第9章:神の再会、そして愛の復元(リストア)
第9章:神の再会、そして愛の復元
シャトルが未来の軌道ステーションへと帰還して数日後。
オリバーは、家族とは別れて一人、中央区のメディカル・コアラボにいた。
廊下の先、白い無菌室の奥に、あのボディが立っている。
イタリアの名工ビアンキ社が仕上げた、一点物の女性用クローンボディ。
肌は透き通るように白く、瞳はゼウスの記憶にあるままの緑。
髪だけは、オリバーの「こだわり」で、淡い銀に染められていた。
「……母さん、ようやく……会えるね」
ゼウスの声はかすれていた。
その隣に立つのは、バーンズダン。
旧約時代で、時々冬眠しながら、800年過ごした男達は、服装こそ整っているが、どこか牧歌的な落ち着きが漂っていた。
「なあ、ゼウス。ヘラが目覚めたら、最初に何て言うんだ?」
「……“おかえり”でしょ。たぶん」
オリバーが操作盤に触れると、低い振動音とともに、意識同期回路が作動。
しばらくして、銀髪の女性が、ゆっくりと瞼を開けた。
「……ゼウス?」
「……ああ。遅くなった」
ヘラは小さく息を呑み、立ち上がろうとしてよろめいた。
ゼウスが支える。
「あなた……ずっと待ってたのよ、バカ」
「ごめん。バカだったのは認める」
隣で、バーンズダンが微笑んだ。
「これで、みんな揃ったな」
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医務室を出たあと、オリバーはゼウスに小さく訊いた。
「父さん。未来に帰ってきて、どう思う?」
ゼウスはしばらく空を見てから、こう言った。
「地上にいた時の“神話”より、こっちの方がずっと……忙しいな」
オリバーも笑った。
「でも、家族がいる分、きっと楽だよ」
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その夜。
オリバーは帰宅すると、双子のミレーユとノアがくるりと振り返った。
「パパ、おかえりー! 今日は長かったね!」
「うん。ちょっと……昔の家族を迎えに行ってたんだ」
ノアはきょとんとした顔で訊く。
「じゃあ、パパのお父さんとお母さん?」
「そう。これで、ようやく三世代そろった」
「ふーん。じゃあパパ、もっとおじいちゃんになるね!」
「……それ、褒めてるのか?」
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そんなわけで、ゼウスとヘラは帰ってきた。
そして、バーンズダンも。
マグナス・ケインは過去の時代に未だ仕事が有ると3人の子供達と残ったそうだ。こっちに帰って来るのはいつの事やら。
物語は続くけど――今夜くらいは、静かでいい。
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(第9章・了)
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