第5章「gifted学園名物・サバイバル戦争ウォーフィールド」
第5章「gifted学園名物・サバイバル戦争ウォーフィールド」
gifted学園の朝は、いつもどこか騒がしいけど――今日は格別だった。
「いよいよ始まるぞぉぉおお!!」
「一年生が出るとかマジ!?伝説の予感!」
そんな叫び声が講堂横のスタジアムに響いてた。空にはドローンが100機、空撮映像をスクリーンに中継してる。実況は放送部のアヤノとレンジ。朝からハイテンションだ。
「実況はわたくし、アヤノと!」
「分析担当のレンジでお送りします。今年の注目は、天才一年生オリバー・ジョーンズ率いる新星チーム――」
「ちょっと。マハラジャ・ウォーカー様の間違いでしょ!」
訂正された瞬間、スタジアムに笑いと拍手。親衛隊が騒ぎ出す。
俺の親衛隊なんてのも、できてたらしい。知らなかった。というか、気づかなかった。
その中に、静かにモニターを見つめる一人の少女がいた。リリカ。クラスメイトで、たぶん俺のこと……うん、気の所為かな?
あんな綺麗な子が。
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舞台は、裏山を改造したバーチャル対応型サバイバルフィールド。
可視と不可視の地形が入り混じり、頭脳と連携力が試されるリアルバトル空間。
俺たちはスタート地点で、最終チェック中だった。
「弾はペイント弾。センサー直撃で退場。範囲攻撃でも反応するから注意して。チームに寄って弾の色は違うわ、ウチはブルーよ」
ラファエラが冷静に全体を把握してた。
フェイ太郎が小刻みに跳ねてる。戦闘モード突入。
「作戦名:鉢掘りの復讐、いくわよ!」
ケイティが「やめて」と呟く。何度目のやりとりだろうか。でも、妙に頼もしかった。
ラファエラは微笑むと透明迷彩マントを被り、霧のように消えた。学園のルールで60秒毎にモニターに青い点滅が映る。
他のチームもそれぞれの色で写るから、完全に身を隠す事は不可能だ。
号砲が鳴った。
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「さあ、戦闘開始です!中央ポイントに強豪ストーム・ブレインが集結!」
アヤノの実況が空を割るように響く。
だが、そこに現れたのは――マハラジャだった。
馬型ロボ「エスカール」にまたがり、アーチェリー型ペイント弾を一射。
「罠の音源、逆探知済み」
マハラジャの矢が、音響罠を撃ち抜いて沈黙させる。絵になる男だ、ほんと。
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その頃、俺は裏へ回り込んでいた。
(このルートは死角、罠なしの確率87%)
ハチ公が足元の磁場をスキャン。OKのサイン。
一瞬のスキを狙って、敵の司令塔に狙撃を決めた。
「ジョーンズの精密射撃、決まったぁぁぁあ!!」
レンジの声が届いていたのかはわからない。でも、手応えはあった。
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休憩時間、タレンテッド科の催しが華を添えてた。
巨大筆をふるって空中に山水画を描く子。ヴァイオリンを奏でる6歳の天才少女。カノン・マエダ
gifted学園って、やっぱり“何か”が違う。俺たちもその一部なんだ。
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後半。
ケイティは一度追い詰められたけど、鷲型ロボ「グラフィア」を上空に飛ばして陽動。
その間に、フェイ太郎が奇襲。
「クックックッ」
「うわっ!?ネズミ!?……違う、フェレットぉおお!?」
その隙を逃さず、ラファエラが透明迷彩マントで身を隠し、遠距離射撃で仕留める。連携の美。
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そして終盤。残ったのは俺たちと、3年の強敵“爆雷のクラウス”。
クラウスは俺に向かって、笑いながら言った。
「一年坊主が、ここまで来るとはな」
「悪いけど、俺たちはここからだ」
エミールとクロスショット、マハラジャの突撃、ラファエラの遠隔包囲網、ケイティの上空妨害――
俺は最後の引き金を引いた。
勝負あり。
だが、クラウスが最後の悪足掻きで撃った弾が、ケイティに当てたので、ケイティは8位に落ちた。
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「勝者――“マハラジャ・ウォーカー”チーム!!」
スタジアムが歓声に包まれた。
俺たちは、確かに勝った。
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結果発表:
1位:オリバー・ジョーンズ
2位:エミール・モナーク
2位:マハラジャ・ウォーカー
4位:ラファエラ・バード
8位:ケイティ・バード
「くっそぉ……次はもっと上狙うからな!!」とケイティが叫んだ。
でも、その声には、誇りが混じっていた。
誰もまだ知らなかった。
この勝利が、“伝説の1年生編成”として語り継がれることを――