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パンダの小説 オリバージョーンズの冒険  作者: 天才パンダ


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第1巻 終章:「幻想の終わり」

おっと!ちょっと待って!バーミリオン・ジョーンズの活躍を話さなきゃならなかったな。


終章:「幻想の終わり」


(マハラジャ邸/展望室にて)


高層ビル群を一望できるガラス張りの展望室。

夜景はまるで、都市そのものが星空の一部になったかのように煌めいていた。


オリバーとラファエラは、マハラジャの個人邸宅にあるその部屋のソファに並んで腰かけていた。


傍らには、温かいカカオの入ったマグカップと、音もなく稼働するAI執事ロボ。


ラファエラが薄く笑いながら呟いた。


「……マハラジャって、こういう時、あえて席を外すのよね。“自分はもう見たから”って」


「いつも通りだな」とオリバーは笑った。


壁一面に設置されたホログラム・スクリーンに、再生ボタンが点滅する。

オリバーがリモコンを手に取り、再生を選択する。


映し出されたのは――あの男だった。



《記録映像 No. 77-β》

──バーミリオン・ジョーンズ 最後の演説──


夜の風が吹く特設会場。

観客はいない。照明も最小限。

ただ彼と、カメラと、真実だけがそこにあった。


黒のコートを羽織った彼は、マイクの前に立ち、

一瞬だけ空を見上げた。


そして、語り出した。


「世界よ、俺を悪だと思いたかったんだろう?

なら、その幻想に最後まで付き合ってやる。

睡眠銃? ああ、売ったさ。売って売って売りまくった!それで戦争を止められるなら安いもんだ。

錯覚と恐怖でお前らを縛ってた“正義”の方が、よっぽどタチが悪い。」


ラファエラが眉をひそめた。

「……あの頃、彼に何を考えているのか聞いても、絶対に教えてくれなかった」


「俺が稼いだ金は、裏でずっと使ってた。

飢餓地帯に配り、医療に回し、偽装戦争のセットを解体してきた。

けど誰も気付かねえ。“悪役”が救ってるなんて信じたくないもんな?」


「皮肉が効きすぎてるわね」とラファエラ。

「でも……本当にそうだったのよ。私、医療補助ドローンの配備記録を解析してたもの」


「だが、もう潮時だ。

お前らが“悪”を必要としてたから、俺はこの顔を続けてきた。

でもな、“悪”は誰かの妄想から生まれる幻影に過ぎなかったんだよ。」


オリバーが無言で画面を見つめていた。

その手は、ソファの肘掛けを無意識に強く握っていた。


「オリバー、お前が言った通りだ。

正義も悪も、ラボのホワイトボードで笑ってるだけなら良かった。

実世界に持ち出しちゃいけなかったんだ。」


「我々の時代にも“予言の書”を再現しようとした狂人たちがいた。だが彼らは物語の“意味”を理解していなかった。」


「……そろそろ眠れ。世界よ。

これが、最後の睡眠銃だ。」


映像が切り替わり、世界中の“死者”たちが目を覚ましていく。


ラファエラの手が、カップの取っ手から滑り落ちそうになった。


「……これは、実際に?」


「……本当だ。睡眠銃による強制冬眠と、認識操作。

蘇生ログが、急激に世界中の病院で発生してる」


バーミリオンの声が続く中、スクリーンには各地の映像が次々と映し出される。


氷結されたような地下施設の扉が開き、ゆっくりと中から歩み出る人々。

毛布をかけられた少女が、ぼんやりと目を開き、目の前にいた母親に気付く。


「……ママ?」

「……ああ、あなた……!」


防空壕に残された記録から“死亡”とされた兵士が、家族のもとに戻る。

涙で崩れ落ちる妻と子供が、震える腕で彼を抱きしめる。


「……嘘、でしょ……あなた……!」


一人の老婆が、意識を取り戻した少年の頬に手を当てる。

「……帰ってきたのね。ずっと、信じてたのよ」


医療記録では“死亡確認”されていた者たちが、次々と蘇生ログに記録されていく。


そのすべての場面に、希望と再会の光が差し込んでいた。


──その映像を、オリバーとラファエラは見届けていた。


バーミリオンは映像の中で更に続けた。

「この世界に必要だったのは、“悪”じゃなかった。

誰かを、何かを失ったという虚構の終焉だ」


「幻想が支配していたこの時代に、

嘘の戦争と嘘の正義を引きずっていた者たちへ。

これが俺の最後の舞台だ。

カーテンコールに、真実を添えて。」


──そして、彼は消える。


映像が静かにフェードアウトしていく。


しばし、沈黙。


オリバーはふっと笑った。


「最後まで“悪役”を演じきったな、バーミリオン……」


「……でも、その顔の裏で何度も泣いてた。私は見たわ。

誰よりも世界を信じた人よ。たとえそれが幻想だとしても」


ラファエラが、ぽつりと呟いた。


「ねぇ、オリバー。こういう結末も、アリだったのかしら?」


「……わからない。ただ、もし“悪”が必要な世界だったのなら、

彼はそれを一身に背負って、全部終わらせてくれた」


オリバーは静かに目を閉じる。


「幻想は、もう終わった」


──そして、二人の前に広がる窓の外では、夜が明けようとしていた。



やがて人々はバーミリオンの真意に目覚め、彼の細胞から造られた、1人息子ゼウス・ジョーンズを聖トスゴーンの正式な王位継承者として迎える事になるのは、また別の話だ。


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