。一応10ゴールドでこん棒は買えますが、既にお持ちになっていますしね」

「このこん棒10ゴールドだったのか。うまい棒を振り回してるようなもんか……。」


 商人は少し困りながらも、こう提案した


「とりあえず、少し旅を進めてからまた買いに来たら良いですよ。そんなに高価なものは置いてないのですしね」

「いや、そうはいかねえんだ。わけあって一人旅になっちまってな。とりあえず何でも良いから欲しいんだが」

「何でも、ですか?なら一応あるにはあるんですが……、いかんせん使えないと申しますか……」

「おう、あるんならそれで良いよ。使えるか使えないかは実際俺が使ってから考えるわ」

「それじゃあ、どうぞ……」

 商人は恐る恐る物を出した。


 サカグチはカメラを手に入れた。


「…………。」

「…………。」

〈…………。〉


 カメラを首からかけ、装備?した。


「…………。」

「…………。」

〈…………。〉


 とりあえず、騒然とした空気に満ち溢れている店を出た。


「ってか、思いっきり悪化してるじゃねえか! もうこれ、普通に外観を撮ってるだけでもアウトになりそうな雰囲気だよね! 俺はやってないって言っても「存在がアウト。」で片付けられるレベルだよね!」

〈うーん……、えーっと……、うん〉

「悩んだ挙句に同意してんじゃねえよボケが。まあいい。とりあえず装備も終わったし魔物ぶっ殺しに行くぞコラ!」

〈お、おー〉


 やる気(殺る気)に満ち溢れている声を出すサカグチに対し、キュリは生返事で返した

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