【第3章】重力サファリと空飛ぶバギー
【第3章】重力サファリと空飛ぶバギー(改訂版)
バケーション3日目――
オリバー一家プラチナの本物は、**宇宙型野生動物体験施設「グラビティ・サファリパーク」**にやって来た。
ここは、惑星ごとの生態系を再現した巨大ドームの中で、重力を自在に調整しながら異星種の“動物たち”と触れ合える、銀河でもトップクラスのアトラクション施設である。
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ゲート前で。
「まずは“月面級グラビティドーム”、重力0.17Gからのスタートです!」
「おおおお!跳べるー!俺、跳べるー!!」
とネロが飛び跳ね、空中で2回転した。
「ネロ、あれ“岩”じゃなくて生きてるやつ!」
ユリウスが指差した先には、でかい岩のような“ふわふわビースト”が、体表を震わせていた。
「ぎゃあああ!来たあああ!」
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バギーに飛び乗り、ラファエラが即座にマニュアル操縦モードへ。
「ハンドル、ロック解除。重力ナビ、手動制御に移行――」
「いやママ、何そのドリフト!本職なの!?」
「昔、軽く訓練したのよ。火星でね」
「軽くのレベル超えてるって!!」
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一方、バギーの後部座席では――
ノアがバウンドする座席に身を任せながら、真顔でひとこと。
「ねぇパパ、これ……アトラクションって言ってたよね……?」
「そ、そうだよ!いや、そういう設定のはずだよ!!」
「アトラクションって……もっとこう、座っておやつ食べる感じじゃなかったっけ……」
「ノア、おやつは後!!まず命の安全!!」
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ミレーユは、胸元のデバイスで重力変化の数値をモニタリングしていた。
「重力レベルが急上昇してる。バギーのタイヤ空転始まった。制御スリップ起きるよ、ママ」
「オッケー、ブースト噴射で方向転換!」
とラファエラが即応。
「ミレーユがいなかったら、全員スピンしてたね……」
「まあ、安全は“論理の積み重ね”でできてるからね」
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その時――スピーカーが響いた。
【緊急告知】
火星型猛獣フィールドにて、複数の模擬獣がセンサー異常により脱走。
安全確保のため、各ツアー班はその場で待機してください。
「……おい、これ“演出”じゃないぞ……ガチのやつだ」
そう呟いたオリバーの目の前を、鎧のような四足獣が爆走していった。
「どわぁぁ!? なにあれ!? 戦車!? 動物!? どっち!?」
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「オリバーッ!!」
ラファエラの叫びとともに、もう1台のバギーが横から飛び込んできた。
「ネロがジャムナッツをぶちまけたせいで、こいつら“ごはん”だと思って突っ込んで来たのよ!!」
「うわぁぁジャムナッツって肉食惑星では“ペットフード”餌やり体験用の奴だったよね!?」
「とにかく今、重力変換エリアに突入するから、跳ねるわよ!!」
バギーは飛んだ。
天王星型高跳躍エリア――重力低下ゾーンに突入したのだ。
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「空飛んでるぅぅぅ!!」
ネロが叫び、ユリウスが大笑い。
オリバーは急ぎ非常用プロテクターを起動し、コントロールモードを切り替える。
「ミレーユ、ノア、しっかりつかまって!」
ノア:「寝てたのにぃ……」
ミレーユ:「エネルギーバースト来るよ!方向、あっち!」
彼らは、異星生物の群れの間をぬいながら、空中を一直線に滑空していった。
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猛獣たちは、最終的に制御誘導装置によって鎮静化され、パーク側はアナウンスした。
【本日の騒動は“臨場感過剰演出”として無料オプション換算されます☆】
「いや、どう見ても“ガチ”だったよね!?ねぇ!?」
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夕方。園内のプレミアムテラスにて。
「事故補償として、惑星パフェをご提供いたします」
■本日の惑星パフェ:
・火星果実のソルベと地球ショコラの螺旋構造
・浮遊ゼリーで大気循環を再現
・とどめに“重力キャラメル”を上空から落として仕上げます
「車酔いで胃が……事件を起こしそう……」
とオリバーが呻く一方、
ノア:「でも……このパフェ、あつさりした味できもち……いい……流石日本人のパティシエが作っただけ有るね」
ミレーユ:「甘さの数値、味覚と香りのハーモニーが丁度いい。味覚領域の記憶形成を狙ってるのかも」
「だから研究するなっつってんでしょ!!」
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こうして、3日目のバカンスも、バギーと獣と笑い声に包まれて幕を閉じた。
だが、オリバーはまだ落ち着かない。
(明日こそ……事件、起きませんように……)
彼は、テラスの端でため息をついたが――
その後ろでノアがまた寝ていた。
「事件……起きても……寝る……」
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(続く → 第4章「異世界温泉で溺れるな」)




