第24話 「愛していました」
エリーは目を閉じたままつぶやくように歌っていた。
~死は悲しみではなく、安らぎと癒しの時~
~時の巡りの中、いつか再会するだろう…愛しい者へ~
アージェルはエリーの手を握った。
「君は最後まで歌うんですね…」
折原とエリーの手には雨のような涙のしずくが落ちていた。
生守の手によりエリーの主電源が切られた。
折原は立ち上がりエリーの胸元が開ける。前回同様、焦げたような匂いが広がった。
この匂いで、折原は我に返った。
胸元の中枢部は、以前より黒くなっていた。
生守がニッパーを手に取る。
「…生守さん。僕が!」
慌てたように折原は生守の名を読んだ。
生守は、ニッパーを折原に差し出した。
折原は、震える手でニッパーを受け取る。自分の役目のように感じていた。
――僕が、君の終わりを与える。
エリーの言葉が、心の中で響いた。
「アージェルの事、忘れない。忘れないから。だから泣かないで」
折原は、中枢部付近のコードに刃を当てた。
手が震える。
折原の視界には黒い金属のかたまりとコードのみ。
生命を感じさせるものは何もない…。
そのはずだが…
少しの沈黙の後、コードを切る。
エリーの胸元の光が、静かに消えた。
手のひらより小さい、エリーの核の部分。エリーの心臓ともいえる箇所。
それは、手のひらに収まるほど小さかった。黒く焼けて、もう光を放つことはない。
でも、確かに温かかった。
折原は、その小さな心臓部を両手で包み、泣き崩れた。
「愛していました。……僕のエリノッティ」
生守は、折原が落ち着くまで声をかけることはなかった。
折原はしばらく泣き続けていた。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
もしこの物語を気に入っていただけたなら、
世界のはじまりを描いた神話にも、少しだけ触れてみてください。
本作は、拙作「二つの月の神話」の設定をもとに紡いでいます。
誕生を司る金の月の女神、
そして終わりを司る銀の月の神。
ふたりの物語は、
この世界の“祈り”と“終わり”の原型でもあります。
全5話、2,659文字の短い神話です。
物語の余韻のまま、静かに読める長さになっていますので、
よろしければぜひ、あわせてお楽しみください。




