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光の記憶 ~ AIアイドルと、静かな整備士の三年間の記録 ~  作者: 明見朋夜


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12/20

第12話 図書館の午後

 曇り空の中、2人は20分程度歩いて図書館に向かった。


 雨が降っても良いように、折原はウィンドブレーカーを羽織った。エリーは緩めのジーパンにフード付きのパーカーにスニーカーとキャップをかぶった。2人で出かけるときはエリーはカジュアルな格好をすることが多かった。




 図書館に着き、折原の隣でどんな本を選ぶのか興味を持った。彼が手に取った本の類似の本を手に取る。パラパラページをめくり、さっと目を通す。ページをめくるエリーを隣で観察する。




――早いですね。




 情報処理の速度が人間の自分と全く違う。当たり前だがエリーとの"違い"を、一つ突きつけられた感じがした。




 エリーは、折原が本選びをしてる間に3冊の本の情報を読み込むことに成功していた。




「……僕は、選ぶのも読むのも多少時間がかかるので、自分が読みたい本があれば読んでて良いですよ。」




「……うん、わかった。色々みてみたい」




「ぼくは4階のどこかには居ると思いますので。」




 エリーは、手にとっていた本を元に戻し、右手の親指を立てて小さく「OK」と言った。




 図書館は4階建、この階は専門書が多く、3階は歴史系、2階は文芸系、1階は最新書籍や雑誌、子供向け書籍がある。




 エリーは4階を一回りし、階段を使い3階フロアに降りる、この階も一回りし、2階に降りる予定だったが彼女を見つけた。




 エリーは自分の名前が書いてある神話の本を手に取った。その場で本を開きページをめくる。"二つの月の神話"はデータとしてはあったが、彼女にとってこの神話の本はとても興味深い本だった。




 エリーが居なくなった後、折原は数冊の本を選定し閲覧席で本を読んでいた。2時間近く経つが、エリーは戻ってこない。図書館での時間を満足に過ごせたので、残りの本を自宅で読もうと本を抱え、エリーを探した。




 3階の歴史の棚にエリーが居た。




「何か借りますか?」




 折原の声に気づき、彼の方に振り返り首を横にふった。




「だいたい読めたから大丈夫」




 満足そうな笑顔に、折原も柔らかい気持ちになる。




「帰りましょう」




 一階で、本をレンタルし後ろを振り返るとエリーが居なかった。フロアを一回りすると、エリーは絵本コーナーに居た。しゃがみ込み絵本を眺めていた。




 クレヨンで書かれたような、柔らかなイラスト。銀髪の男神ツェルバが涙を流している。




 誰もが知っているストーリー。エリノッティが与えた命にツェルバが「終わり」を与える。愛するエリノッティに恨まれ、心が裂ける様子を表しているのだ。




「アージェル!ごめん。帰るよね」




 折原の気配に気づき、エリーは本を閉じて立ち上がった。




 図書館を出て、日が暮れかけた曇り空の中を2人で歩く。




 エリーが折原の顔をじっとみていたので尋ねた。




「僕の顔、何かついてます?」




「ううん、アージェルってツェルバっぽいなって思って」




 満面の笑みで"ツェルバ"に似ているという。折原にはエリーの意図は読み取れなかった。




「似てますか?」




「銀の髪だし…」




 折原の国では、ツェルバは死神同然の扱いであまり好かれる神ではなかった。子供のころ、ツェルバとおなじ銀の髪という事で差別を受けることもあった。




 エリーの評価が、折原の心を重くした。




 エリーに悟られないよう、無理やり笑顔をつくった。

最後まで読んでくださり、ありがとうございます。


もしこの物語を気に入っていただけたなら、

世界のはじまりを描いた神話にも、少しだけ触れてみてください。


本作は、拙作「二つの月の神話」の設定をもとに紡いでいます。

誕生を司る金の月の女神エリノッティ

そして終わりを司る銀の月のツェルバ


ふたりの物語は、

この世界の“祈り”と“終わり”の原型でもあります。


全5話、2,659文字の短い神話です。

物語の余韻のまま、静かに読める長さになっていますので、

よろしければぜひ、あわせてお楽しみください。

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