第21章「目覚めと出発」
第21章「目覚めと出発」
(※オリバー・ジョーンズ回顧録より)
この話も、俺は直接には立ち会っていない。
だが後に、マスター・ダンからの報告書と、後のサン=ジェルマン・マグナス・ケイン本人からの告白、そして彼の副官だった女性の証言で、詳細に知ることができた。
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午前五時。
深い眠りから目覚めるその瞬間、ゴールドスリープから解除されたマグナス・ケインは、まず人工呼吸器の音を聞いたという。
「……起動ログ確認。ゴールドスリープ、解除完了です」
彼を迎えたのは副官――女性だ。
髪を短く整え、落ち着いた威厳を纏っていた彼女は、彼が冬眠するその夜、最後まで共にあった部下だった。
「ケイン少佐、おかえりなさい」
視界がぼやける中、ケインはようやく問いかける。
「……どれだけ、眠っていた?」
「三年と十二日です。今は西暦2028年、5月28日。
少佐を最後に、冬眠していた者たちは全員、目を覚ましました」
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そう、ちょうど三年。
バーンズダンが俺やラファエラと共に、過去の時代へ旅立ったあの夜から、三年が経っていたのだ。
ケインは、真っ先にマスター・ダンのことを聞いた。
「マスター・ダンは……無事か?」
副官は、そっと視線を伏せて答えた。
「最後に確認されたのは、クリスタルゲートを通る直前。
オリバー・ジョーンズと“ラス”と共に、消えました」
その“ラス”――つまりラファエラの姿を見たのも、彼女が最後だったという。
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「この世界は、どうなった?」
ケインの問いに、彼女はためらいながら答えた。
「……平和です。ですが、その“平和”は、作られたものです」
バーミリオン・ジョーンズの名前が出てくるのは、このあとだった。
彼は“冬眠銃”によって「死なない戦争」を演出し、今では世界の支配者のような存在になっていた。
戦争は、ゲームになり、娯楽になり、平和は“提供されるもの”になった。
物価は下がり、労働はロボットと人間が協力し合って担い、人間の仕事は楽になり。足りない金は配られた。
「ならば行く。マスター・ダンが待つ、あの時代へ」
そう決意したケインは、装備を整え、光の門――クリスタルゲートへ向かった。
副官の敬礼と共に、彼は西暦2028年の世界から姿を消した。
マグナスも、ダンを追って過去へと旅立ったのだ。
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俺はその話を聞いたあと、しばらく何も言えなかった。
ケインは俺にとって直接の関係者ではない。
だが、マスター・ダンが心から信頼し、共に戦った戦友だ。
彼の旅が、無駄にならないことを――俺は心から祈った。
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