第3章:「gifted学園・最初の課題」
第3章:「gifted学園・最初の課題」
gifted学園に、“年齢順”なんてルールは存在しない。
あるのは、実力と適性。
評価は「観察・判断・創造」の三段階で、日々アップデートされる。
俺は10歳、マハラジャは12歳。ラファエラは俺より3ヶ月だけ年下の10歳で、ケイティはマハラジャと同い年。エミールは見た目9歳。でも、あいつの中身は……まあ複雑だ。
年齢がバラバラでも、俺たちは同じクラスになった。
どうやら、相当クセのある面子で編成されたらしい。
ちなみに噂じゃ、タレンテッド科には6歳で入ってるやつもいるとか。
どんだけチートなんだよ。
──
入学初日。教室のドアを開けた瞬間、全員の視線がこちらに突き刺さった。
静寂。空気が異様に冷たい。
(うわ、歓迎ムードゼロかよ)
そんな空気を切り裂いたのは、やっぱり彼女だった。
「おはよう。ラファエラ・バードです。今日からよろしく」
どこかで鈴が鳴ったような声。
一瞬で場が緩む。
するとすかさずマハラジャが前に出て、あの王子様スマイルで言いやがった。
「王族の名にかけて保証しよう。こいつらは信用できる」
「なに言ってんのよ、あんたが一番胡散臭いわよ」
ラファエラの返しに笑いが起きる。
……やるじゃん。
──
先生は来なかった。代わりに天井からドローンが降りてきて、教室にホログラムが浮かび上がる。
《初級フィールド訓練》
《目的:自己判断・協調性の測定》
《内容:グループで「隠された記号」を旧庭園から回収せよ》
(いきなりこれかよ……)
「俺、こういうの苦手なんだけどな」ってケイティが弱音を吐いた。
あいつ、植物以外はほんと無関心だからな。
「任せろ。俺は最初の課題は全勝だ」ってマハラジャが胸を張る。
「……毎回“最初”しか勝ってないんじゃ?」とエミールが刺す。
ナイスツッコミ。
──
旧庭園は、今じゃ立ち入り制限がかかってる場所だった。
ガラスの温室塔は半分崩れてて、あちこちにツタが這ってる。
「まるで廃墟だな」ってつぶやいた俺の足元で、ハチコウが急に地面を嗅ぎ始めた。
「ハチ?何かあるのか?」
「ワフッ!」
掘り出されたのは、金属の箱。中には一枚のカード――
“記号”って呼ばれる、ギフテッド学園での初期バッジだ。
けど、何かがおかしい。
端に「R-0」って刻まれてる。
意味は確か 裏切り者の道化師
「……誰かが先に触った跡だな」
「僕らを試してるのか?」とエミール。
「いや、もしかして排除しようとしてるのかも」ってケイティが珍しく低い声で言った。
(この学園、裏がある)
確信に近い何かが、喉の奥に引っかかった。
──
そのとき、崩れた温室塔の上から物音がした。
「誰かいるの?」
ラファエラが呼びかけたけど、返事はなかった。
俺が足音を忍ばせて近づくと、見えたのはあの男の後ろ姿――
寮監督官、バクスター。
けど、次の瞬間には、煙のように姿を消してた。
(やっぱり……この学園の裏には、何かがある)
──
その日、俺たちは“記号”を提出しなかった。
ただ持ち帰っただけ。
「このまま出したら、何かが始まる」って俺は思った。
「違うよ、仕掛けられるんだよ」ってケイティが、鉢植えの土をいじりながら言った。
──
数日後、学園に噂が流れた。
「1年A組の新入り、記号を握り潰したらしいぞ」
「王族にクローンに遺跡の子供って、何なんだよあいつら」
「犬連れてるとか、マジで謎」
聞こえないふりをしたけど――
俺たちは、確かに“見られて”いた。
「これで、敵がはっきりしたな」とマハラジャが低く言った。
(戦うんじゃない。記録しろ。証拠を残し、それを力に変えろ)
ダンの教えが、また心の中で熱くなった。
これはきっと、ただの“課題”じゃない。
誰かが俺たちを試してる。
……あるいは、狙ってる。