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光の記憶 ~ AIアイドルと、静かな整備士の三年間の記録 ~  作者: 明見朋夜


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第1話 月の女神の名を持つ少女

負の感情が溜まり、前向きな感情が育たなくなった時代。

その世界を癒やすために"光"が生まれた。

彼女の名は |E.L.I.N.O.T.T.Y.《エリノッティ》――

神話に語られる月の女神の名を持つ少女。

人の心を再び照らすための実験が、静かに始まる。


――遥か昔、世界には二つの月があったという。


金の月エリノッティ:誕生の女神。

黄金の波打つ髪を持ち、あらゆる生命に微笑みかける。

彼女が目を開くたび、世界に命が生まれる。


銀の月ツェルバ:死の男神。

銀の髪と瞳を持つ、静かな神。

世界に安らかな終わりを与える。


二つの月は、決して交わることなく、

空を巡り続けた。


――そして今、この物語は、

その神話の残響のように、始まる。


 ――薄い雲の下、モニターが点々と瞬く。

無機質なニュース音声が、絶え間なく流れていた。



「SNSで"共感疲れ症候群"が急増――『人の悲しみに反応できなくなった』という若者が増えています。」



自動詩生成AIブルームが"死にたい"という詩を投稿し続け、世界的な批判が拡大。感情制御AIへの信頼が揺らいでいます。」



「音楽配信ランキング、上位の大半が"失恋と喪失"をテーマに。『悲しみの方が安心する』と答えるリスナーは七割を超えました。」



「都市部で孤独死が増加。専門家は"感情を共有できない社会"と警鐘。」



 それは、"騒がしい静寂"のように、部屋を満たしていた。



 午前七時三十分。アージェル折原もカーテンを開けることなく、そのニュースを聞いていた。テレビはついているが、見るためではない。時間を知るために"ただ光らせているだけ"だった。


 コーヒーの入った白いマグカップをテーブルに置き、卵をのせたトーストをかじる。紺のスラックスに白いシャツ。ネクタイはしない。食器を洗い、マグカップを静かに食器かごに戻す。洗面所で歯を磨き、髪を軽く整える。


 鏡の中の自分が見つめ返す。北欧人でも珍しい、銀色に見える髪。瞳は青と灰が混ざり合い、冷えた朝の空を思わせた。この国では少し目立つ外見だった。


 彼はロボットの整備士だ。数年前、構造研究に携わっていた母国を離れ、感情研究に特化したこの国――日本へ自ら希望してやってきた。英語も日本語も、どちらも違和感なく話せる。


 今日は特別な日。――海外の研究所から、ひとりの"光"が届く。

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