イレギュラー撮ったら破滅した
この世界には何年も前からダンジョンがある。色々な問題を乗り越えて一般人でも冒険者になれるようになったのだ。
あ、自己紹介が遅れたわね。私は『皿舌凛』。成人超えてる女よ。
そんな私は配信者。実は配信者はなる為の手続きが厳しい。私はそれを勝ち取ったから配信者になれた。
今はギルドから支給された配信ドローンで配信しているのだ。便利な事に配信ドローンは私の声で操作できる配信のオンオフも簡単に出来るのだ。
しかも録画への切り替えや任意の人にモザイクも即座につけられる。便利な物だ。
しかもダンジョンを攻略する冒険者も兼業して居る。これでも私はちょっと強い。
顔もスタイルも良いし、私には登録者も多い。
ここまで来るのに苦労した分、今の配信者と冒険者の稼ぎで社会に出ずに生きられる。正直言って人生楽勝だった。ついこの前までは…。
それは1週間前の話だった。
私はいつも通りダンジョンで配信しながら探索して居ると、普通ならその階層にいないモンスターが現れた。
『イレギュラー』だ。
私は抵抗した。視聴者からの応援も受けた。
だが現実は非常だった。武器は折れ、私の心も折れかけた。死を覚悟した。
そんな私を助けに来てくれた人がいた。彼は私が殺されそうになった所を救ってくれた。
更には武器もない私を護衛してくれた。
そしてダンジョンから出て彼と別れた。
イレギュラーに遭遇した時からずっと配信を続けていたのでそのままの枠で今日の振り返り雑談を始めた。
そして次の日私は突然近くのギルドに来る様にと呼ばれた。ついでにドローンも持ってくるようにも言われたのでドローンも持ってきている。
もしかして案件なのかな?それなら昨日壊れた武器を新しく買って…いや、もしかしたら武器の案件かも。そうだったら買う事なく武器が貰えちゃうわ、そうだったら良い流れね。
そんな事を考えているとギルドに着く。そして私はギルドの奥の部屋…つまりギルドマスターの部屋に通された。
ギルドマスターの部屋にはこのギルドのマスターの他にスーツ姿の人が何人も居た。…何人かはビジネスマンというより黒服みたいなな感じだ。
なんか…案件の話にしてはなんか人数多くない…?
ギルマス「来たか、皿舌凛…本日をもってお前の冒険者ライセンスを永久失効にする。
それに伴い、お前に渡した配信ドローンも没収だ。
ちなみにだが、これはギルド本部からの正式な決定だ。お前に拒否権は無い。」
え…え?なんで?何でいきなりそんな事になるの?
ギ本「ここからは私が説明します。私はギルド本部の職員の伊飯容惨です。名前は覚えなくて結構。
率直に言います。今回貴女は昨日、私達ギルドが定めた規約を破りました。
如何なる理由があろうともその規約を、破った事には変わりないです。
…まさか、配信手続きをする為に覚えた規約を忘れた訳では無いですよね。」
規約?…あ、そうだった…。
規約の1つに『一般人を映す時はモザイクが必要。許可なくモザイクなしで晒してはいけない。』って言うのがあった。
ギ本「それです。貴方は一般人(『配信をしていない冒険者』も『一般人』にカテゴリされる。)を晒した。
貴女も知っているでしょう?貴女の使ってるドローンには一般人のプライバシーを守る為のモザイク機能がある事を。何故彼にモザイクをつけなかったのですか?」
そ、それは突然のイレギュラーだったから…。わ、忘れてて…。
ギ本「忘れてた?それ、規約を破って良い理由になりませんよね。
貴女以外にも配信者が居ますが、他の人はイレギュラーに遭遇しても一般人にモザイクかけてましたよ。」
うっ、何も言い返せない…。
ギ本「それに貴女、今回の事態軽く考えてますよね。
貴女を助けた彼、顔も装備も力も貴女に晒された事で大変な事になってます。」
ギルド本部の職員がパソコンを操作して私に画面を見せてくる。
それはとあるsnsサイトであり、昨日の私の配信の1場面が画像として切り抜かれている。
その画像には昨日助けてくれた彼が映っていた。
その画像に対する文章には、
『浦芽寺 16歳 ○○高校の一年生
所持武器 **会社の〈切れ味エンチャント効果付きの鉄の剣〉
この戦闘の使用スキル〈ファイアボール〉、〈身体能力強化〉、〈弱点見極め〉』
更にはダンジョン外のオフの姿を盗撮されてる写真も沢山投稿されている。
学校での写真、ギルドで受付と話してる写真、駅前でアイス食べてる写真、果てには家に入る写真まで。
ギ本「コレやったの全員、貴女のファンです。」
その言葉に私は彼を特定したアカウントを見る。どのアカウントも私の配信に来ているファンだった。
私は腰が抜けた。私が知らない所で私を助けてくれた恩人が、私のファンに何もかもを晒されている。
ギ本「これで分かりましたか?今回の件で貴女を野放しに出来ないのですよ。
ここまで大きな問題になってしまった上で貴女を許すとね、貴女を模倣する愉快犯とその被害者が増えるんですよ。
だから貴女の配信者と冒険者生活はここで終わりです。貴女は2度と冒険者には関われません。」
その言葉に呆然としていると、後ろにいた黒服みたいな男達が、動き出す。
私が持っていた冒険者ライセンスとドローンが無理矢理奪われる。
ギ本「コレで貴女は冒険者でも配信者でも無くなりました。お疲れ様でした。
もしかしたら、貴女に晒された彼の保護者が貴女を訴えるかもしれないので、それまでに無駄遣いは控えた方が良いですよ。」
そう言い残して、ギルド本部の職員と黒服達はギルドマスターの部屋から退室した。
突然仕事を失った私は無気力のまま家に帰った。
そして「明日からのお金を稼ぐ仕事に就けるか分からずに病む日々」と、「私のファンが晒した彼に訴えられる事に怯える日々」が始まろうとしていた。




