坊主
「ねえねえ、二人ってさあどんなのが好みなの?」
「好み?」
「うん、男の子の好み」
「キョーミない」
「ええ、釣れないなぁ。じゃあそっちは?」
「なんでウチに振るんだよ。別に、ウチもそんなに……。って、そういうお前はどうなんだよ」
「アタシ? アタシはねー、うーんと、あっそうそう、坊主が好き」
「BOSE? イヤホンの?」
「そっちじゃなくて、ぼ、う、ず。坊主頭の方よ」
「坊主? ええ、本気?」
「不思議な趣味」
「二人とも酷いなぁ。いいじゃん、坊主。可愛くてさ」
「だってイモっぽいじゃん。シルエットがまさしく芋って感じで」
「ちっちっちっ、わかってない、わかってないなあ。そこが可愛いんじゃん。丸っこくて、コロコロしてて」
「そうかなあ」
「それに触り心地も良いよ。なんかこう、ジョリっとしてて」
「その擬音から手触りの良さに繋がらねぇんだけど」
「いやいや、気持ちいいんだって。弟の坊主頭を撫でているとなんかこう、癒されるなあって気持ちになるもん!」
「なんか分かる気がする」
「お前まで何言ってやがる⁈」
「短くツンツンとした毛を撫でる、ちょっとくすぐったい感覚は面白い」
「でしょでしょ」
「わかんねぇ、ぜんぜんわかんねぇよ、ウチには」
「あっ、そうだ。明日クラスの坊主の子に頭触らせて貰えば良いんじゃない?」
「名案」
「名案じゃねぇよ。第一ウチのクラス、坊主いねぇだろ」
「ああ、そういえば確かに」
「野球部の髪もふっさふさ」
「いやどこの野球部も五輪狩りしてるわけじゃねぇだろ。とにかく、この話は無しだ」
「ええ、残念だなぁ。坊主の良さ、わかって欲しいのに」
「無念」
「お前はなんでそっち側にいるんだよ。ほら、ウチらは明日の小テストの勉強に来ているんだ、教科書広げるぞ」
「「ぶーぶー」」
「ほら、早くドリンクとポテト真ん中に寄せろっての」
「「はーい」」
*
「なあ、あれどーすんだよ?」
「あれって?」
「なんかあった?」
「なんかあった? じゃねーんだよ、なんでクラスの男子の頭が全部坊主になってんのに誰も触れねーんだよ」
「あれま」
「そうだっけ?」
「そうだっけじゃねーだろ、あの普段仏頂面の鬼担任ですら、出席取る時笑い堪えてたぞ。あんな声が震えてるとこ見たことねーよ!」
「まあまあ」
「なぜか男子がみんな坊主にしたくなる時もあるよ、うんうん」
「いやいや、あれ絶対ウチらのせいだろ」
「「え?」」
「惚けんなよ、だって男子たちウチらの方見ながらしきりに『うーん、コレは最高の仕上がりダァ』って髪をジョリジョリ触りながらアピールしてくるんだぞ! どうすりゃいいんだよあれ!」
「いやいや、たまたまだって。ねぇ」
「きっと私たちの後ろの席を見ていた、はず」
「悪いけどウチら、最後列なんだわ。後ろ突き抜けたらロッカーなんだわ」
「ならロッカーに置いてある鏡を見ていた」
「そう、それ」
「それじゃねーよ! なんで女子のグループ跨いで後ろの鏡見ながらアピールしてんだよ、そっちの方が恐ろしいだろ!」
「男の子には、そういう日もある」
「うんうん、あるあるだよねー」
「ねーんだわ。そんな日、絶対ねーんだわ。どーすんだよこの状況、コレからずっと男子が坊主触ってくれアピールしてくるのに耐えなきゃいけないのかよ」
「触ればいい」
「んなわけにはいかねーだろ。みんながみんなアピールしてくるんだから、一人だけとか絶対喧嘩になるぜ」
「じゃあ全員並んでもらって触れば良いんじゃない?」
「なんの儀式だよ! 私の手が坊主頭を撫でても頭が良くはならねーんだよ、こんなんで坊主にする奴らの頭は救えねーよ!」
「学年一位の頭脳にあやからなきゃ」
「なんまんだぶなんまんだぶ」
「だからやめろっての。まったく、どーすっかね、明日から」
「まあしばらくしたら治まるでしょ」
「そう、気にしすぎ」
「気にしすぎなもんかねぇ」
「大丈夫、大丈夫」
「はあ、憂鬱だ……」
*
「なあ、お二人さん?」
「なに?」
「なんでしょ?」
「確かにさぁ、坊主騒ぎは治まったよ。ありがとう」
「どういたしまして」
「照れる」
「けどな」
「「?」」
「今度は全員アフロになってんのはどういうことなんだよ〜〜〜〜⁈」




