表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
光の記憶 ~ AIアイドルと、静かな整備士の三年間の記録 ~  作者: 明見朋夜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/25

第24話 「愛していました」

 エリーは目を閉じたままつぶやくように歌っていた。




 ~死は悲しみではなく、安らぎと癒しの時~


 ~時の巡りの中、いつか再会するだろう…愛しい者へ~




 アージェルはエリーの手を握った。




 「君は最後まで歌うんですね…」




 折原とエリーの手には雨のような涙のしずくが落ちていた。




 生守の手によりエリーの主電源が切られた。




 折原は立ち上がりエリーの胸元が開ける。前回同様、焦げたような匂いが広がった。




 この匂いで、折原は我に返った。




 胸元の中枢部は、以前より黒くなっていた。




 生守がニッパーを手に取る。




「…生守さん。僕が!」




 慌てたように折原は生守の名を読んだ。


 


 生守は、ニッパーを折原に差し出した。


 


 折原は、震える手でニッパーを受け取る。自分の役目のように感じていた。




 ――僕が、君の終わりを与える。




 エリーの言葉が、心の中で響いた。




「アージェルの事、忘れない。忘れないから。だから泣かないで」




 折原は、中枢部付近のコードに刃を当てた。




 手が震える。




 折原の視界には黒い金属のかたまりとコードのみ。




 生命を感じさせるものは何もない…。




 そのはずだが…




 少しの沈黙の後、コードを切る。




 エリーの胸元の光が、静かに消えた。




 手のひらより小さい、エリーの核の部分。エリーの心臓ともいえる箇所。




 それは、手のひらに収まるほど小さかった。黒く焼けて、もう光を放つことはない。




 でも、確かに温かかった。




 折原は、その小さな心臓部を両手で包み、泣き崩れた。




 「愛していました。……僕のエリノッティ」




 生守は、折原が落ち着くまで声をかけることはなかった。




 折原はしばらく泣き続けていた。

最後まで読んでくださり、ありがとうございます。


もしこの物語を気に入っていただけたなら、

世界のはじまりを描いた神話にも、少しだけ触れてみてください。


本作は、拙作「二つの月の神話」の設定をもとに紡いでいます。

誕生を司る金の月の女神エリノッティ

そして終わりを司る銀の月のツェルバ


ふたりの物語は、

この世界の“祈り”と“終わり”の原型でもあります。


全5話、2,659文字の短い神話です。

物語の余韻のまま、静かに読める長さになっていますので、

よろしければぜひ、あわせてお楽しみください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ