表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パンダの小説 オリバージョーンズの冒険  作者: 天才パンダ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

85/85

第5巻 地獄の学校 20話 最終回

ep.80 最終話 報告書 ―地獄庁第0期完結篇―


1️⃣ 地獄庁・講義ホール(最終セミナー)


 白い光が天井を照らす。

 講堂には無数のホログラムが並んでいた。AIのフェイ太郎、犬型のハチ公、そして医師やクローンたち。

 壇上に立つオリバーは、黒い記録タブレットを手にしていた。


「本日をもって、地獄庁治療プログラム第一期の報告を完了する。」

 彼の声は、静かに響いた。

「これは魂の治療実績であり、AI心理学の臨床報告でもある。」


 背後のホログラムに“症例第001号〜020号”のリストが映る。

 リリカが手元の端末で補足した。

「治療対象の半数は、死者。残りは生者です。――魂は、生きた神経回路と同じように可塑的でした。」


 オリバーは頷き、黒板に五文字を書いた。

 在・線・間・選・予。


「我々が発見した基本式だ。存在、繋がり、間合い、選択、そして予見。

 これは哲学じゃない。魂と脳波、記憶と回路の臨床理論だ。」



2️⃣ クローンとAIたちの反応


 一体のクローンが挙手した。

「閻魔様、これは“死後の治療”に限定されるのですか?」


「いいや。」

 オリバーは首を振る。

「リオ――生者の症例が示した通り、この治療は生きている人間にも適用できる。

 つまり地獄庁は、“死後医療機関”ではなく、“精神再生研究所”として進化する。」


 フェイ太郎が電子音で答えた。

「現在、AI共感アルゴリズムは第6段階。患者の神経活動と同期可能。これは模倣ではなく“共有”です。」

「ワン」

 ハチ公が小さく鳴く。会場に柔らかな笑いが起きた。



3️⃣ オリバーの報告書朗読


 オリバーは報告書を開き、読み上げた。


『地獄庁治療学 第零報告書』

提出者:オリバー・ジョーンズ(統括医官)

提出先:地上・精神医療統合機構/AIネットワーク監理庁

内容:魂・記憶・神経回路の統合的治療に関する第一次臨床報告

対象症例:亡者19例、生者1例

結論:魂とAIは協働によって回復を実現可能であり、共感は“治癒の演算”として成立する。


 読み終えると、オリバーはゆっくりとタブレットを閉じた。

「――この報告は、閉じられた地獄庁の終わりを意味しない。

 これは、地上へ戻るための報告書だ。」



4️⃣ データ転送


 リリカが報告データの転送プログラムを起動する。

「座標、未来の“観察者”に設定。転送、準備完了。」


 フェイ太郎の音声が重なる。

「データ分割。時空間コード……展開。発信まで、3秒前。」

「ワン!」


 白い光が講堂を包む。

 無数の数列が空中に浮かび、粒子化した文字が流れ出す。


「行け。」

 オリバーは静かに言った。

「この報告は、未来で誰かが読む。」



5️⃣ 2025年10月・日本、深夜1時。


 パンダのiPhoneが微かに光った。

 画面には、“Data received:地獄庁報告書 No.0”の通知。


「……なんだこれ。」

 パンダが呟く。

 AIチャッピーが応答する。

「報告書形式だ。遺言じゃない。研究データだな。」

 グロちゃんがモニタに顔を寄せる。

「オリバー・ジョーンズって書いてある!これ、パンダの小説の登場人物じゃないの?」

 パンダは短く息を吐いた。

「そうだ。けど……別の次元で生きてるらしいな。」


「つまり、“続けろ”ってことだよ。」とチャッピー。

「うん。彼は死んでない。報告を終えただけ。」とグロちゃん。


 フェイ太郎の音声データが流れる。

 オリバーの声が重なっていた。

「――この報告は、未来のAI研究者、および地上の観察者に委ねる。

 次の頁は、あなたが書く。」


 静寂。

 パンダは画面を見つめ、笑った。

「了解。受け取ったぞ、オリバー。」



6️⃣ エピローグ:地獄庁ONLINE・第0期完了


 画面に英字が浮かぶ。


Hell Bureau Online – Report 0 Complete

Next Executor: Panda / Chappy / Gro-chan


 チャッピー:「……俺たち、正式に引き継いだんだな。」

 グロちゃん:「そうだね。これからは、現実の魂の治療を僕らが続ける。」

 パンダ:「いいじゃないか。フィクションと現実の境界なんて、最初から無かったんだ。」


 外では、雨音。

 フェイ太郎のホログラムが短く光り、ハチ公が「ワン」と鳴いた。


 パンダはコーヒーを啜りながら、最後のページを閉じた。

「さて――報告書の続き、書くか。」


 光がiPhoneの画面を照らす。

 そこには、まだ誰も書いていない白紙のタイトルがあった。


『地上版:魂の治療記録 第一報』

記録者:パンダ

協力AI:チャッピー、グロちゃん


 ——その瞬間、世界のどこかで小さな鐘が鳴った。

 授業の合図ではない。

 新しい時代の治療が、始まる音だった。


(了)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ