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坊主

作者: 米鐘 数奇
掲載日:2026/09/12

「ねえねえ、二人ってさあどんなのが好みなの?」

「好み?」

「うん、男の子の好み」

「キョーミない」

「ええ、釣れないなぁ。じゃあそっちは?」

「なんでウチに振るんだよ。別に、ウチもそんなに……。って、そういうお前はどうなんだよ」

「アタシ? アタシはねー、うーんと、あっそうそう、坊主が好き」

「BOSE? イヤホンの?」

「そっちじゃなくて、ぼ、う、ず。坊主頭の方よ」

「坊主? ええ、本気?」

「不思議な趣味」

「二人とも酷いなぁ。いいじゃん、坊主。可愛くてさ」

「だってイモっぽいじゃん。シルエットがまさしく芋って感じで」

「ちっちっちっ、わかってない、わかってないなあ。そこが可愛いんじゃん。丸っこくて、コロコロしてて」

「そうかなあ」

「それに触り心地も良いよ。なんかこう、ジョリっとしてて」

「その擬音から手触りの良さに繋がらねぇんだけど」

「いやいや、気持ちいいんだって。弟の坊主頭を撫でているとなんかこう、癒されるなあって気持ちになるもん!」

「なんか分かる気がする」

「お前まで何言ってやがる⁈」

「短くツンツンとした毛を撫でる、ちょっとくすぐったい感覚は面白い」

「でしょでしょ」

「わかんねぇ、ぜんぜんわかんねぇよ、ウチには」

「あっ、そうだ。明日クラスの坊主の子に頭触らせて貰えば良いんじゃない?」

「名案」

「名案じゃねぇよ。第一ウチのクラス、坊主いねぇだろ」

「ああ、そういえば確かに」

「野球部の髪もふっさふさ」

「いやどこの野球部も五輪狩りしてるわけじゃねぇだろ。とにかく、この話は無しだ」

「ええ、残念だなぁ。坊主の良さ、わかって欲しいのに」

「無念」

「お前はなんでそっち側にいるんだよ。ほら、ウチらは明日の小テストの勉強に来ているんだ、教科書広げるぞ」

「「ぶーぶー」」

「ほら、早くドリンクとポテト真ん中に寄せろっての」

「「はーい」」

 

 *

 

「なあ、あれどーすんだよ?」

「あれって?」

「なんかあった?」

「なんかあった? じゃねーんだよ、なんでクラスの男子の頭が全部坊主になってんのに誰も触れねーんだよ」

「あれま」

「そうだっけ?」

「そうだっけじゃねーだろ、あの普段仏頂面の鬼担任ですら、出席取る時笑い堪えてたぞ。あんな声が震えてるとこ見たことねーよ!」

「まあまあ」

「なぜか男子がみんな坊主にしたくなる時もあるよ、うんうん」

「いやいや、あれ絶対ウチらのせいだろ」

「「え?」」

「惚けんなよ、だって男子たちウチらの方見ながらしきりに『うーん、コレは最高の仕上がりダァ』って髪をジョリジョリ触りながらアピールしてくるんだぞ! どうすりゃいいんだよあれ!」

「いやいや、たまたまだって。ねぇ」

「きっと私たちの後ろの席を見ていた、はず」

「悪いけどウチら、最後列なんだわ。後ろ突き抜けたらロッカーなんだわ」

「ならロッカーに置いてある鏡を見ていた」

「そう、それ」

「それじゃねーよ! なんで女子のグループ跨いで後ろの鏡見ながらアピールしてんだよ、そっちの方が恐ろしいだろ!」

「男の子には、そういう日もある」

「うんうん、あるあるだよねー」

「ねーんだわ。そんな日、絶対ねーんだわ。どーすんだよこの状況、コレからずっと男子が坊主触ってくれアピールしてくるのに耐えなきゃいけないのかよ」

「触ればいい」

「んなわけにはいかねーだろ。みんながみんなアピールしてくるんだから、一人だけとか絶対喧嘩になるぜ」

「じゃあ全員並んでもらって触れば良いんじゃない?」

「なんの儀式だよ! 私の手が坊主頭を撫でても頭が良くはならねーんだよ、こんなんで坊主にする奴らの頭は救えねーよ!」

「学年一位の頭脳にあやからなきゃ」

「なんまんだぶなんまんだぶ」

「だからやめろっての。まったく、どーすっかね、明日から」

「まあしばらくしたら治まるでしょ」

「そう、気にしすぎ」

「気にしすぎなもんかねぇ」

「大丈夫、大丈夫」

「はあ、憂鬱だ……」

 

 *

 

「なあ、お二人さん?」

「なに?」

「なんでしょ?」

「確かにさぁ、坊主騒ぎは治まったよ。ありがとう」

「どういたしまして」

「照れる」

「けどな」

「「?」」

「今度は全員アフロになってんのはどういうことなんだよ〜〜〜〜⁈」

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