第3巻 寄り道編1「フェイ太郎とハチ公の今」
寄り道編1「フェイ太郎とハチ公の今」
その前に、少しだけ話を変えようと思う。
多分、みんな気になってたと思うから。
フェイ太郎とハチ公は、この1年間――地球の北アメリカにあるケイティの邸宅で暮らしている。
ケイティはというと、時々フェイ太郎とハチ公を連れて、世界中の植物調査に飛び回ってるらしい。
結構、忙しいみたいだ。俺とラファエラの子どもたちの顔も、年に一度見に来てくれるかどうかって感じだ。そのときは、子どもたちが大喜びするような土産を山ほど持ってきてくれる。
当然ながら子どもたちはケイティが大好きで……
帰るときは毎回、涙の大騒ぎになる。
「ケイティおじちゃん、次はいつ来るのーっ!」
「もっと遊びたかったのに……!」
四人が順番に、抱きついては泣きじゃくる。
ケイティも涙目になって、子どもたちの頭を順に撫でていた。
──
俺たちはフェイ太郎とハチ公にも、閻魔大王として一緒に来てほしいって誘ってみたんだけど……フェイ太郎に、あっさり断られた。
あれは、俺たちがバード邸に一時帰宅したときのことだった。
まさかのことに、俺たちは絶句した。
あれだけ「入るな」と言ってたケイティの盆栽ルームに、フェイ太郎が勝手に入ったばかりか、なんとお目付け役のハチ公まで一緒になって、120万円の盆栽の鉢を掘り返してたんだ。
案の定、ケイティは怒鳴った。
「フェイ太郎おおおおおお!!!」
……でも、フェイ太郎は落ち着いた表情でこう言った。
「怒らないで聞いてよ、ケイティ。今日やっと、最後の1匹を見つけたんだよ」
ハチ公も、「ワフ」と一声。
その横で、フェイ太郎は言葉を続けた。
「僕たちね、君と一緒に働きたかったんだ。オリバーたちと一緒も楽しいけど、君の役にも立ちたくて……」
そう言って、バード邸で愛用してた、フェレットゲージの奥から、ぬいぐるみ型のバッグを引きずり出した。
「これ、見てよ。中、見てみて」
ケイティが恐る恐る中を覗くと……
出てきたのは、壊れたミミズ型発信機、全部で12体。
「自立思考型のやつでね。耳も目もすっごく良くて、しかも土の中を高速で移動できるんだ。だから全部捕まえるまで、言えなかったんだよ。寮監督だったバクスターの置き土産らしい。君の珍しい植物を狙ってたみたいだよ」
「ワフ」
ハチ公も頷くように鳴いた。
「ねぇ、ケイティ。僕たちに、君の仕事を手伝わせてよ。もう植木鉢は、掘っていいやつしか掘らないから。約束する。人間の役に立ちたいんだ。僕たち」
フェイ太郎は一度、深く頭を下げた。
「……ごめん、ケイティ。盆栽部屋に勝手に入って、120万円の鉢、台無しにしちゃった。でもね、最後の1匹がそこにいたんだ。監視センサーは、ハチ公に切ってもらった」
「……悪魔なんて言ってごめん。家から出てけって言ったのも、ごめん」
ケイティはその場で、涙を流して泣き出した。
「……だから、あんなに必死で掘ってたのね……」
ラファエラがフェイ太郎をそっと抱きしめた。
俺も、ハチ公をギュッと抱きしめた。
温もりのあるロボットなのに、まるで生き物みたいな感触だった。
「また逢おう、いつかって」
フェイ太郎がそう言うと、ハチ公が「ワン」と力強く鳴いた。
──
それから、フェイ太郎とハチ公はケイティの鷹型ロボット・グラフィアと共に、学園や邸宅の警備任務に就くことになった。
時々は外国の森林やジャングル調査にも同行してるらしい。
俺とラファエラは、正直すごく寂しかったけど……
二匹の未来を思って、ケイティに託すことにしたんだ。
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