第2巻 エピローグ
第2巻 エピローグ
あの町田市民による暴動事件は、世界中に配信されていた。
誰もが口を揃えて驚いた。
「いつも穏やかで従順な日本人が、どうしてここまで凶暴になったのか」と。
だが、事の真相は想像以上に根深かった。
よくよく調査を進めてみると、事件の原因はこうだった――
月に一度、日本米を配給するタイミングで集まる市民たち。そこに目をつけたのが、マトリックスの違法運営局だった。
彼らは賄賂を使って町田市長と財務官を買収。
市長らの手を借り、市民たちに仮想意識接続を施し、実質的な“洗脳”と“集団拉致”を行っていたのだった。
だが――町田市長は、最後まで罪を認めなかった。
宇宙保安局に連行されるその瞬間まで、彼はこう叫んでいたという。
「人間には夢が必要なんだ……! 現実だけがすべてじゃない!」
抵抗しながらも、どこかでそれを信じていたのかもしれない。
……だが、偽物の夢に気づいた町田市民も、確かに存在していた。
彼らはこっそりとマハラジャ・ウォーカーへとSOSを発信した。
あの一通の通信が、世界の運命を変えたのだった。
⸻
事件後、モニターの破片で怪我を負ったエミール・モナークを、ビアンキが見舞いに訪れた。
「弊社が造る高性能クローンボディに、記憶を移植し直さないか?」
白いグローブの指先を組みながら、ビアンキはそう申し出た。
だがエミールは、静かに首を振った。
「……俺の昔の写真データ、見せてやろうか?」
そう言って、エミールはホログラムを起動し、かつての自分のデータを投影した。
その映像を目にした瞬間――
ビアンキは息を飲んだ。
そこに映っていたのは、ザイオン・ノヴァ……つまりアマデウス・レイによく似た、黒人の青年。
「親父にそっくりだろ?」
エミールは苦笑いを浮かべた。
「だから、やめとく。気持ちはありがたいけど……俺は、この姿のままでいい」
少し照れたような口調だった。
だがその瞳には、過去と今を両方見据える確かな意志が宿っていた。
**『オリバージョーンズの冒険2』完**




