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光の記憶 ~ AIアイドルと、静かな整備士の三年間の記録 ~  作者: 明見朋夜


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第5話 光を望む声

「えー! 十万人でお披露目ライブって言ってたじゃん!」




 エリーの声が、部屋中に響いた。




 テーブルの上のスマホには、運営チームからのメッセージ。


"ファンの反響が予想を超えたため、お披露目は延期"とある。




「ねぇ、ひどくない? せっかく準備してたのに!」




 エリーの頬が膨らむ。




「反響が良いからこそですよ。」




 折原が静かに答える。




 運営チームのフォローが入る。


『その代わり、2曲目の発表とファンに向けたトーク動画を撮りましょう。』




 エリーの膨らんだ頬が、少しだけ小さくなった。




「……トーク動画って、喋るだけじゃん。」




「君の声を、みんなが待っているんですよ。」




「……うまいこと言って、だましてるでしょ。」




「だますようなことはしませんよ。」




「しかたないなぁ」




 エリーがいたずらっぽく笑った。






 


 一週間後。




 エリーの自室で拡散していたSNSでライブ配信をした。




 彼女の部屋は折原と同じ間取り。




 同じ部屋なのに明るく感じるのはカーテンやソファ、小物が明るい色で配色されているからだろう。




 折原以外の何名かの専門スタッフが来て、ライトを設置したり、メイクをしたり、衣装を合わせたり折原には理解不能な作業が行われていた。




 既存のフォロワーだけでなく、初見のファンも取り込んだ。彼らはエリーの人間らしい喜怒哀楽、特にポジティブな感情に新鮮さを感じているようだった。




 画面の前で、エリーが言う。




『フォロワー50万になったら皆んなの前で歌えるって!だから応援よろしくね!』




その言葉にコメント欄が一斉に沸いた。






“もうすぐじゃん!”






“早く会いたい!”






“エリー最高!”






 エリーはその声を読むたび、少しだけ照れて笑った。






 エリーの無垢な呼びかけに反応するようにライブ配信が終わった後もフォロワーは


急激に伸びていった。




 彼女の人気が伸びれば伸びるほど、折原は奇妙な感覚を覚えていた。




 それは誇らしさではなく――焦燥に近い。




――君の笑顔が、誰かのものになっていく。




 そう考えた瞬間、折原は首を振り、その感情を否定した。




――そんなことを考える資格はない。




 折原は、部屋の隅でエリーをただ見つめていた。

最後まで読んでくださり、ありがとうございます。


もしこの物語を気に入っていただけたなら、

世界のはじまりを描いた神話にも、少しだけ触れてみてください。


本作は、拙作「二つの月の神話」の設定をもとに紡いでいます。

誕生を司る金の月の女神エリノッティ

そして終わりを司る銀の月のツェルバ


ふたりの物語は、

この世界の“祈り”と“終わり”の原型でもあります。


全5話、2,659文字の短い神話です。

物語の余韻のまま、静かに読める長さになっていますので、

よろしければぜひ、あわせてお楽しみください。

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