第20話 倒れた歌姫
エリーの負担を軽くするために、2回小休憩を入れた。1回目は、デビューからのヒストリー映像を短く流した。2回目は、発売したばかりの写真集の映像やオフショットを流した。
2回目の休憩時、エリーはフラフラになっていた。
「エリーさん大丈夫ですか!?」
スタッフが、エリーの異変に気づきかけよった。
「マネージャーのところに連れてってほしい……」
身体に力が入らないようで、スタッフにもたれかかっていた。
「エリー!」
――会場の規模が大きすぎたか。
スタッフからエリーを預かり、控室に入った。誰も入れないように、鍵をかける。
エリーをソファに寝かせて、生守から預かった装置を両手に繋げた。
少しづつエリーの呼吸が整いはじめた。
「……アージェルありがとう。もう大丈夫そう」
控室の戸がノックされる。
「エリーさん大丈夫ですか?着替えられそうです?」
「はい!大丈夫です」
エリーのいつも通りの声。
折原は、両手のコードをはずし機械を隠すように部屋の隅においた。外見はシルバーの小さなスーツケースだ。
今度は折原が部屋をでて、衣装担当のスタッフを中にいれた。
数分でエリーが部屋から出てきた。
ホワイトシルバーのミニドレス。ティアラもつけていた。
エリーは微笑み、スタッフにせかされるようにステージに向かった。
ライブが終了する数十分、折原はステージの袖からずっとエリーを観察していた。エリーが突然倒れることも想定内だったからだ。
この残り数十分が、折原のなかでは長い時間に感じた。
最後のトークと残り2曲を歌いあげ、エリーはステージ袖にもどってきた。折原はエリーを支えるように抱きかかえた。
さっきより、その足取りは確かだった。
ステージからはアンコールの声援が送られている。
「わたし、歌えるよ」
エリーの強いまなざしが折原を射抜く。ステージに立つときに見せる彼女の表情だ。
彼女の強い意志を感じ、折原は彼女からそっと手をはなした。
「わかりました。」
水を飲み、呼吸を整える。
メイク担当が簡単に汗をふき、髪も整えた。
「いってきます。」
彼女の笑顔は常にまぶしかったが、ステージで見せる笑顔が一番輝いていた。
折原は小さくうなずき彼女を送り出した。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
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世界のはじまりを描いた神話にも、少しだけ触れてみてください。
本作は、拙作「二つの月の神話」の設定をもとに紡いでいます。
誕生を司る金の月の女神、
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ふたりの物語は、
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全5話、2,659文字の短い神話です。
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