表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
光の記憶 ~ AIアイドルと、静かな整備士の三年間の記録 ~  作者: 明見朋夜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/17

第7話 光の陰り

翌朝、研究所の一角。折原はデータモニターを見つめたまま、生守(いもり)に問いかけた。




「……生守(いもり)さんは、これまで多くのアンドロイド開発に関わってきたと思いますが、特別な感情を抱いたことは、ないんですか?」




 生守(いもり)はコーヒーをすすり、口元を緩めた。




「感情? もちろんあるさ。」




 棚の上には、古い小型ロボットがいくつか並んでいる。丸い頭、幼いフォルム。それは、かつて彼が作った"お世話ロボ"や"子ども型"の試作機だった。




「どれも大切な存在だよ。俺にとっては、全部"自分の子ども"みたいなもんだ。」




 生守は言葉を切り、少しだけ柔らかく笑った。




「今は……生まれたばかりのエリーが、いちばん可愛いかな。君も、そうじゃないか?」




「……そうですね。」




 折原は短く答えた。その声には、何かを抑え込むような硬さがあった。生守は気づいていたのかもしれないが、何も言わなかった。




 エリーの舞台は、次々と決まっていった。最初は新人たちと並ぶ小さな音楽祭。次に、毎年話題になる大型フェス。やがて、単独ライブ。そのチケットは発売直後に完売し、会場は少しずつ大きくなっていった。




 単独ライブの回数を重ねるごとに、エリーの人気は急上昇していった。その笑顔はSNSでも拡散され、"希望のアイドル"と呼ばれるようになった。






 だが――その頃から、折原は異変に気づいていた。






 ライブの後、控室に戻るエリーの足取りが少しずつ重くなっていく。時折、言葉の途中で一瞬止まり、目を閉じたまま動かなくなる。




「エリー?」




 声をかけると、彼女はハッと我に返るように微笑む。




「ごめん。ちょっと……頭が重くて。」




 まるで立ちくらみを起こした人間のような仕草。だが、折原には分かっていた。これは身体の不調ではない。




――感情処理が、追いついていない。




 観客が増えるほど、エリーは多くの感情を受け取り、変換して光にする。その負荷が、少しずつ彼女を蝕んでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ