第16話 忙しい日々
その後、折原が言っていた予定が消化されていった。歌番組はライブと違って歌うのは1曲だけなのと観客数も少なく大きな負担はなかった。
新人歌手たちが、エリーを真似た衣装で歌っている。
「エリーさんの影響ですね」
スタッフがそう言った。
エリーは嬉しそうに笑った。でも、折原は複雑だった。
――エリーの軌跡がこうやって残っていくのか。嬉しくないのは何故か……。
バラエティー番組では、エリーの笑い声が常に響いていた。彼女はどこにいても変わらない。
エリーはこの2つの番組の収録で「引退」の話題を出した。日常会話の延長でこの話題をポロっと出すエリーに出演者やスタッフ、観客が驚いていた。
「どうして」
「なんで」
「さみしくなりますね」
という、想定された言葉が飛び交う。
エリーは「海外に行きたいなって思って」と軽く返答していた。
写真集の打ち合わせの時に、珍しくエリーが意見を言った。
「2つの月の神話みたいにしてほしいな。」
担当者は少し考えて「何枚かそのイメージの写真撮りましょうか」と意見を採用してくれるようだった。エリーは安堵したように笑っていた。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
もしこの物語を気に入っていただけたなら、
世界のはじまりを描いた神話にも、少しだけ触れてみてください。
本作は、拙作「二つの月の神話」の設定をもとに紡いでいます。
誕生を司る金の月の女神、
そして終わりを司る銀の月の神。
ふたりの物語は、
この世界の“祈り”と“終わり”の原型でもあります。
全5話、2,659文字の短い神話です。
物語の余韻のまま、静かに読める長さになっていますので、
よろしければぜひ、あわせてお楽しみください。




