第3巻 エピローグ:そして、日々は続く
第3巻 エピローグ:そして、日々は続く
未来世界の朝は、静かだった。
とくに今日は、風もなく、空も青く、ただ陽がのんびりと街を照らしていた。
家の中では、キッチンに立つラファエラが、温め直したミルクを手にリビングへ戻ってくる。
「まだ寝てるわよ、あの子たち」
「ノアとミレーユ?」
オリバーがソファから顔を上げた。
「そう。昨日のヒーローショーではしゃぎ過ぎたのね。
あと、ミレーユが“エミールおじちゃんかっこいい”って言ってて、ノアがちょっとむくれてたわ」
「……将来が思いやられるな」
ラファエラはふっと笑って、温かいカップを渡してくれる。
「でも、いいじゃない。こういう朝が、続くなら」
⸻
食卓には、ミレーユが並べっぱなしにしていたシルバミアファミリーの人形たち。
中には、ミレーユの手描きによる“閻魔オリバー”のミニチュアも混じっていた。
ノアの手によって“閻魔ショベルカー”に乗せられ、地獄の判決を出している。
「なんだこれ……」
「“おしおきドッカン法廷”だそうよ。たぶん爆破オチね」
「……もう何も言うまい」
⸻
玄関のロックが開き、ゼウスとヘラが仲良く並んで入ってきた。
「おい、焼きたてパンの匂いがすると聞いて来たんだが」
「母さんが食べたいって言うから。父さんの為じゃないからな」
「……義父さん、顔がちょっとだけニヤけてるわよ」
ラファエラがくすっと笑い、ヘラが真顔で指を立てる。
「ニヤけてなどいない!
そうだヘラには話してあったんだが、明日この家にアポロンとアルテミスと言う姉弟の双子が遊びに来るぞ。旧約聖書の時代に居た時に、代理子宮型AIレトを使って産ませた、俺とヘラの遺伝子から産まれた子供だから。オリバーの弟と妹になる。仲良くしてくれよ。2人とも400年は生きてるがな」
その話を聞いたオリバーは、開いた口がしばらく塞がらなかった。
思考が追いつかず、眉をひくつかせながら、ソファの背にもたれかかる。
話を聞いたオリバーの第一声はこうだった。
「……俺に、370歳も年下の弟と妹ができたってか? 冗談だろ」
ゼウスはにやりと笑い、ラファエラは吹き出しそうになりながらもカップを持ち直した。
「真逆、オリバー。私が本気でウズラに擬態出来ると思っていたのか?」
ゼウスの言葉にヘラとラファエラは涙を流す程爆笑した。
どこかの部屋から、シルバミアファミリーの“おしおきドッカン法廷”がまた爆発したような音が聞こえた。
⸻
その日、オリバーは書斎で小さな記録を取った。
題名はまだつけていない。
ただ、未来で得た家族と、過去から戻った家族の記憶を、少しずつ、文章にしていく。
まだ物語は終わらない。
でも、いまは静かに筆を止めて――窓の外を見る。
空は、限りなく青かった。
⸻
(『オリバージョーンズの冒険3』 完)
本作に登場する人物・団体・作品名はフィクションであり、実在のものとは関係ありません。オマージュ・パロディ表現は創作上の文脈であり、特定の実在人物による承認・提携・後援を意味しません。




